魔法使いなのに魔法が使えないから、杖で物理攻撃をする事にしました
[適性能力]と呼ばれる、人には何かしらの能力がある世界。
………それなのに、一人だけその能力に悩まされた人が居ました。
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俺の名前は、シェッドー。
[適性能力]は、魔法が使える事となっている。
先祖の代から、魔法が使えるらしいのだが……
俺は一向に使えないのだ。
で、なぜそれが分かったのか。
さっき、「先祖の代から」って話だったろ。
俺の一族が、代々受け継いできた『魔法の書』ってのがあってな。
それを幼少の頃から唱えているのだが、唱えても使えないのだ。
………で、今。
魔法が使えず、成年になった。
両親から、勘当された。
「幼少の時はまだ良いが、もう面倒を見きれん」と。
家を追い出された俺は、ふと街の広告を見かけた。
『[適性能力]には、特殊異変する事があります。無料の適性検査をいたします。』
特殊異変?
広告の下には、その言葉について少し触れていた。
『特殊異変:何かしらのDNA変異で先祖と違う能力を持つ事を言います。』
………もしかしたら、これかもしれない。
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俺は、その足で検査機関である「能力検査機関」に向かった。
建物に着いた。意外と質素な造りなんだな。
もっと立派なところだと思っていたよ。
……まあ、それはさておき。
受付の人に、事情を話した。
「分かりました。少々お待ち下さい。」
そう言うと、何処かに内線電話をした。
「お待たせしました。……担当の方が、すぐ来ますので。」
そのまま、1分ほどで白衣を着た人が建物の奥からやって来た。
「貴方が、シェッドーさんですね?」
そう言われて、俺は頷いた。
「私はここの所長である、ナステラと言います。それでは、早速ですが……能力検査をしましょう。」
案内されるまま、建物の奥に入っていく。
そして「適性検査室」と書かれた札がある、部屋に入った。
部屋の中には、書物や実験道具など……色々物が置かれている。
机に座るように催促され、そのまま座る。
「……それでは、質疑と適性検査を行います。」
質疑は、名前と家系、代々受け継いでいるとされてる能力を伝えた。
それから、ナステラは部屋の片隅から大きな機械を引っ張り出した。
「……これは、脈から能力を探知する機械になる。ものの5分で判別出来る。」
普通にすごいな。
脈から能力を見出だせるのか。
手を出すように言われ、机の上に置いた。
機械からパッチを取り出し、手に付けた。
「それでは、検査を開始する。」
それから5分。
『検査が終了しました』、と機械音声が言った。
機械の画面に、能力名が書かれていたのだが………
そこには、『適性能力は、打撃による物理攻撃』と書かれていた。
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それから、俺ことシェッドーは巷から―――
【杖を振り回して攻撃する強い奴】
と呼ばれる事となった。
読んで頂き、ありがとうございました。