たった一つの応援が俺の人生に光をあてた
「俊介、がんばれ!」
中学3年の晴れた日に応援の声が校庭に響く。しかも女の子の。もし今が運動会とか体育祭ならよくある光景かもしれない。もしくは俊介という男が文武両道のイケメンだったら何の不自然さもないだろう。
でも今は体育祭とかではなくごく普通の体育の授業中だ。特別な授業をやっているわけでもなく、単なるマラソンで校庭を何周も走るだけ。こんな内容の授業なんて体育の先生がサボりたくてやっているのでは?と思ってしまうぐらいには人気のない授業内容だ。クラスの男どもは文句を言いながら仕方なく走っている。
そして俊介こと小松俊介とは俺のことなのだが、当然ながらイケメンとは程遠い単なるモブである。女の子の応援を受けられるような身分では当然ない。
応援してくれたのは佐藤陽花里だ。クラスの中では話の中心にいつもいるような社交的な女の子だ。愛らしいルックスもあいまってクラスでは人気がある。今の体育の授業は男はグラウンド、女は体育館で球技をやっている。ちいさな体育館しかない学校だから、男女別ということはよくあるのだ。体育館の方を見てみると声をかけてくれた佐藤さんがいる。少し先に授業が終わったらしく、教室に戻るところのようだ。
それにしても何で単なる体育の授業で、よりにもよって俺の応援を?
モブな俺は、佐藤さんのグループには当然入っていないが、佐藤さんは社交的なだけあってたまに俺に声をかけてくれることはあった。でも応援してもらえるような間柄では当然ない。あえていえば、俺はマラソンはそれなりに得意というのはあるので、体育の授業とはいえ先頭集団で走ってはいる。運動神経には恵まれず体育などではまったく活躍できないモブではあるが、それでも何らかの方法で活躍したかった俺は、帰宅部ながら家で毎日かなりの距離を走り込んでいた。バスケットや短距離走と違ってマラソンなら運動神経は関係ないし、練習もただ走るだけでいい。でも短距離走みたいにクラス対抗リレーなんていう活躍の場もあるわけでもなく、せいぜいマラソンの授業で先頭集団に入るぐらいなのだが、いずれにしても応援されるような状況でもない。
佐藤さんとは目があったが、とくに表情が赤らむなんてこともなく、そのまま教室に戻っていった。俺も手を振ったりなんらかのアクションをした方が良かったのかもしれないが、戸惑いと恥ずかしさで何もできなかった。ただ、それでも応援してもらったのだからと、さらに気合を入れて走った。
中学でこんな応援を突然したら、授業後に皆からの冷やかしを受けそうなのだが、佐藤さんが社交的なことをわかっているのか、もしくは俺がモブだったからなのか話題になることはなかった。
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その後も、なぜ応援してくれたのか理由を考えてみたが、わからないままだ。
ひょっとして好きだったりするのか?なんてことも考えたが、髪を上げればイケメンなんてこともないモブの俺に、クラスの中心だった佐藤さんが好きになる理由なんてないし、そもそもその後も時折話かけてくれるぐらいで俺に対する態度に変化はなかった。
とすると、からかわれたのか?とも考えたが、佐藤さんはクラスの皆から好かれているだけあって、人をからかって遊ぶようなタイプではない。それなら気まぐれ?もしくは罰ゲーム?といろいろと理由を考えてみたが、やっぱり皆から好かれている佐藤さんがそんなことをするとはどうしても思えなかった。本当はあの時に理由を聞けばよかったのかもしれない。でもそのときには恥ずかしさなどがあって聞けず、数日経ってしまうといまさら聞くのか?という葛藤もあって余計に聞きづらかった。もっと言えば、もしからかわれていたら?という怖さがあったからかもしれない。
ひょっとしたらモブな俺が、クラスの中心の佐藤さんに近づくチャンスだったのかもしれないが、結局それまで以上に親しくなることもなかった。その後、中学を卒業して別々の高校に進学した。
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高校では陸上部に入った。種目は長距離走だ。当たり前だが中学から陸上部だった奴にはまったくかなわないが、それでも家で練習してあったので、それなりには走れている。こんなことなら中学のころから陸上部に入っておけばよかったのかもしれないが、運動神経がないモブな俺には部活でやっていける自信がなかった。それでも高校に入って陸上部に入る勇気が持てたのは、あの佐藤さんの応援があったからのような気がする。
あの応援は自分にとっては特別な意味があった。あの応援を受けた瞬間は戸惑いと恥ずかしさがあった。でも正直に言えば嬉しかった。それはそうだろう、いままだモブでしかなかった自分が、クラスの中心にいた佐藤さんに応援してもらったのだ。応援してもらえた理由は、あいかわらずわからないままだが、例えそれがからかいだったとしても、やっぱり嬉しかった。
そして、その後になって単に嬉しかっただけではないことに気づいた。それは、モブの自分でも応援してもらえるという事実に気づいたこと。モブな自分が他人から応援してもらえるなんて、想像もしていなかった。でも、あのとき応援してもらえた。自分は応援してもらうことが許されるんだと気づいたとき、初めて自分に自信が少しもてるようになったのだ。自信をもってもいいよと言われた気がしたのだ。あんな一言をなんて大げさに考えているんだ!とも思うが、俺は主人公ではないモブなのだ。主人公なら数多くの応援の一つかもしれないが、モブならこのぐらいの影響があってもおかしくないだろう。
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高校に入って数か月経ったある放課後、陸上部の練習もそろそろ終わりの時間になったところで体育館から別の部の人達が出てきて校庭を走り出した。
「あれはバトミントン部だな」
「そうなんだ、いままで気づかなかったな」
なんとなく別の部の人たちが校庭を走っているところを見ていると、陸上部の友人の岡田がどの部なのかを教えてくれた。おそらくこれまでも練習の終わりに校庭を走っていたのだと思うのだが、全然気づいていなかった。高校になって初めて部活に入ったこともあり、これまで周囲を見る余裕がなかったということなのかもしれない。
バトミントン部は男女一緒に走っているようだ。ふと、その中に同じクラスの大塚さんがいるのに気づいた。大塚さんは見た目はおとなしそうでいかにもスポーツ女子という感じではないのだが、実はバトミントン部だったのか。練習の最後に走るにしてはかなりのペースで走っている。さすが高校の部活だけあって、なかなかハードな練習をしているな。大塚さんもかなりきつそうな表情はしているが、脱落せずに先頭についていっている。
すごく頑張っている大塚さんを見ていると、応援したいという感情がわきあがってきた。見た目おとなしそうな大塚さんが、練習の最後の走り込みを頑張っているのを見ていると、なんとなく応援したくなったのだ。
そうか、あのとき佐藤さんが俺を応援してくれた理由はこれだったのか。
あの体育の授業では、皆やる気なさそうに走っていたが、俺は家で練習していたこともあって、かなり気合を入れて走っていた。その俺のがんばりを見て、佐藤さんは純粋に応援したいと思ったのだろう。なんとなく、佐藤さんらしいな、と思えた。
それなら俺も佐藤さんと同じように応援の声をかけよう。大塚さん、がんばれと。
でも声がでなかった。ほんの一言だけなのに。わずか10文字ぐらいの言葉。簡単に言えるはずの言葉。でも声がでない。そのとき、俺はその一言をかけることが、どれだけ勇気が必要なのかに気づいた。なにしろ、今は放課後で校庭では陸上部だけでなく、サッカー部や野球部などいろいろな部活が活動している。その中で、少し離れたところを走っているバトミントン部の大塚さんを応援するのだ。かなり大きな声が必要だし、そんなことをすれば皆の注目を浴びてしまう。
あのときは体育の授業だったけど、それでもクラス全員の注目を浴びることになるのは佐藤さんはわかっていたと思う。それでも佐藤さんは応援してくれた。応援を受けたときには全く気付かなかったけど、それは相当に勇気が必要だったのではないだろうか?自分も勇気を出して応援しようとは思うのだが、やはり声がでない。結局、その日は声をかけることはできなかった。
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その後も毎日、応援しようとはしたのだが、どうしても声がでてこなかった。皆の注目を浴びるだけでなく、ひょっとすると大塚さんにとっても迷惑なのでは?とかいろいろとネガティブな考えが渦巻いてしまう。少しは自信が持てるようになってきたとはいえ、なかなか前向きに考えられるようにならない。このままではずっと声をかけられないのではないだろうか?いや、佐藤さんはあのとき、声をかけてくれたじゃないか。佐藤さんに応援してもらったのに、自分は応援できないなんてことがあってはいけない。ここで応援できなければ、きっと後悔すると思うと、なんとか勇気を絞り出すことができた。
「大塚さん、ファイト!」
放課後の校庭に大きな声が響き渡る。自分でもよく大きな声をだせたと思う。おそらく大塚さんも聞こえただろうが、こちらを見たりとか手を振ってくれたりとかの反応はなかった。
「おい、どうしたんだよ。いきなり大声で応援なんかして。大塚って子が好きなのか?」
岡田がびっくりした顔で聞いてきた。まぁあんな大声をだしたら驚くよな。
「そういうんじゃないよ。バトミントン部の中に同じクラスの女の子がいたんだ。すごく頑張っているみたいだから応援しただけだ」
「でも無視されていなかったか?」
「いいんだよ。応援できただけで満足なんだ」
「そうなのか?変な奴だな」
まぁわからないだろうな。今の俺は応援できただけで満足なんだ。あのときの俺と同じで、大塚さんも手を振ったりなんていう余裕はないだろう。
「そうか、それにしても度胸あるなお前。こんなたくさん人がいるところであんな大声をあげるなんて」
「頑張っているところを応援してくれたら嬉しいだろ。それだけだよ」
「応援されたら嬉しいかもしれないけど、ちょっとハードル高くないか?」
「自分が考えているほどは注目をあびないかもしれないぞ。俺も今、そんなに注目浴びていないだろ」
「まぁ確かにそうだけど。そうだよな応援されたら嬉しいよな。俺も応援してみるかな」
「バトミントン部に知り合いがいるのか?」
「いや、バスケット部に好きな子がいるんだよ。応援したら仲良くなれるかなと」
「応援してみるとチャンスが作れるかもしれないぞ」
「そうだな、俺もやってみるか」
「がんばれ」
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翌日の朝、教室に入るとすでに大塚さんは来ていた。俺が教室に入ったところで、こちらに話しかけてくるようなことはなかった。おそらく、このまま俺から昨日の応援の話をしなければ、あのときと同じで応援した理由は大塚さんには伝わらないままだろう。ひょっとすると、そのことで大塚さんはいろいろと理由を考えてしまうかもしれない。あのとき聞いておけばなんて後悔するかもしれない。そんな後悔をしてほしくなかったので、自分から話かけることにした。
「大塚さん、おはよう」
「あっ、小松君、おはよう」
「えっと、昨日の応援のことなんだけど、びっくりしたよね」
「そうだね。突然だったからちょっとびっくりしたかも」
「その、応援した理由なんだけど、からかったとかそういうことではないから安心してほしいというか、練習で校庭を走っている大塚さんがすごい頑張っていたから、純粋に応援したかったんだ」
「そうなんだ、なんで応援してくれたのかわからなかったから、教えてもらえて良かったわ」
「ひょっとしたらバトミントン部の中で何か言われたかな?」
「誰?とは聞かれたけど、それ以上はなかったかな」
「それならよかった。冷やかされているんじゃないかと心配だったんだ」
「それはないよ。部の皆も応援してもらえるというのは大切なことだってわかっているから」
「それならよかった。もし良ければ、また応援してもいいかな。毎日だとさすがに多すぎだろうから、たまにぐらいで」
「うん、応援してくれると嬉しい」
「了解。それじゃ、がんばってね」
「小松君もね」
これで大塚さんが悩むことも無くなるだろう。
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朝、登校してクラスに入ったところで大塚さんの席に行って挨拶をする。
「大塚さん、おはよう」
「小松君、おはよう」
その後、週に2回ぐらい放課後にバトミントン部が走り出すところで応援をかけるようにしている。最近は、大塚さんも手を振り返してくれるようになった。クラスでも良く話すようになってきている。
「昨日も最後にすごいペースで走りこんでいたね」
「そうだね。大会も近いしね。」
「やっぱり高校の部活ともなると、中学とはかなり違ったりするの?」
「うん。中学のときより断然厳しくなったかな。小松君は?」
「俺は中学では部活をやってなかったから、違いがわからないんだ」
「そうなの?高校から部活を始めるというのも大変じゃない?」
「まぁ中学のときにも自主練みたいなのはやっていたから」
「それなら中学でも部活に入っておけばよかったんじゃないの?」
「そこまでの勇気というか自信が持てなかったんだよね」
「小松君が勇気がないなんて思えないけど」
「高校生になって、やっと少し勇気というか自信が持てるようになったんだよ」
「少しの勇気であんな応援できないと思うけど?」
といって大塚さんが微笑む。応援した時には大塚さんがかわいいということは、あまり意識していなかったのだが、その後によく話すようになって、実はかなりかわいいことに改めて気づいた。最初から意識していたら、声をかけられなかったかもしれない。
大塚さんの友達も登校してきたので、それじゃと言って自分の席に移動した。
「なぁ、お前ずいぶんと大塚さんと仲良くなったんだな」
岡田がすごく羨ましそうな顔で声をかけてきた。
「そうだな。少し前に応援してから、良く話すようになったな」
「いいなぁ、大塚さんかわいいもんな」
その話をしだすと意識してしまうので話題をそらすことにした。
「そういえば、お前バスケット部を応援するとか言っていなかったっけ?」
「言っていたけど、校庭で応援するってかなり勇気が必要じゃないか?よくあんな大声だせたな」
「そうだな。あれはかなり勇気が必要だったな。でも告白するよりはハードル低いだろ?」
「いやいや、告白は体育館の裏とかで誰にも見られていないだろ。校庭で応援するとか公開処刑みたいじゃないか」
「公開処刑って、そこまでじゃないだろ」
結局、岡田はその日も応援できずじまいだった。
□◆□
「よし決めた」
ある日、岡田が突然決意表明をした。
「なんだ?帰りに飲んでいくジュースをどれにするのか、もう決めたのか?」
部活では相当に汗をかくので、部活後には喉がカラカラになる。帰りにはいつも店によってジュースを買っているのだ。
「ちげーよ。バスケット部の子に告白をするんだよ」
「あれ?応援するって言ってなかったっけ?」
「どちらにしても勇気がいるからな。それなら告白したほうが早いだろ」
そうなのか?どう考えても告白する方がずっと多くの勇気が必要だと思うのだが。
「今日の練習で自己新のタイムがでたら告白するぞ!」
「自己新がでるのと告白することになんの関係があるんだよ」
「告白のための勇気を出すにはきっかけが必要なんだよ」
「確かに普通にしていても勇気はなかなか湧いてこないよな。」
「だろ。お前も自己新をだしたら何かしてみろよ」
何か勇気が必要なもの。ふと大塚さんが頭に浮かんだ。元々は単純にがんばっている姿を見て応援するようになったが、その後いろいろと話をしているうちにすっかり好きになっていた。ただ自分は陸上部のエースでもなければ、勉強も平均ぐらいだ。とても告白するなんて考えられなかった。告白するための勇気なんて、どうやったら持てるようになるのだろうか。
結局、その日は二人とも自己新のタイムは出せなかった。
□◆□
結局、岡田は自己新のタイムはだせなくても告白はしたらしい。
「玉砕だったけどな」
「でも告白するだけでもすごい勇気だよな」
すごく落ち込んでいるかと思ったが、逆に告白という一大イベントをやりきったこともあってか逆に気持ちを切り替えることができているみたいだった。
「告白してキモイとか、なに勘違いしてんのよとか言われるかもとか思うと怖いよな」
「それはあるかもな。なにしろ俺達はモブだし」
「だよな」
「でも、告白してみないことにはいつまで経ってもわからないからな」
そうだな。岡田の言う通りだな。行動してみないことには、結局はわからないよな。佐藤さんの応援についても、自分から聞けなかったから、本当のところはわからずじまいになってしまったし。行動できないままでは後悔だけが積もっていくのだろう。
「お前も告白して、こっち側に来いよ」
振られる方に誘うなよと思ったが、岡田なりの応援なのかもしれない。
「俺も勇気を出してみるか」
「そうこなくっちゃ」
□◆□
数日後、部活が終わったあとに校門で大塚さんを待った。数人の友人と一緒だったので呼び止めるのも迷惑かもとネガティブな考えが浮かんだが、なんとか勇気を出して話しかけた。
「大塚さん、ちょっと話をしたいんだけどいいかな?」
「いいけど、どうしたの?」
一緒だった友達には先に行ってもらって話を聞いてくれることになった。といっても、あまり時間をかけて話をしても申し訳ないので、すぐに本題に入ることにする。
「最初はがんばっているところを純粋に応援していたんだけど、そのがんばっているところを見ているうちに大塚さんのことが好きになりました。付き合ってください。よろしくお願いします。」
頭を下げて手を差し出して反応を待つ。
「これまで応援してくれてありがとう。私からも応援できればよかったんだけど、なかなか勇気がでなくて、だからこれからは私からも応援させてほしいです」
「えっと、付き合うんじゃなくて応援しあう間柄ということ?」
「違うよ。一緒に応援しあうんだから付き合うってこと」
そうなのか?ダメだったのかと思ったところにOKがでて、すっかり力の抜けてしまった俺は座り込んでしまった。
「どうしたの、小松君。大丈夫?」
「いや、もうダメかと思って。力が抜けちゃった」
「わかりにくくてごめんね。でも告白してくれてありがとう。とても嬉しかった」
「もう一生分の勇気を使い切った気がするよ」
「うーん、まだまだ勇気が必要な場面はこの先あると思うけどな」
「そうなの?初デートに誘うとかかな?」
「まぁおいおいね。友達を待たせてるし、明日からよろしくね」
笑顔の大塚さんを手を振りながら見送ったが、しばらくは立てなかった。部活で疲れていたというのもあるけど、相当に緊張していたらしい。自分でもよく告白する勇気を持てたなと思う。
□◆□
「俊介、ファイト」
大塚さんが校庭を走りながら応援してくれる。俺は手を振って応えた。あれから、お互いに応援するようにしている。
「お前も告白するとはなぁ。よくチャレンジしたな」
後ろから岡田が話しかけてきた。
「いや、お前も告白していたじゃないか」
「俺が告白したときには相当な勇気が必要だったからな。お前も勇気を振り絞ったんだろうなって」
「そうだな。一生分の勇気を使い切った気がするよ」
「でも告白してみないと分からないものだよな」
「いまでも信じられないけどな。こんな俺でいいのかなって。」
「恋愛にまぐれなんてものはないんだから、うまく行ったのはお前の実力だろ。自信を持っていいんだよ」
「自信を持っていいというのも信じられないんだけどな」
「高校生で彼女持ちなんだぞ。それで自信がないとかないだろ。あー、俺も彼女が欲しいなぁ。」
そうか、自信を持っていいのか。以前のモブでしかなかった俺からすると、いまの状況なんて想像もつかなかったな。たぶん中学のときの佐藤さんのあの応援がなかったら、勇気も自信も持てないままだったはずだ。あの一つの応援から少しずつ勇気と自信を持つことができるようになった。あの応援が人生の分岐点になったのは間違いない。
いつか同窓会かなにかで佐藤さんにまた会えたら、今度こそお礼を言わないといけないな。もう佐藤さんは応援してくれたことを覚えてはいないかもしれない。でもあの応援が俺の人生を変えてくれたんだ。ありがとうと。
終わり
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