2 私の制服姿を見て、兄と騎士が焦っています
突然の陛下からの言葉に、立ち尽くす私とルイード皇子。
短期学園交流会ってなに!?
留学とかそんな感じ!?
他国の王族や公爵家しか参加できないなんて、そんな恐ろしい交流会行きたくないんですけど……。
……ん? 待って。
私、侯爵令嬢ですけど?
「あ、あの……陛下。
1つ確認したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「どうぞ。リディア嬢」
「先程、交流会に参加できるのは王族と公爵家のご子息ご令嬢のみとおっしゃっておりましたが……私は侯爵家なので、参加資格がないと思うのですが」
そうよ!! 私、参加資格ないじゃん!
陛下ってば、勘違いしちゃったのかしら。
参加しなくてもいいかもしれないという私の期待は、次の陛下の言葉で見事に打ち砕かれた。
「それは問題ない。
君は『巫女』としての参加だからな。
この国の代表として行くには何も問題はない」
えええーーーー!?
そ、そんな……。
その時、ずっと黙っていたルイード皇子が口を開いた。
「寮生活……とおっしゃいましたか?」
「そうだ。毎回行われるこの交流会は我が国で実施されているのだが、他の参加者同様この国の者達もみんな寮で過ごしてもらう」
陛下の返事を聞いた皇子は、何故か隣にいる私をジーーッと見つめてから再び陛下に向き直った。
「わかりました。
国の第2皇子として、リディアと一緒に交流会に参加します」
「えっ……」
ルイード様ああ!?
なに勝手に決めちゃってるんですかああ!?
「そうか。頼んだぞ、2人とも」
「はい」
国王らしく堂々とした態度で皇子に託す陛下と、キリッとした表情で答えている皇子。
わあ〜カッコ良くて素敵なシーン……じゃなくて!!
なんで私も一緒に行くって決まっちゃったの!?
ははは……と爽やかに笑い合っている陛下と皇子。
うん。もう今さら私が反対したところで聞いてくれないわね。
これは腹を括るしかないのか……。
異世界の学校ってだけでも不安なのに、そこにいる生徒が王族か公爵家の人しかいないとか……私、大丈夫かな。
陛下に挨拶を交わし謁見室を出ると、ルイード皇子が申し訳なさそうに謝ってきた。
「勝手に決めてごめんね。
でも、リディアと3ヶ月一緒に学校に通えると思ったら嬉しいよ」
いつもの最強アイドルスマイルで微笑まれたら、もう許すしかない。
本当に嬉しそうなその顔を見ては、私も少し楽しみな気持ちが出てくるのだから不思議だ。
「大丈夫です。ただ、侯爵家の私が参加していいのか気になってしまって」
「それは大丈夫だよ。巫女として堂々としてていいんだ。
それに、何かあっても俺がそばにいるから」
ルイード皇子はぽんと優しく私の頭を撫でてくれる。
気づけば、出会った頃に比べて皇子の背が伸びていることに気づいた。
「ルイード様……背が伸びました?」
「え? ……本当だ。前よりリディアが小さくなってる」
皇子はマジマジと私と自分の身長差を見比べている。
その顔はどこか嬉しそうに見える。
「私が小さくなったのではなくて、ルイード様が大きくなったのですよ?」
「はは。それは嬉しいな」
少し照れたように笑う皇子と一緒に、エリック達の待つ部屋へと向かった。
「短期学園交流会だと?」
私達からの報告を聞いて、エリックの眉がピクリと動いた。
この反応からして、エリックは交流会のことを知っているのだろうか。
カイザは「なんだそれ?」と言っている。
「その交流会は確か、王族と公爵家以外の貴族は参加できないはずでは?」
「そうなのだが、今回リディアは巫女として特別枠での参加となるらしい」
「巫女として……。確かに、同世代の国の重要人と関われるのはいいことだが、危険はないのですか?」
「他国の王族を預かるくらいだからな。
王宮と同じくらい、学園中が厳重警備されているそうだ」
「そうですか……」
エリックとルイード皇子が話している内容を聞いて、カイザもなんとなく流れが理解できたらしい。
「なんだお前、学校に行くのか?
ちゃんと行けるのか?」
「……どういう意味でしょう」
カイザの質問の正確な意図はわからないが、何故かいつもバカにされている気分になる。
リディアが勉強できないことを心配しているの?
それともただそのまま毎日学校に通えるのかって意味で聞いてるの?
どっちにしろ失礼ですけどね!!
「毎朝ちゃんと起きて行けるのか?
お前、いつも起きるの遅いじゃねぇか。
その学校って遠いんだろ?」
……そっちの心配か。
「ご心配なく。
寮生活になるそうですから、問題ないですわ」
「寮生活!?」
カイザとイクスが同時に叫んだ。
エリックは寮であることも知っていたのか、特に驚いている様子はない。
「なんだよ寮生活って!
学校に通ってる間は家に帰ってこないっていうことか!?」
「そうだ。交流会のこと、本当に何も知らないんだなお前は」
「それは危険じゃねぇか!
コイツは巫女として誘拐されたばっかりなんだぞ!」
「だから学園の安全について確認していたんだろうが」
またエリックとカイザの口論が始まってしまった。
ふぅ……とため息をついて横を見ると、こちらはこちらで皇子とイクスがお互い立ち上がった状態でなにやら話している。
「寮生活に何か不満でもあるのかな?
厳重に警護されているし、十分安全だから何も心配はいらないよ」
「……外部の者以外にも危険人物っていますからね」
「それは誰のことを言っているんだ?
護衛騎士として心配するのはわかるが、今回は君は不要みたいだよ」
「……こんな交流会にリディア様を参加させるなんて、ずるいですよ」
「なんのことかな。決めたのは俺ではなく陛下だからね」
2人とも静かに話しているはずなのに、何故かバチバチという音が聞こえてきそうなオーラが漂っている。
この2人も本当に仲が悪いんだから……!
口論している2組に挟まれて、私はただ終わるのを黙って待っていた……。
数日後、屋敷に戻った私宛てに王宮から大きな箱が届いた。
可愛いリボンに飾られたその箱の中を確認してみると、どうやら学園の制服のような物が入っている。
箱を囲んで一緒に中身を確認していたメイド達が、声を高らかにキャアキャア盛り上がり始めた。
「まぁ! なんて可愛らしい制服なのでしょう!
リディア様、サイズ確認のためにも、ぜひ着てみてください!」
目をキラキラさせながら懇願してくるメイやメイド達。
そのグイグイくる姿勢に圧倒されてしまったが、私自身も異世界の制服には興味津々なので、二つ返事で了承した。
まるでカフェラテのような淡いカラーベースの膝丈ワンピースの制服。
近くで見ないとよくわからないほど薄めの白いチェック柄が、可愛さを倍増させている。
セーラー服のようなデザインの襟にショートタイ、ゴールドのデザインボタンまでもが可愛い。
何故か制服のサイズは私にぴったりだった。
アニメやゲームの世界にありそうなオシャレな制服に、私のテンションもかなり上がる。
鏡にうつっているのは、二度見……いや三度見してしまうほどの美少女だ。
かかか……可愛いーーーーーー!!!
リディア、可愛過ぎる!!!
ドレス姿ももちろん可愛いけど、こういう制服とかを着るとさらに美少女度が目立つわ!!
「わぁぁ。リディア様、なんてお美しいのでしょう!」
「可愛すぎますね!!」
メイド達も絶賛してくれている。
その輝いた表情を見れば、お世辞でないことは明白だ。
「ぜひエリック様やカイザ様にもお見せしましょう!」
「え、えぇ……!?」
メイド達に促されるままエリックの執務室に行く。
ノックをして声をかけると、中からイクスが扉を開けてくれた。
どうやらイクスとカイザもちょうど執務室に来ていたらしい。
イクスは制服姿の私を見るなり、身体が硬直したかのように動かなくなってしまった。
「イクス? どうした?」
中からカイザの声がしたので、イクスの横をすり抜けて執務室に入った。
私を見たエリックとカイザも、同じように固まっている。
「お前……その格好……」
「制服が届いたようなので、着てみました。
……どうですか?」
笑顔で褒めてくれると思っていたのに、何故かすごく深刻そうな顔をしている兄達。
カイザはいつになく真剣な表情でエリックに話しかけた。
「これは可愛すぎじゃないか……?
他国の男どもに狙われるぞ!?」
「今から陛下に断りを入れられるか検討してみよう……」
めずらしく口論にならずに話し合っているようだ。
真面目な顔をしてお互いブツブツ言っている。
すると、突然後ろからイクスが肩をガシッと掴んできた。
!?
「リディア様! 交流会、断りましょう!
そのような姿で参加されるのは危険です!」
「ええ……!?」
それから数日間は、私の参加取り消しの為にエリック達が動いていたようだが、結局取り消すことはできなかったらしい。
エリックが「くそ……皇子の妨害さえなければ……」と何度か呟いているのを聞いた気がする。