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それからのレゲエマン~彼方からの庇護   最終集

          =啓示=


久しぶりにライブの仕事が入った。


世間では10年前から音楽じゃ食っていけないという噂もある。


そういえば、それまでろくにバイトもしなかったが

10年ぐらい前から一年のうち半分タクシー運転手のバイトで稼ぎ

残り半分の時間で音楽活動をする暮らしが続いている。


今のオイラの経済状態は、そろそろバイトでもして稼がないと

危機水準に突入してしまう状態だったのたが

このライブでもうしばらくは大丈夫になったので

本当に有難いお話しだったのです。


実は、このライブの依頼が来る少し前に

ハローワークに行ってみると、森林組合系の期間バイト募集があって

そこで紹介状を書いてもらって、後日その面接に行ってみたんです。


向こうの指定した時間より10分ぐらい前に訪ねてみると

事務員っぽい中年の女性に、待合室に案内されて

部屋に入ると、65歳ぐらいのかなり頭毛が薄くなっておられる

バーコードヘアーの男性が一人ソファーに座っていて

おいらも斜め対面のソファーに腰を下ろした。


しばらく待っていると、こんどはかなり割腹のいい定年退職後っぽい

メガネをかけた、やはりシニアの男性が部屋に入って来られて

つづいて作業服姿の30代の男性と、部屋にいる二人の男性より

さらにお歳を召されたであろう男性が現れて


オイラは作業服男性に名前を呼ばれて面接場へ連れて行かれた。


面接者用であろう椅子に座ってみると、10mぐらい前方の長テーブルに

そこの代表者らしき中年男性と、右手に総務の方と紹介された女性、

左手にさっきの作業服男性が椅子に腰を下ろしていて面接が始まった。


面接の感じは良い感じがした。

日当をはじめ労働条件がかなり緩めでオイラにも出来そうで

採用は3名らしくて、応募者がオイラを含めて

先度のシニア男性達で4名なのだから

採用される確立はかなり高いのです。


採用、不採用の通知を後日郵送してもらうということで

面接は無事に終わった。


(面接官の感じも良かったし、他の応募者があのシニア連中だし)

まずは採用間違いないと、これで当分の経済状態は安定するわと

家路に向かいながら、ある安堵感を勝手に抱いていたのです。


郵便受けにバイト決定通知が届いたのは、

今回のライブ依頼のお話を伺った、次の日の朝だった。


しっかりとした茶封筒の通知書をあけて中身を取り出してみると

二つ折にした一枚の紙と一緒に、三つ折にされた分厚めの

履歴書らしきものが入っていた。


いやな予感が、天気のいい朝にも拘らず、

『キーーーーーン』と脳内を駆け巡った。


不採用であった。


ショック。。であった。


(よりによってたった一人の失格者はオレかぁー、面接官は目があるのかぁー

 言っちゃ悪いがあんなヨレヨレ爺さんでも採用されるバイトで

 落っこちるオレって。。)


しばらくして冷静に考えてみると

確かにあの応募に来ていた人達のなかで、おいらは浮いていた。


なんか雰囲気っていうか波動っていうか

あきらかに、長年会社とかに勤められた人達が持つ共通した雰囲気とは違う、

異質な匂いを発している人間に、オイラはなってしまっているのだろう。


今になってみると、今回のライブ依頼のお話とバイト不採用の事象に

何か啓示めいたものを感じてしまう。


『もう半分バイト、半分音楽みたいな妥協は許されないのだ!

 本来の自分100%で生きるしかないのだ!』


そんな彼方からの声がハートに響いている。





              =ほんとに世の中わからない=


なんか、訳がわからん。


もうオイラみたいな人間は、まともに働くことは考えないで

飢え死に覚悟で芸の道一本で生きるしかないのか!


なんて思っていたやさきに、

そんなオイラに会ってみたいという事業家が現れた。


彼は、長らくりんご農園と国道沿いに物産店を経営していて

近く、りんご素材のレストランをオープンする為にスタッフを

募集しているらしく、

ファミリーレストランみたいな、ありふれたものじゃなく

個性のある店にしたいみたいで、音楽家みたいな人がスタッフとして

働いていて、興がのれば一曲演奏なんて店は楽しいんじゃないかと言う。


いまどき、こんな経営者もいるのかとちょっと感動してしまっていたら

オープンまでの仕事もいろいろあるので、すぐにでも来てほしいと言われ

オイラとしても単純に経済面で助かることもあって

明後日から、その店で働くことになってしまった。。


ほんとに世の中わからない。





             =いままで経験したことのない記録的豪雨=


久々のライブは楽しいものであった。


打ち上げは3次会にも及び

多くの人とコミュニケーションすることができた。


りんごレストランのスタッフはオイラには向いていなかったようだ。


数えてみると、28日ぐらい働いたみたいだが

体に変調が起こり、この仕事を続けることに限界を感じ、

辞めることを、電話でそこの経営者に伝えた日のことだった。


“いままで経験したことのない記録的豪雨”が、この地域を襲い

そのレストランに通じる国道が破壊されてしまった。


なんというタイミングなのか!!


オイラにしてみれば、

安定を望む、妥協的マインドを粉々に破壊された。


ROCKするんだ!


目を覚ませ!


危険に生きよ!


そんな彼方からの叫びに聞こえる


“いままで経験したことのない記録的豪雨”の


雨の音であった




             =今日の日差し=


山里の冬は速い


この時期になると、長い冬の訪れを予感させられ

こころ寂しいメロウな想いに包まれてしまう。


しかし、実際真冬の白銀の景色、その静寂の世界に突入してしまうと

この季節にしか味わえない趣があってなかなか良いものなのです。


『色華やかに花咲く時期が終わってしまうのが寂しい』って言うのが正確で

それに執着している自分が寂しいわけで


けっして冬が来るから寂しいのではない。


寂しさとは、昨日の幸福を明日も手に入れたい願望ゆえに

今日の日差しの暖かさを、肌身に感じられない状態である。





          =LIVE!!山口市民フォーラム~あたらしい風=



挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)



Live!!山口市民フォーラム~あたらしい風


ライブ会場:山口市民会館大ホール 11/6


『WANIさん!お疲れ様でしたーっ

すごくたのしかった~、このコラボ面白いので

営業に回ろうかなぁって思うんで、よろしくネ(笑顔)』


今回の仕事を紹介してくれた

プロの雅楽奏者、末長 愛からの電話だった。


『えーっと、ネギトロ丼は味噌汁が付いていましたよね?』


出番が終わったオイラは、萩の友人宅に遊びに行こうと思い立ち

早めに会場を抜け出し、萩に向かう途中のファミレスで

“ネギトロ丼”を一人打ち上げも兼ねて注文していた。


ネギトロ丼には薄切りにされたアゲとワカメの入った味噌汁と

深漬けキュウリのお新香が付いている


ネギトロの下一面にひかれた細切りの海苔に

山葵を醤油で溶かしたタレをまぶして頂く“ネギトロ丼”には

味噌汁とお新香セットが!このコラボレーションには欠かせない。


『あ、そう!いやーっオイラの方も助かるしこちらこそ宜しくね(笑顔)』


ネギトロ丼を待ちながら

永末 愛からの電話に即対応してしまった。。


何かあたらしい風が吹いてきている


ネギトロ丼は美味かった。




            =移動が始まった=


数日前からその前兆はあった。


心臓あたりの胸のチャクラを

素手で握りしめつけられたような寂しさに襲われる

いつものヤツダ。。


年々移動するたびに、この傾向が顕著に現れている。


二年ぶり、冬のタクシーバイトをする為

長崎に向けて移動が始まってしまった。


関門トンネルを超え、福岡に入ったところでネットカフェがあったので

休憩を取ることにした.

『二年ぶりの長崎の街はどんな風に見えるのだろうか?』


移動時のネットカフェ。。都会のオアシスであった。




         =facebookでCD売れた!=


facebookのWANIページで

初めて知り合い以外の人にCDが売れてしまった。


買って頂いたのは、自宅でエスティック系の

サロンを経営されている女性であった。

ありがたいことである。


聴いてくれている人がいる!存在してる!


このことに、音楽なんてやる奴は

ホントに救われ、癒され、


『このことゆえに創り続けられている』


と言っても過言ではない。




            =雲助=


二年ぶりに観た長崎西海岸の風景は、

夕陽に照らされた海とこの地独特の地形による街並みが、

奇跡的に美しい輝きを帯びていた。


大不況真っ只中の夜の歓楽街は

以前に比べるとゴーストタウンのように

ひっそりと静まりかえっている。


このゴーストタウンのような長崎の夜の歓楽街こそが

オイラのタクシーバイトの市場なのだ。


不思議なことに、久々にタクシーの仕事をやってみて一週間程になるが

この悲惨な状況にもかかわらず、そこそこの売り上げはあがってしまうのです。


タクシー業って時間給とかは無くて、売り上げ額の半分ぐらいが賃金になるので

売り上げ額がゼロの場合は賃金もゼロなので厳しいと言えば厳しいんでしょうが

会社から営業タクシーを借りて個人商店をやっているようなものですね。


グローバル化が進み、昭和スタイルの多くの個人商店が廃業に到ってしまうなかで

オイラみたいな人間にとって“タクシードライバー”と言う商売、奥深いカモ。。


老荘思想ではないが、

街中を気の向くままに漂い流れ


今日の糧を得れれば仕事を終え、


形を変え、明日は明日の風が吹く


“雲助”とはよく言ったものである。




            =夜の訪問者=


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


今のオイラの棲家である

長崎西海岸の岸壁に立っている

コンクリート造りの建物の一室の窓から


毎夜のように現れる二体のE.T.。。


彼女たちは突然現れて

しばらくの時間この一室で遊んだり

オイラと交信をしたりした後

再び窓から出でて、夜のとばりに消えてゆく


いつからか、彼女たちのことを


チィーとミーって呼んでしまっている。





=牛の糞=


客『運転手さん、働くって何なんでしょうね?』


運転手『ずいぶん難しいことを聞くんですね

    これは聞いた話しなんですがね、

    働くって他人はたらく

    することなんですね』


客『そうか!他人はたらくにすることか

  なるほど!』


ナレーション『あなたの幸せを願う〇〇〇教。』


長崎の某有名宗教団体のラジオCMである。


このラジオCMの影響なのか、タクシーの仕事をやっていて

最近お客から『運転手さん、働いていて楽しいですか?

       私はちっとも楽しくないんです、

       毎日々々同じことの繰り返しで。。

       もう、死んでしまいたいくらい。。』

とか、 

    

『今の人どう思います?』


『えっ、どうってどうゆう意味のどうですか?』


『今、わたしを見送ってくれた人ですけど

 奥さんと別れて、わたしとって言われてるんです、

 年配の方から観て、

 男としてどう思われたかなと。。』みたいな


人生哲学相談じみたことをおっしゃる人が増えている。


オイラにしてみれば、このての話しに応じることは

けっして嫌いではない

いやっ、暇があればグラスを傾けてじっくり話を伺い

ツボにハマればオイラ節を炸裂させたいものだが、


何分、お客の大半は出会って10分以内で別れる

一期一会なのだ。


このようなテーマをこんな短時間の応答で

核心に触れれるわけがなく、

しかたなく当たり障りのない応答にとどまるか


この宗教団体のラジオCMのように

わざとらしい、古臭い道徳教師のような説法になってしまう。


他人はたらくにする為に働くだって?


まったく“牛の糞”である。


自分の為に働いているに決まってるジャマイカ!!




       

           =春よ来い=


アスペルガー症候群という言葉を知ったのは

友人の知り合いにこの病気を国から認定され

障害福祉を受けている女性がいて、


その友人がこの女性のことを知れば知るほど

オイラの性格、性癖に共通の症状があり

そのことを、ことあるごとにしきりに

オイラに告げていたからだ。


友人の報告を否定的に受け止めていて

自分がアスペルガーかもしれないことを

受け入れることは困難であった。


後から知ったことだが、アインシュタインとか

天才肌の人もこの病気だったとか言われている


これを最初に言ってくれていれば

すんなり受け入れていただろうに。。

このアスぺ女性の顔が自分のタイプの顔と真逆であったのだ


アスペだろうが何だろうが、自分に似ていると言われて

嬉しいことと、そうでないことがあるもんだ。


いくら木登りが上手いからって

猿に似ていると言われたらどうだろう?


こんな理由ゆえに、なかなか自分がアスペルガー類であることを

受け入れ難がったが、


アスペルガーは一つのことに没頭すると

廻りがまったく見えなくなることを

最近知ってしまい軽い衝撃を覚えてしまった。


若い頃、東京に住み始めて青山の“CAY”という

ライブレストランでバイトをしながら

レゲエバンドを結成してアルバムのレコーディングに

精を出していたときだった。


それまではレストランスタッフとも楽しくやっていたのだが

レコーディング期間に突入してからは

やたらと先輩スタッフからオイラの仕事態度などに

クレームが増えてきたのだ。


ミュージシャンである自分とレストランスタッフである自分の

切り替えが出来ていないと言うか、出来ないのだ、

同時に二つ以上のワークを出来ない人種なのだろう。。



そのレストランは店長をはじめ

モデル、俳優、ダンサー、ミュージシャンなどが

スタッフの中に多く居て、オイラがレコーディングに

入っておかしくなっているんだろうと大目に見ていてくれた

みたいだが、余りに異常だったのか、


ついに店長から話しがあるからと喫茶店に誘われて

今のままの仕事態度ではマズイことを

丁重に真摯に告げられたオイラは、


バイトとレコーディングの両立は出来ないと悟り

店長の丁重な説明が終わった直後に店のスタッフを

辞めることを告げると

神妙な店長の顔から、安堵の微笑みがこぼれていた。


今、冬のタクシーバイトしながら

山里に春が訪れる頃にバイトを止めて


山里に帰り、あたらしいアルバム製作に

没頭している近未来をイメージしている。。


春よ来い


はやく来い



         =エピローグ=


“それからのレゲエマン~彼方からの庇護”は前回のブログ

“春よ来い”でおめでたく完結してしまった。。


相も変わらずの、浮き草ぐらしの浮雲レゲエマンよ

いったいお前は何なんだ!何処に行こうとしてるんだ!


願わくば、おまえはお前のままであってくれ


この基地外じみたバビロンシステムの中で

無頓着に漂う風であってくれ


丘の上に立つ見張り番であってくれ


一切は過ぎ去って行くという証人者であってくれ


暑かろうが寒かろうが、雨が降ろうが降るまいが


それでも川は流れ、流れている




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