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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

old mad scientist memories

作者: ARS

これはこれは私が私たる者を見つける少し前の、物語。

そして、私がやってしまった物語と言えようか。


荒廃した大地に私は立っていた。


別段大きく違和感はない。

草木も生えぬ、土地で私ら立っている。


あれは丘だろうか?太陽も覆われる雲で丘は影しか見えない。


となるならば、私としてもそれを問題にする必要はない。


ただ歩むだけと言えよう。


「…ーー!ーー!ーー!」


かつての仲間の名前を呼ぶ。

返事はない。


近くにいないのか或いは私一人別の場所に飛ばされたか。

そこはどうでもいいかもしれない。


今更考えたってどうにもならないわけだし。


「にしても、何もないな」


ポツリと呟いてみるものの本当に空虚だと思う。


そんな時だった。


ギィィィン!!


凄まじい衝撃波が走る。


あれを私は知っている。


「あの翼は…使徒!!!」


巨大な機械の体と白い翼を持った人型の化け物が降り立つ。

無機質に周囲を見渡して私を見据えた。


「チッ、今の私に子供たちはいない!なら私の体を使うしか…」


動き始める。

私はそれに合わせて逃げるように走り始める。


あれ?


私を知らない?


奴らにとって私は最優先での警戒対象のはず。


ならば、別の…いや、この気配は私の知るやつの使徒で間違いはない。


「まぁ、いい…そっちの方がどうにかできるからね」


検証や考察は後だ。

今は目の前の敵に集中する。


「右手は確か…あれ、いない?違う」


ここで私は見落としていた。

そもそもこんなに私の体が軽いわけがない。


要するに…


再構築された肉体で、今の私は何も持たずにいる。


「あ、これは死んだね」


そう思った瞬間だった。

使徒を横から殴った巨大な何かがあった。



体長20メートル程はある使徒を吹き飛ばしている。

ということは同じだけの力或いは同じだけの大きさがある訳で…。


そこで私は見た。


「あぁ、あれはなんだろうか?一体」


私は嗤う。


それを見たのだ。


その兵器は…


巨大な機械兵だった。

それも明らかにその出力は機械だけではない魔法や霊的力の産物。


「素晴らしい、あんな技術が欲しい!」


私は手を伸ばすのだった。

これは私がなんの自重もせずに色々としてしまった、反省の物語であり、一つの世界を救ってしまった物語。


私…グラム クスカバーの機械兵の物語である。


***



「ふははは!なんだねそれは!凄まじい技術の結晶ではないか!!」

「あ、いやなんだねきみは!」


私は今、彼ら…えーっとピリスト騎士団だったかな?

に案内されて拠点で彼らの機兵について聞いていた。


「おっと失礼、私の名前はグラム クスカバー。由来は確か魔剣グラムとエクスカリバーだね」

「グラム?エクスカリバー?」

「おっと、わからないということは私の知る世界ではないことが明らかになってしまったなそれもそうかあの戦争の結果は私たちの敗北であったのだから」

「押しが強い!誰か助けてくれ!」


私が問い詰めていると…


「客人よその辺でやめてはもらえぬか?」

「おっと失礼、確かに私は客であったな、数々の非礼を詫びよう、少年!」


私はリーダーらしき男に言われて素直に謝罪をする。


「くっ、てか、俺と同じ歳くらいだろ?」

「ほぉ、それは本当かね、このエネルギーの流れで数百年単位で生きてるとは…」


シャキッ


気がつけば私には剣が突き立てられていた。


ふむ、何か失言をしてしまったかな?


「申し訳ない気に触れてしまったのなら謝罪しよう」


リーダーらしき男に問いかけるがすごい険しい表情である。

ふむ、この様子から考えてみると…


「君はあの使徒達に対するレジスタンスであり、私がその仲間と考えたのかな?」

「当たり前だろ!人間が数百年も生きられるわけがない!」

「おっと、至極真っ当な意見だね、確かに私は普通ではないが、一応これでも人間を自負してるのだよ、傷ついてしまう」


私の言葉に誰も怯む様子はない。


まぁ、仕方ないことといえよう。

この世界は使徒によってボロボロである。


こうして、人類は地下に引きこもって生活してるのだから警戒は当然といえよう。


ならば私としても殺されるわけにはいかないが出ていくくらいならしようか。


そんなことを考えていると


「はぁ、総員剣をおろせ」

「いや、なんで!」

「下せ、もしこの女が奴らの仲間なら今ごろ我々は殺されて、この地下都市を支配してるはずだ」


ふむ中々に面白い話を聞けたね。

支配を奴らは目的としている。


ならばあの賭けはうまく行ったということか。


「その話に心当たりがあるね」

「は?」


先ほどの少年が素っ頓狂な声を上げる。


ふむ、金髪で見目顔立ちとしては西洋的で堀が深い、まぁ、私の感性には合ってないがイケメンではあるな。


おっと、くだらない思考だったね。


「きっと、私が過去に戦ってたものが裏に控えているね」

「なるほど、貴殿は奴らの正体を知っていると?」

「まぁ、見れば分かるさ何度もやり合った奴らの派生版だからねいやでも分かる」


私の冷たい声にリーダーらしき男は息を呑む。


彼はまだ中年と言ったところだろうか、先ほどの若い少年と違い堀が深くなり、顔の骨格も硬くなってる印象だね。白髪なのか?はたまた銀髪なのかは議論の余地はありそうだがね。


「それで君は何者だい?」

「んー難しい話だね…敢えて言うならレジスタンス。たった一つの神を殺すために集まったレジスタンスの一人!美少女マッドサイエンティスト!グラムちゃんだぞ⭐︎」


「「「「…」」」」


なぜみんなして黙る?


泣くぞ泣いちゃうぞ。


まぁいいか。


にしても、


暗い街、階層ごとに分かれてる貧富の差、碌に食物がないのか金持ちすら痩せている。


「本当に末期だね」


私はそう呟くのだった。



***



「なるほどなるほど、これが君たちの使ってる機械兵!ゴッドレプリカ…神の模造品かぁ!確かにこの力の流れから考えても素晴らしい逸品だ」

「お前見ただけで分かるんだな」

「当然であろう!!こう見えても発明家である私が…これは…」


私はとあるものを見つけて固まる。

これは…


「この機械兵の心臓かい?」

「ん、あーこれはデウスコアっていうやつだな」

「へぇ、そういうものなんだね」


なるほどね…そうか…



そうなのか…いや、語ることはやめよう。


これは彼らの罪ではない…私の罪でもない。


しかし、私にとっては原罪を突きつけられた気分とも言える。


だから


「はっはっはっはっはっはっはっ!!!」

「急に笑い出しやがってどうしたんだよ!」

「いや、なんでもないさ…こんなところでこれを見ることになるとはね神の模倣品?あーそうか確かにそうなるよね」


私は笑う。

そうか、でも、この世界を救うためにあったのならこれは意味のあったことなのだろう。


だが、それ故にこのデウスコアを私が使う資格はないね。


「よっと、ありがとね…えっとピリスト騎士団のゴッドレプリカを見させてもらって」

「ピリオド騎士団だ!」

「おっと、そんな名前だったかな。すまない今度は間違えないようにしておこう」


私がそう言うと金髪の少年は不服そうに私を見る。


「どうかしたのかい?」

「いや、あんたのことだから寄越せとか言うのかと」

「酷ないかい!?私をなんだと思ってるんだ?私は技術者だ欲しいと思えば作るのが普通であるべでしょ!?」

「いや、知らんけど」


まぁ、新しく作ると言う発想に至らないか。


全てがギリギリの世界で資源を使うことすら躊躇われるこの世界で物の開発というのはリスクと隣り合わせとも言える訳なのだろう。


にしても、知れば知るほどこの街はもう終わる世界の象徴にしか見えない。


「ねぇ、少年はさ願いとかあるのかい?」

「は?んなもんあの化け物達が跋扈する世界じゃなくなればいいよ」

「そうか、それはどれだけ長い闘争の果てでもゴールがあるのなら希望になるのない?」

「…」


少年の返事がないそれもそうか、私としてもそれが最善とは思えないからね。


だから私は…


「んなもん分かるかよ」

「へ?」


想定外の答えに私は固まる。

一体彼はなんと言った?


わからない?


そんなわけが…


「俺はあんたみたいに頭良くないからさ小難しいことなんてよくわかんねぇよ」

「…あっ」


忘れてた。

いや、違う。


私は彼を見ていなかった。

ただ必然的に理解できていると考えていた。


ただ


「でも、戦わなきゃ終わらないんだろ?ならやることは変わんないじゃないか」


彼はこの普通と思ってる世界でただ生きてるだけ…それだけにしか過ぎないのだ。


「はははは!素晴らしい回答だよ!君は面白いね!」


私は笑う。

馬鹿みたいに腹を抱えて。


こんなに笑ったなんて久しぶりな気がする。


「戦争が終わることを祈ってるよ」


私は歩き出す。

そうして、リーダーの男の執務室に着き中に入る。


「お世話になったね、私はそろそろ発とうと思うよ」

「随分と早いな、まだ二日程度しかいないだろう」

「まぁ、君たちの食い扶持を減らしてまでここにはいたくないからね」

「なるほど、助かる」


リーダーが素直にそんなことを言ってしまう。

要するに誤魔化すことができないほどにもうこの都市はギリギリで、いつ崩れてしまってもおかしくないわけだ。


私としても少し思うところはあるが、私にはどうにかする力も何もない。

だからただ一言。


「一年、最大でもそれまでには希望を作ってみせるよ」

「…そうか、君は我々を救う気なのだな?ー

「はぁ?何言ってるの?私は私の好きなようにしてるだけだしぃ、ただ私のすべきことをしたいだけさ」

「…そうか」

「あー、そんな暗い表情しないでよ、ほら食い扶持が一人減ってまた一人1日くらい延命できると笑いなよ」

「そんなこと…」

「私は気にしなくていいさ、部外者なのに首を突っ込んだんだから」


私の言葉にリーダーは泣きそうな顔で私をみる。


本当に彼はきっと、責任感が強すぎるのだろう。

だから誰かに心配されることなんてなくただひたすら前を向いて誰かを心配していた。

強いその眼光を消さないように必死だったのかもしれないね。


「んじゃ私はもう行くよ」

「また会えると願おう」

「それは、自分が死んでないと願うということかな?」

「そうだな」


彼は笑う。


きっとずっと、不安だったんだろう。


だから…


「また会えるさきっとね」


私はそう言ってこの街を出るのだった。



***



のんびりと砂漠を歩く。

オアシスなんてない、ただ草木がない世界で私は星を眺めている。


最初見た分厚い雲が嘘のように晴れ渡っている。


「やはり動くなら夜がいいね、方角を見失いそうだ」


朝の方が確かに安全だが、太陽しか目印はない、熱でやられた頭で正確に歩けるかと言われたら…少し前の私が証明していた。


「あ、ここで一周してたんだね、これは私が置いていったものだ」


溜め息を吐く。

砂漠で迷う理由として少しずつ曲がっていって一周してしまうというのがあったけど、まさかそれを経験することになるとは思わなかったよ。


星の位置関係、時間を処理することで方位、場所時間が認識できるのはとてもいいことだが…


「知らない星しかないなぁ本当に、別の世界なのか」


私はポツリと呟く。

夜風が寒く、外套の隙間がないように整える。


「さてと、もう少し進むかなここがどこかも知らないし」


私は歩き出す。

きっとあるはずだ…奴らは多分…


「あの砂丘は…最初に見たものだね」


それに向かって歩き始める。


「私の子供達、少し頑張って」


私はポツリと漏らした声に反応するものはない。

だが、私の足取りは軽くなりグングンと前に進んでいく。


「はぁはぁ、とは言っても…キッツイ!私は研究者だからね、体力は無いんだよ…くっそあの、自称魔王のおバカみたいに体力お化けだったら良かったのだけどね」


かつての仲間を思い出しながら私は砂丘を登り切る。


そして、そこにあったのは…


「そうか、ここは砂丘じゃ無いのか…」


墓場だった。


いや、正確にはゴッドレプリカの残骸の山がこの砂丘の正体だった。


「いいのが何一つないね…どれも腐り切ってて…」


デウスコアは抜き取られている…。


装甲としてはもう使えないハリボテしかない。

しかし、使えそうなものを必死こいて私は抜き取り集めていく。


「デウスコアは私には使えないからね!」


バギィっと、砕ける音。


「あー肉体労働は本当に無理なんだよねー…でも、入る素材の量がわからないから、私の手でやらないと」


軽い道具を作って、砕く、取り出す、そして、集めていく。


気がつけば朝になっていた…。


「流石に20メートル急の巨大な機械兵の分解は半日じゃ終わらないかぁ〜」


まだ一機目であり、私は機体の影に隠れて眠る。


夕日差し掛かり、私は眩しくて目を覚ます。


「あれは…見てしまう」


使徒がいたのだ。

私は息を潜めて使徒を観察する。


使徒は何か巨大なものを持ってこちらに向かってきている。

私は崩れないだろう場所に移動して観察する。


そして、使徒は巨大なものを落とす。


それを私は見たことある。


コア部分に穴が空いているが…あれは


「昨日の都市にあったゴッドレプリカ!?」


私は驚きながらも使徒を観察する。

即座に使徒は都市の方に飛び去ってしまう。


私は立ち上がり、落とされたゴッドレプリカを確認する。



そして、その操縦席には…


「少年」


私は声をかけるが返事はない。

血だらけで目を閉じている金髪の少年…。


死んでいるのだ。


「そうか、そうだよね。この世界はそういう世界だ」


私は受け入れようとする。


だが


「そんなお利口な人間なら私は今ここにいない!」


走り出す。

それは都市に向けて。


足がもつれそうになるが子供達が助けてくれる。


「急げ…急げ!」


知ってしまったなら見逃すことができない。


私ながら、とても嫌になる部分だ。


勝つのなら今は目を伏せるべきだ!


勝ちたいのなら今は体勢を整えるべきだ。


「そんな、お利口に私ができていたらこんなマッドサイエンティストになってないさ!」


私は走る。

ひたすらに、息が苦しくなっても…足が動かなくなっても。



そして、私の目に映ったのは無数の死体と、争い戦う機械兵達だった。



****



その光景に私は息を呑む。


使徒達がゴッドレプリカを殲滅していっている。



私は探すために、少し遠くから眺める。


そして、見つける。


少し離れたところで倒れている機械兵を。


それを守るように他のゴッドレプリカも使徒に立ち向かっている。


私は走り出す。

必死にそれに駆け寄る。


そして、


「やぁ、随分とボロボロだね」


私は声をかける。


「あぁ、君は…グラムだったかな」


血だらけでもう今にも死にそうな顔で操縦席に座るリーダーの男がいた。


私はそれを見て…


「また会えたね」


私の言葉にリーダーの男は目を見開く。


「そう…だな、こんなに早く会うとは思わなかったさ」

「私もだよ」

「なぁ、君に頼みたいことがある…」

「ダメだよ」


私は拒否する。

私にはその資格がない。


「まだ何も聞いてないだろう?」

「まだ生きているこの機体を使って戦うなり逃げて欲しい…だろ?」

「…その通りだ」


私は首を振る。


「それはできない、なぜならそのデウスコアは私たちの祖先が殺した神々の死体なのだから」




静寂が流れる。


戦争の音はまるで隔離されたように私の耳には届いてない。

息が苦しくなる。


私は神の死体、聖遺物を見るのは初めてだった。


しかし、一目見て気付いてしまった。


故に私はこの技術を使わないことを決意していた。


「…そうか、神に授かったこのコアは…神の成れの果てだったのか」

「そう、人々を救いたいとあるいは世界に平穏をと願った神々が自分の死体を使って欲しいとこの世界の神にお願いしたんだと思う」


私の言葉にリーダーの男は涙を流す。


「ならば我々人類は君の祖先に、そして、様々な神達によって守られていたのだな」

「…」

「そうやって気に病む必要はない…君なら動かせるのだろう?このデウスコア無しで」

「…多分できるよ」


私の言葉にリーダーの男は満足したように笑うと。


デウスコアを破壊する。

リーダーが私の服を掴む。


「これで君を縛るものは何もない!」

「っっ!」

「お願いだ!我儘なのは分かっている、虫がいいのは分かっている!それでも、この世界にもう一度、平穏な日々を…」


私を掴む手が離れる。


目の前で息を引き取ったのだ。


それを見て悲しいと感じない。

私はきっとどこか壊れている。

でも、何も感じないわけではない。


悲しみよりも寂しさと尊敬が勝っていた。


「誇り高き男よ、屈すれば君の望む平穏はあっただろう…でも、君は屈しなかった。支配による平穏を望まなかった。その君に敬意を」


私は彼を操縦席から出して、土の中に埋める。


戦争はまだ続いている。


だが、また一つ、また一つと使徒によって破壊されていく。


「人の作品を使うのは気が引けるけど、今だけは力を貸して欲しい」


ゴッドレプリカに語りかける。


「さぁ、始めようか…君を子供にはしない。だから私の命を担保に今だけ動き出せ!」


機体名が目に映る。


私はふふっと笑う。


「『デイン』!!!」


操縦席が閉まり、デインが動き出す。


ギィィィン!


そんな音と共に立ち上がる。

そして、


私は血を吐く。


「流石に私を擬似的なコアにして動かしているから負担は大きいか…」


決着を付けるなら早めにだ。


「えっと操縦方法は…単純でいいね」


意識を同期する。


そして、いくつかのパネルを操作していく。


デインが動き出す。

それは速く、そして、力強い。


持ってる武装は剣と盾。


比較的にオーソドックスな兵装と言えるだろう。


味方のゴッドレプリカの前に立つ。


使徒の攻撃を盾で防いで前進する。


奴らら飛行できるけど、こっちは…私のエネルギーが足りていない…。


子供達ならその問題を解決できるのに…。


今はたらればを考えても仕方ない。


足を曲げてためを作る。


そして、思いっきり跳び上がる。


ガゴッン!!!


「今、すごい鳴っちゃいけない音しなかった!?したよね!?」


私は不安になりつつも使徒を切り裂く。

私の操作とエネルギー制御技術なら一応、想定より高い出力で動かせている証拠だ。


しかし、やはり他の人が作ったものは限界値がわからないから怖いな…。


残りの使徒は3体。


たった4体で…


総勢百は超えるピリオド騎士団をたった3人にしてしまったということだ。

おまけにあの砂丘に運ぶ余裕があったほどだ。


『団長!?』

「残念ながら君たち団長ではないよね

『…』

「話は後でしよう、今は目の前の使徒を倒すことだけを考えるんだ!」

『了解!』


彼らと協力して動き出す。

使徒は私たちを殺そうと降下してくる。


それを私は盾で防ぐ。


重い…出力不足なら防ぎようがない。


剣を振るうけど、使徒はひらりと避けようとする。


「その翼だけはもらっていくよ!」


使徒が地面に落ちる。


それをみた他の2機の使徒が同時に私を狙う。

だけど、忘れてないかな?


ピリオド騎士団の3人が一機の使徒を止める。


ギィィィン!


『ーーー!!』


使徒から音が聞こえてくる。

だが私は逃さない、二機とも機動力を奪い、ここで、ようやく地上での戦いになる。


こっちは残り四。


相手は残り三。


でも、相手の翼は奪ってある。

もう飛ぶことはできない。


私はデインを動かす。


ヴィン!!!!


デインが走り出す。

盾で突き抜けていきながら、私は考える。


機体性能は明らかに使徒側有利。


今まで人類が戦えていたのは何故か不思議だったけど、根本的な出力が違う。


おそらく、デウスコアを取り込んで使徒側は強くなっている。


仮にも神の聖遺物だ。


たったそれだけで出力が上がるのは当然の話…だけどね。


私にそんな常識は通用しないよ。


デインの動きが速くなる。


ギイィィィィン!!!!!


駆動音がうるさい。


デインの拳が使徒にめり込む。

それに即座に反応した他の使徒相手に剣を振るう。

盾は捨てており、私の防御手段はない。


でも、後ろからの奇襲ならたとえ出力が足りなくても…。


他の3人が使徒の一体を倒す。


残ったのは一体。


拳がめり込んで動きが緩慢な機体。

だが、明らかに動きが他とは違う。


ヴィンっ!!!


デインの懐に入り込んでくる。


凄まじい速度だけど…私も負けてない。


足を振る。


ガインっ!!!


蹴り上げられた使徒は体制を立て直すことはできない。



「これでお終いだ!!!!」


私の剣は使徒を切り裂く。


そして…



デインは自壊した。


当然の話だろう。


私が無理矢理、動かしたのだ。


操縦席から脱出した私は跡地を見る。


もう死体以外は存在せずに、都市は壊滅していた。


「立派だよ君たちは最後まで屈しなかったのだから」


私はそう言って空を見る。


あぁ、雨なんてこんな世界でも降るんだねー。


よかったよ。


これで私の顔も隠せる。


「さぁ、生き残った君たちはどうするのかな?」


そして、3人にそうやって問うのだった。



****



私こと、グラム クスカバーは例の砂丘でのんびりとガラクタ集めをしていた。


「ふんふんふーんふーんーー♪これは良くないぞ〜腐ってしまって脆いんだ♪これは良いぞ最高だ〜基盤もわかって作れるよー♪ルルルル!ルルルル!ルールッルル〜ル♪」


楽しげに歌いながら私はガラクタ整理をしていると。


「えっとグラム殿」


一人の少年が私に声をかける。


「おや、どうしたんだい?」

「いえ、あなたの目的を聞きたく…」

「他の少女ちゃん達は?」

「あの二人はまだ、傷が癒えておらず」

「そっかぁ、…あ、私の目的だっけ?そんなの簡単!たった一つの神を殺すこと!」

「は?」


私はそう言い終えると再び歌い始めて作業をしていく。

お!まだ生きてる基盤発見!これは良いぞぉ!


「なぁあんた!」

「ん?てか急にあんた呼び?」

「あ、すいません。ただ神を殺すって…我々にデウスコアを授けてくれた神を殺すと言うことですか!」

「へ?」

「ん?」


何を言ってるの?

いやいや、そんなの殺す理由ないじゃん。


ん?


「あーもしかして君たちの中では神が一つだからか違うよ今この世界にした神を殺すと言うことだよ」

「あ、えっと?」

「まぁ、ゆっくり考えて」


私はそう言って今度こそ作業に戻る。

にしてもここはお宝の山だなぁ、ちょくちょく骨があるけどちゃんと供養しとかないとね。


気がつけばもう夜であり…生き残った3人は火をつけていた。


「あの、グラムさんも一緒に食べませんか?」


一人の少女がそう聞いてくれる。

私は首を振る。


「君たちが食べなよ、食料は少ないんだろ?私は食べなくても生きられるからね」

「そ、そうなんですか?」

「んーまぁ、色々と自分の体で実験してたからねぇ、空腹とかないんだよね」

「…えっと、」

「あーごめんねドン引きだよね」


私はそんなことのんびりと言いながら設計図を軽く描き始める。

そうして、一人で作業をしてると…


「全くせめて布くらい被ったほうがいいのでは?」


私はそのまま震えて眠ってる3人に見つけた布を被せる。


「お父さん…お母さん…」

「俺が…俺がしっかりしなきゃ」

「みんなぁ…どこぉ?」


…。


全く、こんな世界だからこんなまだ13歳ほどの少年少女も戦っている。

そして、不安なんて心の奥底にたくさんあるはずだ。

私は3人の頭を撫でる。


「全く性分じゃないのだけどね…仲間がいなくて寂しい私だからするんだぞ」


そう言って私は3人の頭を順番に撫でて悪夢を少しだけ和らげてあげる。


「夢の中くらいは悪夢を見ませんように」


私はそう言うと立ち上がる。


「さてと、後は作るだけだぁ、一月で作りたいけど…設備が欲しいなぁ」


そう言って私も、眠りにつくのだった。


パチパチ


と、やけに焚き火の音が聞こえてる気がする。

きっと動物も植物もないこんな世界だからだろう。



***



「ほぉ、ここがラボなのかい?」


私は今、3人に案内されて広い施設にいた。


どうやら、技術者達はいない。


いや、全滅してるのは確認した後だろうに。


工具とかはそのまま残っている。


「ふむ、にしても全滅するなんて思わなかったね、技術者とかは一部は逃したのかい?」

「いえ、全員で抵抗しました」

「…」


いや、常識なんて考えるな。

今この世界はそうしないと生き残れない世界なんだ。


「あと、乗る人が自分で機体を調整するんですよ」

「ほぉ、ならば君たちも知識があるんだね?」

「…ん、貧民区出身の私でも知ってる常識」


生き残るために教育をひたすらしている世界なのだろう。

だから兵士一人一人が頭がいい。

だから各々の判断が許されている。


リーダーが死んでも戦えるわけだ。


だから…


ピリオド。


終わりの騎士団ということか…。


「そういえば君らの名前を聞いてなかったね」

「グライドだ!」

「ティルです!」

「…フィシン」


赤髪で少し活発な印象ながらも真面目少年がグライド、金髪で、痩せこけてるが、丁寧な少女がティル、銀髪で、小柄で無口な少女がフィシンと。


「うん覚えた。よろしくね」

「お、おう」

「私たちのこと覚えるんですね」

「意外…興味ないと思ってた」

「失礼だね君たちは、ここまで来たらしっかりと面倒見るよ」


そう言って私はラボの工具や道具を確認していく。


「何するんだ?」

「んー新しい機械兵の開発だよ」

「でも、余ってるデウスコアはありませんよ?」

「あーそれはいらないから平気だよ」

「でも、どうやって動かすの?」


あーまぁ、デウスコアがないと燃料がないから疑問だよね。

私も最初悩んだけど結局一つの結論しかない。


「私の能力でどうにかするかな」

「あんたの能力?あんた超能力者なのかよ」

「え?あーまぁ似たようなものさ」

「どんな能力なんですか?」

「そんなすごいものでもないさ、無機物に命を与える… 万物に命を宿す力だよ」

「何それ?」

「フィシン頭柔らかくするんだよ」


あれ、フィシンが青筋立ててない。

あ、痛い痛いから蹴らないで。


「ちょっごめんって。えっとね例えば私の両腕両足にはもう一つ命があってね、その命がエネルギーを生成して私の体を動かす手伝いをしてくれてるんだ」


3人とも首傾げてる。

んー説明って苦手なんだよなぁ。


「要するに私は命を作れるんだよ…なんか意味が変わっちゃうけどまぁ、そんな感じ。私はそれで作った命を子供と呼んでるんだ」


やはり3人ともすごい険しい顔をしてるよ。


正確に言うなら、私の魂のカケラを成長させて全く別の存在として作り替えてる力なのだけど…まぁ、難しい話はいいよね。


私は機体の素体を作るために部品を作っていく。


「すごいな、本当に作れるんだな」


グライドがそんなこと言ってる。

まぁ、普通とは言わないけど…


「設備と基本設計図は見つけたからね。それなら大体の技術者なら作れるよ」

「なぁ、あんたってこんなふうに子供を作ってたのか?」

「そうだねー昔は100超えたかなぁ…最初のうちは兵器として動くけど独り立ちしたり、私の元から離れなかったりとたくさんいたよね」

「…命の冒涜じゃないのか?」

「かもね」


私の言葉にグライドは息を呑む。

命の冒涜?


そんなのは知っている。

でも、私は一度も自分で作った命に対して不誠実にした覚えはない。


やり方は間違えたこともあるかもしれない。


でも、私と子供は同じであって違う。


あの子達が離れれば私は対等に接するし、責任は子供達にあり、教育した私にもあるとして、壊したこともある。


それが間違いであっても正解であっても私の選択は変わらなかったと思う。


「グライドは私が嫌い?」

「いや、今のを聞いて怒りよりも尊敬が出てきたよ。本気で何も考えてない奴や、悪いことを自覚あっても良い奴でありたい奴はこの質問で多分怒るんじゃねぇかな」

「どう言うこと?」

「あんたは自分の罪を認めて、その上でその罪を受け入れる覚悟があるんだと思う」

「…どうだろね?そんなこと考える暇もないだけな気もするけど」


そうやってグライズと話しながら部品を作っていく。


そうして3人と交流しながら…


一月という時が過ぎた。


「ふぅ、ようやく完成した。私の新しい子供が」

「すげぇな」

「綺麗ですね!」

「…神秘的」


私は子供に触れる。


まずは名前をつけてあげないと。


ごめんね君は私のエゴで名前をつけるよ。


「かつての仲間の名前…『ユージス』」


細くも、芯がしっかりとしていて、力強く、剣も魔法も素晴らしい存在。

象徴的な一本の剣には弾丸を放つ機能など様々な機能を盛り付けている。


それでも似ても似つかない。


でもその名前を言うだけで私は懐かしくして涙を流していた。


「グラム…」

「大丈夫ですか?」

「…どうしたの?」

「ううん大丈夫だよ。ただ昔のこと思い出してね」


私は戦うんだ。

かつての仲間とは離れ離れになってもかつての仲間も私と同じ思いであること信じて。


「さぁ、開戦だ」


私は決意を込めてそう言うのだった。




***



あれから時が過ぎた。


ギィンッ!


ガンっ!


と、音が鳴る。


私はユージスに乗り込み、使徒軍団と戦闘していた。


ユージスには翼があり、飛行の有利はもう使徒には与えていない。


私は笑って使徒を切り裂く。


海の上の攻防、約三百は超える使徒相手に私は怯まずに動き出す。


そうして


「今日の勝利を祝して!」


『乾杯!!』



戦いに勝利して私たちは祝杯を挙げていた。

私は興味ないので隅っこで見てるだけである。


グライド達3人は楽しそうにしてる。


まぁ、この半年で私たちレジスタンスは人数を増やし、現在10名の人間で使徒と戦っている。


「にしても相変わらずあんたはすごいなグラム!」

「誰だっけ?」

「俺の名前忘れたのかよ!?」

「うん」

「まぁ、いい俺たちの大将なんだから」


期待が重くて押しつぶされそうだからやめて欲しいのだけどね。

私はそんなすごいものではないわけだし。


「300も使徒を落とした大将はやっぱりすげぇぜ」


私は居心地が悪くなって部屋を出る。


そしてため息を吐く。


「使徒がここまで交戦的というのは予想外だった。これはなんか嫌な予感がする。昔と方針を変えた?それの原因は…」


確実な支配。


だが一つ違和感がある。


もしも…もしもだ、奴が本気でやるなら…


ガッシャン!!!


下からだ。

なんの音だ、さっきまで打ち上げしてたはず…。


「来ちゃダメだ!狙いはあんただグラム」


グライドの声に私は急いで向かう。


そして、私が見たのは…



グライドの死体だった。


そして、それを行なったのは…


「どうして…どうしてこんなことをした!」


私は目の前にいる少女に話しかける。


「だってダメでしょ?神様に逆らっちゃ」

「ティル!お前だって神によって奪われたはずだ!」

「奪われた?何を言ってるのですか?私たちを救ってくれたんです」


私は見た…首輪が彼女の首にある。


あれは…


「君は支配者になったのか!」

「知ってるんでなぁ、そうですよ我が神の眷属、支配者になったんです!」

「そう…なら私はあなたを殺します」


ナイフを持つ。


「嫌ですね、生身であなたに勝てるとは思ってないです。ですので…来て『イラ』」


巨大な機械兵を呼び出して彼女は乗り込む。

私も即座にユージスを起動しに走り出す。


『逃しませんよ!』

「言ったはずだよ、あれは私の子供だって」


ユージスが勝手に動き出しており、イラを殴る。


『くっ、自立して動くなんて知りませんでしたね』


私は苦戦してる間にユージスに登っていき乗り込む。


「いくよ、あの子を…」


どうしたいのだろうか…。


救う?

解放する?


結果は同じだ…だから。


「殺すよ」


私は決意する。


ユージスが動き出す。


剣が合わさる。


戦力としては同じ。


撃ち合い興じるわけだが…


「くっ」

『疲労がすごそうですね、使徒を300も蹴散らしたのですからまだ、万全では無さそうですね!』


一太刀浴びるが、なんとか機体を逸らしてダメージを軽減する。


『やはり近接は部が悪いですね、でも近づく必要なんてないですよね!』


イラが引いて、銃を引き撃ちする。


「くっ、火力が高い」

『あなたのために神様が用意してくれた使徒兵器なのよ!』

「私こそ舐められたものだね。たったそれだけがユージスの機能だと思われるのがね!」


私はユージスを走らせる。


『特攻しかできないけど残念!あなたの機体の最高速度なんて余裕で超えてます』

「本当にそうかな?」


私は目を見開く。


「優王発動」

『へ?』


あまりの速さにティルの息を呑む声が聞こえてくる。

イラを殴る。

そのまま剣を振るってその腕を切り落とす。


『なっ!バカな!あなたのユージスはそんな出力は出せないはず!』


銃を落としたイラは近接戦闘をしようとするが私のユージスの前には無力。


『はぁ…はぁ、くそっ、どうしてどうしてこうなるのよ!あんたがいなければあの日、私たちは死ねたのよ!』

「それが裏切った理由か?」

『えぇ!そうよ!こんな世界生きてる方が苦しいだけよ!』

「っっ!」


その言葉を私は知っている。


何人もそんな言葉言う人間はこの世界でも前の世界でも見てきた。


「わがままなのかもしれない!都合のいい言葉なのかもしれない…でも…そんなこと言うな!」


私は叫ぶ。


「みんな必死なんだよ!生きようと足掻こうと必死なんだよ!だからそんな言葉で逃げるな卑怯者!」


イラを貫く。


『かはっ…はぁ…痛いわね…苦しいわね…あぁ、これが死ぬってことなのね…いい…ものじゃないわね』

「ティル、私はあなたを殺したくなかった」

『はっ、今機体ごと私を刺してよく言えるわねそんな寝ぼけたこと』


剣を引き抜く。


「さようなら」


私はこの日、一人の友を殺した。


それは強い苦しみと後悔を与えた。


それでも私は止まることを止めるわけには行かなかった。



***



本当は記憶している。


本当は覚えている。


このレジスタンスにいた10名全員の名前を…。


でも、私は忘れたふりをする。


悲しまないために。


苦しまないために。


それ逃げだと知っていても私はそれを選択する。


「行こうかユージス」


私はユージスに乗り飛び立つ。

操縦席で私はぼーっとしながら外を見続ける。


どこまで行っても荒廃した世界。


救いなんてない。


それは確かに…彼女も絶望してきたのは分かる。


でも、私は絶望したくない。


「何を間違えたんだろ?」


頬を伝う何かに気づきながら知らないふりをする。

空を飛べるユージスは世界をたくさん見せてくれる。


使徒によって統治された都市。


人間に自由はなく、自由に見える支配が根付いている。


あれも一つの正解だったのかもしれない。


使徒に抵抗して地下に引き篭もる人々の都市が少し見ただけでいくつもある。


皆、苦しみ食糧も足らずにゴッドレプリカという兵器に縋って生きている。


何が一体違うのだろうか。


きっと本質は変わらない。


変わるのは未来であり、行われてることに大きな差はない。


「ねぇ、私のしてることは正解なのかな?」


答えるものはいない。


きっとかつての仲間達は


どうでもいい。人が幸せである未来がある、秩序が壊れない世界があるのならと言うだろう。


私も同じだ。


ダメなんだ、あいつがあの神が成功しては…。


だから…


私は降り立つ。


使徒が生まれる都市。



中央都市『ドミート』を見据える。


「恨ませるかもね、理解されないかもね。でも、あの子のことわかった気がする」


息を吐く。


そして、ゆっくりと涙を拭う。


決意をする。


「私はこの世界で魔王になる」


きっと遥か遠い未来でそう呼ばれると思い私は言う。

さぁ、最後の戦争を始めよう。



***



戦火が広がる。


無数の使徒と私は戦う。


「どこだ!どこにある!」


あるはずだ。


私の求めるものがここに…


中央都市『ドミート』


で、私は犠牲を考えずに戦う。


ギィンッ!


使徒をまた一つ破壊する。


あくまでも使徒は兵器化した、機械兵にしか過ぎない。

でも、それならいるはずだ。


使徒を作ってる支配者がいる!


そして、奴を殺せばこの世界であの神の干渉ができなくなるはずなんだ!


『ふん、イラを倒したくらいで調子に乗るなよ!』


六機の使徒兵器が現れる。

見た感じ、7大罪をモチーフとした兵器だろう。


「邪魔だ!優王発動!」


一機落とす。

しかし、それを見て、他の機体の動きが変わる。


「厄介な!私の邪魔をするなぁ!!」


加速する。

剣を交われば他の四機が私を囲う。


「洒落臭い!」


蹴り上げて他四機にも対応する。


だが、対応しきれない。


ブースターを使って加速して高速戦闘を行なっていく。


ギィィィィ


嫌な音がする。


「くそっ、限界が近づいてきてる…撤退を…」

ヴィィィィィン!!


「は?でもそんなことしたら君が死んじゃう!」


ヴォーン


「そうか…そうなのか…子供を犠牲に…そんな選択をしろと言うのかユージス!」


私の頬に止めどない涙が溢れる。

くそっ、こんな選択しかないのか!


私一人じゃ…犠牲なしなんて何もできない…。



私は無力だ。


「ごめんね…ごめんね…私が弱いから無力な私を許して、ユージス」

ヴォーン

「マナ解放…オーバーリミットフロー」


その瞬間、私はユージスの意思によって機体から降ろされる。


あぁ、がんばれ。


勝って…


私の大事な子供。


ガァァォォッン!!!!!!


ユージスが五機の機械兵を蹴散らしていく。


私はそれから目を逸らす。


多分勝てる。


でも、終わった後は…ユージスは自壊する。


「行かないと…終わらせるんだ!この戦争を」


私は走る。

必死に…ただ必死に…



そして、


「ようやく辿り着いた。あなたを殺します支配者」

「おや、まさかこの世界で支配者という言葉を使う人がいるとはね。ティルが漏らしたのかな?それとも君が特別なのかな?」


私は優男にも見える神官に銃を向けるのだった。




***



「かはっ!」


私は壁に叩きつけられる。

やっぱり私一人は弱い人間だと知る。


「世界の真実を知り、立ち向かうその勇気は認めよう。しかし、君じゃ役不足だよ」

「はぁ…はぁ…そんなのに知ってるさ。私はどこまで行っても研究者でしかない!」

「ほお、それを知ってなお抗うと?」


知ってるさ。


私は弱い。


知ってるさ。


私は無力だ。



「でも、だからと言って私が諦める理由にはならない!」

「残念だ、君は頭がいいと思ったのだがね」

「頭が良かったらマッドサイエンティストなんかになってないって」


私は笑う。

そして、私の体から剣が顕現される。


「それは一体」

「私が純粋な人だといつ言った!私の原点はこの二つの剣!魔剣グラムと聖剣エクスカリバー!人が産んだ幻想の剣だ!」


私は走り出す。


「くっ、凄まじい力ですね。ですが…」


何か大きな力に私は拘束される。


「っっがぁぁ!いっっっ!!!」


苦痛で私は喘ぐ。

まだ終わりじゃない。


「っっっったいな!!!」


剣を振るい、拘束から解き放たれる。


「まさか、支配者である私と同格とは…」

「その驕りがあんた敗北だ!」


私は剣を振るう瞬間だった。

巨大な何かの腕が私と支配者を遮る。


「嘘…まだ残ってたの…使徒兵器が」


今の私じゃ生身で使徒兵器とは戦えない。

だからと言って、ユージスはもういない。


『終わりだよ、この余興も』


エネルギーの光線によって私は吹き飛ばされる。

瓦礫だらけの中で私は倒れている。

ボロボロでもう、立てそうにない。


「くそ…くそっ!こんなところで…終わるなんて…嫌だ…嫌だよぉ〜」


涙が溢れる。

なんで誰もいないの。


なんで私一人なの?


なんで?


私はこんなに弱いの?



体が動かない。


あぁ、死ぬのか。

今度こそ本当に…


ヴィィン!


使徒兵器を殴り飛ばす機械兵がいた。

もうボロボロで動くかも怪しいような兵器。


「ユージス!」


使徒兵器の反撃に耐えきれずにユージスは倒れる。

倒れた際の衝撃が…私に伝わってくる。


私は這いずる。


最後の希望に賭けるために。


必死に体を引きずる。


「まだ、終わりじゃない、まだ終わっていない。お願い、ダメな親でごめんね。でも、お願いだからまた立って…また戦って…私を使ってユージス」


ユージスの手のひらの上で私は寝転がる。


「あはは、動かない…か。そうだよね…そんな都合のいいことなんて」


ヴィィン!


え?

ユージス?


そっか、最後まで壊れるまで戦うんだね。

んじゃ私も一緒に私を使って…


人の願いによって作られた私…最高の剣を…


あぁ懐かしいな…


友人達に付けてもらった私の本当の名前。


「狂気的だけどその優しさもあるし、光を届けるものとしてーーーとかどう?」


うん、とってもいいよ。


だから私の名前は…


『覇剣ルミナス』


光が世界を照らす。

私の光が世界に轟く。


ユージスは私を持って使徒兵器の前に立つ。


『さぁ終わりにしよう』


私の一言に呼応するようにユージスの想いが伝わる。


『それは…その剣は…まさか神の反逆者の一人!ルミナスだというのか!』


あぁ知ってるんだ。

私のこと、よほど私たちの抵抗が腹に立ったんだね。

あの神様は…


なら伝えるといいさもし生き残れたなら。


いずれまた、仲間と共にお前を倒すと…。


光が世界を支配する。


それは使徒兵器を消し飛ばし



そして、終わった頃には私だけが瓦礫の中で泣いていた。


何も残らずに…

ふぅ、初めて短編を描かせていただきました!


ただこの作品作る際に色々と思考してた中で主人公にぴったりなキャラが一人いたんですよね。


それがグラム、いや、ルミナスです。


ただ、このキャラを出すのに必死に時系列整理をするか悩んだのですが、まあそこら辺の細かい話は後にしようとなりました。


ちなみにXにてとあるお方と話してる時にロボット系を作ってみたくなった結果作らせて頂きました。

ロボットものとは少し違う可能性もありますが面白いと思って頂けたなら幸いです。


一応作者のXプロフィールリンク貼っておきます。

https://x.com/ars_felm?s=21


リンク貼り忘れてました!更新同日22:30に修正致しました!

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