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L06  作者: KYOS
1/2

脱走、そして出会い

ジリリリッ


日本にあるとある某国軍事基地の研究施設で真夜中に似つかわしくない警報音が鳴り響く


中にいた研究員は何事かと、持ち場を離れて廊下へと皆出てくる


と、館内アナウンスが研究員達に現状を告げる


「廃棄予定の実験体L06が脱走、姿を確認次第中央管理室へ報告をするように、繰り返す、実験体L06が脱走、確認次第中央管理室へ報告を」


アナウンスを聞いた研究員達がどよめいた


皆、口々に「あんなものが基地外へ出たらここは終わりだ」とつぶやいている


その時、廊下の突き当たりの奥から「いたぞ」という叫び声とともに自動小銃の発砲音が聞こえた


しかし、それもすぐに何人かの悲鳴とともに聞こえなくなる


それから、間もなく再び館内アナウンスが響いた


「実験体L06が館外へと逃亡、管理室は当基地特殊部隊へ連絡、繰り返す、L06が館外へと逃亡、管理室は当基地特殊部隊へ連絡」


あたりは騒然となった


-------------------


目が覚めると、来たことのない小さな部屋にいた


たしか、「家」で寝ていたはず


―――ここは、どこだろう


そう思いながら部屋の壁を眺めた


「教育」っていうのなら壁に変な弱い板があって、パパが映っているはず


だけど、いくら探してもそれらしいのは見当たらない


すると突然、部屋の角がわずかに開き大量の水が入ってきた


水はとどまることを知らず、すぐに胸ぐらいの深さになった


さすがに、危険を感じて「パパ」って叫んだ


いつもなら、どこからともなく来て私を助けてくれる


だけど、今日はいつまでたってもパパは出てこない


「パッ、パパ!? なんで来てくれないの!? パパ!!!」


私は必死になって叫んだ


だけど、水かさが増えるばかりでそのうち叫ぶことも出来なくなった


私は覚悟を決めた


扉のようなところに行き、過去に一度しか出したことのない全力の突きをぶつけた


バキッ


気持ちのいい音がして壁に亀裂が入る


突きを与えた場所から亀裂が広がり、そして―


ドゴォ


凄まじい音がして壁が崩れた


そこから溜まっていた水が一気に流れ出す


水の勢いに負けて私も一緒に壁の向こうへと流される


少しの間のあと水が引いた


立ち上がると、音に気がついた黒い棒みたいなのを持った人と目があった


その人の目は・・・恐怖に染まっていた


何がそんなに怖いのだろうと思いつつその人に近づいた


「くるな!」


叫び声とともに手に持っていたものから轟音が聞こえた


「痛っ!」


右太ももに激痛が走る


思わずその部分を押さえてうずくまる


それと同時にその人に対する恐怖心が芽生えた


その人が黒い棒をこちらに向けているのが目に入る


本能的に地面を蹴りその人に肉薄するとお腹に思い切り肘うちした


「ぐぁ!!」という叫び声とともに体が10メートルほど吹っ飛ぶ


それで少し落ち着いた私の後ろに気配を感じた


今飛ばした人と同じような人がそこに立っていた今飛ばした人と同じようなものを持っている


それが連続の轟音を発して鉄の塊を飛ばしてくる


1発、2発と避けていく


―しかし


「くあっ!」


右腕と左の脇腹に鉄の塊が当たった


激痛が体に走り思わずうずくまる


その時、突然轟音が止んだ


よく分からなかったけど、今を逃す手はない


うずくまっていた上体を持ち上げ、その人に向かって床を蹴る


一瞬後にはその人に肉薄する


肩を掴み相手のお腹に膝蹴りを食らわす


その人は天井にぶつかり力無く床に落ちた


―ここにいてはダメだ!


そう思い廊下を駆け出した



―――――――――

「あち~」


夜になったのに肌にべたつく空気がまとわり付く


俺は夜の道路にいた


俺ん家は少し町から離れてるからコンビニも少し歩かなければいけない


自転車で行けばいいけど今友達に貸している


だから、歩いているけど・・・暑い


この町は日本でも結構南にあるから5月にもなるともう暑い


とりあえず暑さを感じないように無心で歩く


・・・・無理


暑すぎて雑念が追い出せない


なんて、うだうだ考えていたらいつのまにか目の前にコンビニが見えていた


このままじゃ暑さで狂いそうだから足早にコンビニに入る


「はぁ~」


おもわずため息をつく


冷房は文明の利器だ

冷房サイコー!


なんて思いながらジュースを適当に選び出し清算する


だり~


また、暑苦しいなかを歩かなくちゃいけない


そう思うと憂鬱だった



なんで、こんなに暑いんだよ・・・・


内心、毒づきながら帰りの道を歩く


今、俺が歩いている道はこの町にある基地の真横を通っている


だから、昼なら車ぐらい通っているが夜になったら猫でも通らないような静かな道だ


だから、分かったんだと思う


基地のフェンスの横の草村にある人の気配に


最初は酔っ払いかと思った


たまに、酔い潰れて倒れているやつがいるからだ


だけど、よく見ると酔っ払いじゃなさそうだ


気になって覗き込むとそこにいたのは何と女の子だ


きれいな長い黒髪


かわいい顔


そして、そんな彼女を包む白いワンピースにそれを彩るどす黒い血


― て、まて!


「おい、だいじょうぶか! しっかりしろ!」


叫びながら体を揺する


「んっ・・・」


反応がある!


とりあえずこいつを背負う


そのまま、足早に家へと急いだ



―――――――――

眩しい・・・


わずかに目を開けると窓から太陽が入ってきている


その光を手で遮る


周りの様子が見えてくる


白い壁に青淵の窓―


私は飛び起きた


「痛っ!・・」


体のあちこちが痛い


だけど、痛いところには服と同じようなものが巻き付いていて血は出てこない


取ってみようと腕を上げて、やめた


腕、というか全身が重い


何もやる気が起きない


しばらく目の前にある白い壁を意味もなくぼーっと眺める


ガシャン!!


私の左手にある壁の奥からものすごい音が響いてきた


なんだろうと思いつつその方向を眺めていた


今度は足音が同じ方向から近づいてくる


止まったと思ったら後ろのドアから茶髪の人が顔を覗かせた


私は思わず体を起こし身構える


それに気づいたその人は目を丸くして「やっぱ起きたか」とつぶやいた


―――――――――


―どうしたもんかな・・・


つい勢いで基地のそばの茂みに倒れていた女の子を連れてきてしまった


とりあえず、

この子の名前だけでも知りたいけどまだ眠ったままだ


服に血が付いていたけどたいした怪我じゃなくて切り傷ていどのものだった


とりあえず、今の問題はこの子をどうするか、だ


まさか、うちで預かるわけにもいかないし・・・


そんなことを考えながら台所の切れた電球を代えていた


だけど考え事をしていたおかげで―


ガシャン!!


俺は盛大に、乗っていた椅子から足を踏み外し落ちてしまった


さすがにこんな大きな音を起てたら目も覚めるだろうと思って、あの女の子が寝てる部屋へ行く


戸を半分開けて頭だけ入れて女の子を見ると、案の定起き上がった女の子と目があった


「やっぱ起きたか」


俺はため息交じりにそう呟いた


まあ、起きて当たり前なぐらいの音をたてたんだし


と、女の子は突然飛び起きるとボクシングみたいなポーズで構えた


―もしかして俺警戒されてる?


でも、考えれば無理もない状況だ


目が覚めたら知らない場所で、しかも知らない人間が出てきたら誰でも警戒する


女の子ならなおさらだ


とりあえず、誤解を解こうと話し掛けてみる


「大丈夫か?君、基地のそばで倒れてたんだけど」


彼女は動かない


仕方がないから手を広げて敵意はないことをアピールしてみる


「大丈夫、俺は何もしないから

怪我も大丈夫そうだし」


そう言うと、女の子は自分のホイタイを巻かれた部分をちらっと見て


「本当に、何もしない・・・?」


と、今にも消えそうな声で聞いてきた


「しないしない」


そう言いながら頷く


女の子は緊張が切れたのかその場にへたりこむ


ときおり、かすかに震えている


あんな怪我をして倒れていたのだから、よっぽどのことがあったのだろう


とりあえず俺は女の子が落ち着くまで離れていようと台所へと戻った


―――――――――


ここどこだろう…


上半身をおこし、向かいの壁を見ながら思う


なんとか「家」から逃げて、だけど途中からふらふらして網を昇ってそのまま落ちたはず


そこからあとの記憶がない


たぶん、倒れていたところを連れて来られたんだろう


さっき見た感じじゃ悪い人じゃないはずだ


だけど、完全に信じた訳じゃない


「家」から出るときも、いままで仲良くしてくれていた人が黒い棒を構えて襲ってきた


今の私に信じられるのは「パパ」しかいない


そんなことを考えているとドアからさっきの人が入ってきた


「とりあえず、これ、食えよ」


そういって渡してきた皿の中にはご飯をお湯で解かしたようなものがあった


「これ、なあに?」


「お粥、知らねぇ?」


お粥…


聞いたことも見たこともなかった


とりあえず、手渡されたスプーンで少しすくって口にはこぶ


「おいしい!」


思わずそういってしまうほどおいしかった


「よかった。味付けうまくいったみたいだな」


そんなことをつぶやきながら彼はため息をついていた


私はそんなことおかまいなしに「お粥」を頬張っていた


―――――――――


「なあ、なんであんなところで倒れてたんだ?」


女の子が機嫌よくお粥を食べているところに聞いてみた


しかし、そのまま返事はない


まだ、信用ないのかと落ち込みかけたとき、女の子は小さな声でつぶやいた


「私、追われていたの」


女の子は食べるのを止め淡々としゃべりだした


「私、パパのお友達に殺されそうになったから逃げてきたの。まだきっとあの人達は私のこと探してる。だから私には帰る場所がないの」


「ちょっと待った。そんなことがあったんなら警察行こうよ。そんで何とかしてもらえば―」


「警察って何?」


――へっ?


何言ってんだこいつ?


「警察知らないの?」


女の子は無言でうなずく


一体何処の子だ、こいつ


「なぁ、ここの窓からでいいから家教えて」


言うが早いか女の子は窓に駆け寄り少し遠くを眺めてとある方向を指差す


「はい?」


素っ頓狂な声をあげてしまった


だって指差す方向は―


「基地?」


女の子は頷く


「じゃあ、基地の関係者?」


??


頭の上にクエスチョンマークを浮かべる


基地の前にで倒れていながら基地を知らないようだ


その後、色々聞いてみるけど本当に何も分からないらしい


と、ふと気づく


「そういや、名前なんていうの?」


そういえば名前を聞いていない


「L06(エルゼロロク)」


「へっ?」


何それ? 管理番号じゃないんだから


「エルゼロロク?それが名前?」


コクッとうなずく


「お父さんたちにはエルゼって呼ばれてた」


・・・ナンなんだコイツ


まあ、考えていても仕方ないし人の家のことに首を突っ込む気もないから置いておく


「そっか、俺は神谷裕輔、よろしく」


そういって握手する


その手は小さかった

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