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KYOMEX -キョウメックス-  作者: 海ひとし
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第9話 クズで変態の男



さて、どうにか近づけた。



今俺がいるのは大部屋の左端にある出入口だ。

丁度水槽の左側面が見える。



隊長ォ、信じてますよ?



俺は何気ない素振りで水槽に近づく。



「どうも~。道案内願えます~?」



いきなり現れた俺に狼狽える異星人達。俺は混乱しながらも臨戦態勢をとる。

そして異星人達の背後から隊長がMP5Kを両手に乱れ撃ちながら突撃してくる。数多のマズルフラッシュと共に次々と異星人が倒れていく。

何体かの異星人が銃らしきものを取り出し、隊長の方へ向ける。その銃が発砲する前に、すかさず俺がSPAS12を向けて撃つ。


俺は生まれて初めて銃を撃った。


しかもショットガン。


反動が思ったより大きく、我慢しながら次の異星人目掛けて発砲する。途中、隊長の横顔が一瞬こちらを向いてニヒルな笑みをしたような気がした。



ご褒美、ありがとうございます!



それから残弾数を考えずに俺は撃ちまくる。時折、撃ち漏らして逃げる異星人を隊長が丁寧に脳天をブチ抜く。

SPAS12の弾が切れた途端、俺はそれを鈍器代わりにして近接戦をしかける。隊長も弾がなくなり、華麗な手さばきでリロードする。

その光景は一種の美しさのようなものを感じ、俺は一瞬見とれる。



「おい、ボスが逃げるぞ!追えッ!!」


隊長が俺に叫ぶ。俺としたことが、目を離したスキにボス異星人が走り出す。

俺は追いかけようとするが、そのボス異星人が何かの端末を操作するのを目にする。次の瞬間水槽のガラスが割れ、破片がボス異星人に直撃する。

ボス異星人はもがき苦しみながら突然宙に浮く。更に周りの異星人の死体や電子機器、水槽内に入っていた水玉などが浮き始める。

異変に気付いた隊長も立ち止まる。



「こ、これは…」



今度は騒音と共に壁が、床が、天井が砕き始める。なんとかバランスをとりながら、俺は水槽に入っていたであろう白雪桜月の方を見る。

彼女の髪はユラユラと逆立ち、眼球が眩しく光っていた。浮かび上がった物体が彼女を中心に回転し始め、砕けた建物の破片が細かく砕かれていく。

咄嗟に隊長が俺の首根っこを引っ張って白雪桜月から距離をとる。



「…青井さん遠隔操作でクリムゾン・デューマーを此方に寄こして。」



どうするつもりなんだ?



「逃げるわよキョウ。」


「ちょッ!」



俺を引っ張りながら隊長は出口の方へ走り出す。途中、俺達の後を追うように建物が崩壊していく。

外へ飛び出した俺達は、こちらへ向かってくるクリムゾン・デューマー目掛けて走る。崩壊した建物の破片が回転を始め、少しずつだが俺達を追ってくる。

クリムゾン・デューマーに合流した後、隊長が収納スペースから以前と同様のアタッシュケースサイズの物体を取り出す。



「SAP-04起動。」



そう隊長が言い、物体がライフルに変形する。



「どうするんだよ?」


「暴走した能力者を止める方法はない。ここで息の根を止める。」



おいおいマジかよ!?



「他に方法は…」


「無理ね。今の彼女は監禁からのストレスとパニックにより正気を失いながらも、潜在的に能力を使役して暴れている状態。アレがこのまま街に向かうと大きな被害になるわ。その前にコイツで狙撃するしかない。」



SAP04を持ち上げながら隊長が冷たく言い放つ。



「残念だけど、彼女は諦めるしかない。」


「…ちょっと待った。」



何言っているんだよ俺は。



「なに?」


「暴れている彼女を正気に戻せばいいんでしょ?だったら考えがあります。」


「どうする気なの?」


「なんとかしますよ。ただ、失敗したときは隊長が狙撃してください。」



正直、考えなんてない。けど白雪桜月のような美人をここで死なすのは勿体ない、と思っているのは口が裂けても言えない。

そんな俺に隊長が眼を鋭くして言う。



「最悪ケガだけじゃすまないわよ?」


「か…覚悟の上デス。」


「いいわ。好きにしなさい。それでもダメだと判断した場合、彼女を殺す。」



そういってクリムゾン・デューマーに跨って移動する。おそらく良い狙撃地点へ移動するのだろう。



さて、どうしてあんなことを言っちゃうのかな俺は。



後悔しても遅いので、とりあえず目の前にある瓦礫の嵐へ向けて駆け出す。そしていざ嵐に突入。

横からボールサイズの瓦礫が飛んできてそれをかわす。今度は反対の方角から飛んでくるのをバックステップを駆使して避ける。

そんな動作を続けながら進んでいくと、人型が飛んできて俺を掴んだ。



この異星人、まだ生きている?



掴まれた俺は異星人共々飛び回り、なんとか手を振りほどく。途端、死角から強い衝撃と痛みを感じた。

俺は回転しながら地面に激突する。痛みに耐えながらも地面を這いずりながら進む。



ヤバい。下手したら俺死んじゃうかも……。



◇ ◇ ◇



狙撃に丁度良い高台を見つけ、私は配置につく。


私はプロとして適切な判断をしたつもりだった。


過去に能力者が暴走して街を半壊にしたケースもあるのだ。


本当なら彼女はすぐに殺すべきだろう。



ならなんで私はキョウの提案に乗ったの?



私にとって白雪桜月はただのクラスメイトだ。


会話も碌にしたこともないし、別に友達でもなんでもない。


自分の日常の中の一つのピースにすぎないのだ。ただそれだけ。それだけなんだ。


ならなぜ殺すのを躊躇う。


平和ボケした日本に長く居すぎたせいなのか?


バカバカしい。


私はプロよ。兵士よ!



感情なんて邪魔なだけ。



SAP-04の発射準備が整った。



あとはアンタ次第よキョウ。



◇ ◇ ◇



中心付近には瓦礫が浮かんでいなかった。体中に血を流しながらも、俺はなんとか嵐の中心地点にたどり着く。

そして目の前に白雪桜月が見える。俺は彼女の正面に立ち、彼女の両肩に手を乗せた。



どうするよこれから!?



正直どう彼女を正気に戻すのか考えていなかった。



ここで映画のようにキスでもするか?


いや、現実的に効果がないような気もする。


恋人同士でもないんだ。愛の力とやらは当てにできん。


頬を引っ叩く?


イヤイヤイヤ!


こんな美人の女の子を引っ叩くなんて、俺にはできないよ!!


でもグズグズしていると隊長が撃ってくる。


どうすりゃいいんだ!?



・・・・・・・・あ。



正直、これでどうにかできるとは思わない。


だがそうせこのまま死んでしまうくらいなら、今のうちにやりたいことやっちゃおっかなぁ?


今も俺の行動を隊長が見ているのだろう。


あとで絶対軽蔑してくるだろう。



やるか。


クズで変態の男にはこの技がある!



とぅりゃぁぁぁーーーーっ!!!!





――むんにゅっ♡



俺は両手で白雪桜月の胸にある双丘(・・)を壮大に揉んだ。



生きててよかった~。



◇ ◇ ◇



「アンのド変態がぁぁぁーーーーッ!!!!」



少し離れた先にある光景を私は見て声を上げる。


ターゲットを白雪桜月からキョウへと変えたい私の気持ちを理解できるだろうか?



◇ ◇ ◇



あぁ、気持ちいい~~。


初めての経験。


初めて揉み心地。



ケド何故かな?白雪桜月に変化がないような気がする。


もっと激しく揉んだ方が良いのだろうか?


なら心置きなく揉んでご覧に入れよう!



――むんにゅむんにゅ、むんにゅもんにゅぅ♡♡♡♡



構わずに揉み続ける。



「フハハハハハッ!どうだ白雪桜月ヨゥ!?揉み心地はどうだい!?!?」



――ピクッ。



ん?


なんか反応したような…気のせいか。


まだまだやっちゃうよぅ!!



――むんむんもにゅもにゅ、むんむんもにゅもにゅぅ♡♡♡♡♡♡



「気持ちいいかァ!?俺の揉み加減は最高だろぅ?心置きなく揉みつくしてやるゥ!!!!」



「い…あッ……う」



お?


反応してきたかな?


俺の愛の揉み加減が効いてきたのかな。



よぅーっし!更に揉んじゃえ!!



――もぉぉぉんにゅぅぅぅ、もぉぉぉんにゅぅぅぅ……



「……いつまで触っているのだ!!この痴漢ーーーーッ!!!!!」



――パパーンッ!!



乾いた音が二回鳴り響いた。俺は勢いよく白雪桜月の両手で引っ叩かれたのだ。

途端、周りを囲むように浮かんでいた物体は音を鳴らして次々落ちていった。



一時はどうなることかと思ったけど、バンバンザイ?



突然、白雪桜月のがキッと俺の方を向いた。何やら目が赤く光って見えるのは俺の気のせいか?



「潔く死ねこの変態ィーーーー!!」



地面に落下していた物体が突然俺の方へと飛んできた。



「あ、あぶなっ!」



なんとか避けるが、勢いが止まらず瓦礫が次々と飛んでくる。仕方がないので俺は逃げ出す。



「ちょ、ちょっとまって!俺は君を助けに…」


「だまれ!あまつさえワタシを誘拐し、ワタシのむっむっむっ……むね…を…。」



なんか赤面しながらぎこちなく会話する桜月ちゃんを可愛く思っちゃう俺。



「言葉などいらぬ!万死に値する!!死ねッ!!!!」



そしてさらに瓦礫が俺を襲ってくる。この子は自分が超能力を使っているのを気付いているのだろうか?

こうして俺は白雪桜月の追撃を受け続けるのだった。



◇ ◇ ◇



どうにかなったわねキョウ。



「任務完了。回収班の手配をお願いします……あ、急がなくてもかまいませんので。」



私は逃げまどうキョウを見ながら通信を終える。



キョウ、少しは反省なさい。



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