2、悪夢の始まり
遠足は本来楽しいものである。だから、あんな風になるなんて思いもしなかった。
その日は夕方から雨が降る予報だった。迷宮の森というアスレチック広場に来ていた園児たち16人は、走り回って楽しそうにはしゃいでいた。もう少しで15時になる。そろそろ帰らなければいけない。
「みんなー、あと10分で帰るよー。依麻ちゃん、砂遊びやめてお片付けしようね。楓絃くん、遠くまで行かないでね。」
大きい声で呼びかけても、園児たちの半分も聞いていない。こんな時、自由っていいなと呑気に思ってしまう。
「明日香先生、ここまでバス持ってくるから子供たちを集めておいてくれるかな。ここら辺はすぐ暗くなるみたいだし、もうすぐ雨も降るから早く帰らないと。」
園長先生はそう言って、足早にバスの方へと歩いて行った。
「明日香先生、もう帰るの?」
「もっと遊びたい。」
「今日はもう帰らないといけないんだ。明日は幼稚園のお庭でまた遊ぼうね。」
「タッチ。杏弥が鬼だ。逃げろー。」
「今バリアしたから効いてませーん。陽悠がそのまま鬼だからな。」
女の子たちは帰る準備をし始めてたが、男の子たちはまだ鬼ごっこに夢中になっていた。
「じゃあ、バス来るから先生のところに集まってください。10秒以内に集まれた人にはご褒美があります。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0…。何人集まれたかな。」
数えてみると、集まっているのは15人。1人足りない。
「あれ、1人足りないな。来ていないのは誰だろう。」
園児たちはお互いに顔を見合わせている。
「あっ、優汰くんがいないよ。」
音華ちゃんがそう教えてくれた。
「優汰くんなら、さっきあっちの方でお花を踏みつけてたよ。ダメだよって言ったけど全然聞いてくれなかったの。」
天璃ちゃんが怒った顔でそう言ったとき、ちょうどバスが到着した。
「そうだったんだね。教えてくれてありがとう。それじゃあ、園長先生来たからみんなはバスに乗って待っててね。」
「はーい。」
「園長先生、優汰くん探してくるので子供たちのことお願いします。」
「はいよ。みんな忘れ物はないかな。1人ずつ順番に乗ろうね。」
園児たちはしっかり言うことを聞いて、次々とバスに乗っていく。それを確認して、私は優汰くんを探しにお花畑へと向かった。




