7、0の概念
どれだけ呼び掛けても反応がない。見たところ怪我はしていないし、呼吸もしっかりしている。
「どうしよう。」
電波は圏外になっているので電話はできない。助けを呼ぶためには一刻も早くここから出なければいけないだろう。何が起きているのか分からないが、このままここにいるわけにはいかない。
一先ず父は大丈夫だと判断して、私は立ち上がった。辺りを見回すと壁についたランプが薄暗く光っている。
父が横たわっている横には2階へ続く階段があり、四方八方には扉がある。洋館を外から見た時は3階建てで窓もたくさんあった。かなり大きな洋館のようだから、部屋が多いのも納得できる。
後ろにエントランスのような空間があるので、恐らくあの扉を出れば外へ出られるだろう。私は足早に扉へと向かった。
扉にはドアノブの上に16という数字が書かれていた。その下には小さな細長い穴が開いている。不思議に思ったが、外へ出る方が先だと思いドアノブを回した。
「あれ。開かない。」
いくら回しても、押しても引いてもびくともしない。鍵がかかっているのか、壊れているのか。入る時は普通に開いたのに。
そんなふうに考えて試行錯誤していると、足元に紙が落ちていることに気付いた。
「何だろう。」
私はしゃがんで紙を拾った。折り畳まれた紙を開くと、綺麗な白い便箋に丁寧な字でこう書かれていた。
ご来場いただきありがとうございます。本日は新鮮な美術品が揃っています。16名の展示品を見ていただき、16枚のネームプレートを集めてきてください。それを扉の穴に入れ、数字が16から0になったとき扉が開きます。
また、今回の作品のテーマについて考えてみてください。きっとあなたの人生を変えてくれるでしょう。大切なのは、恐れないことです。
アンヘルより
紙には地図も書かれていた。番号と矢印も書いてある。よくある展示会のフロアマップのようなものだ。この通りに見て回れということだろうか。
何度か読み返してみたが、全く意味も意図もわからない。悪い夢なら早く覚めてほしい。そう願わずにはいられなかった。でも残念なことに、これは全て現実だった。
神水流仙寿 55歳 園長




