第8話 イングラム隊長
おつかれさまです。
今回は視点切り替えがありますので「◇ ◇ ◇」にご注意を。
では、お楽しみください!
俺とキャサリンは、真紅のバイク『クリムゾン・デューマー』に跨がって夜道を突き進んでいた。このバイクは本来一人乗りのため、俺達は互いに体を密着せざるおえない状況になっていた。
そのため現在俺の下半身は絶好調なのである!!
「・・・・へんなこと考えてたらブッ殺すからね。」
「イエス、マム!」
さすがにキャシーが怒り出すため、どうにか下半身を鎮めてみる。ちなみに何故俺達が夜のドライブをしているのかというと、一時間前に遡る。
――一時間前
「報告。」
会議室にマローン司令が入ってくる。今この部屋にいるのは俺、キャシー、宇野さん、マローン司令、そしてオペレーターの青井 樹さんの5名だった。
「本日○○時○○分、東京都西方面にて念動力量の反応を探知しました。」
「またか。めずらしいな。」
宇野さんの報告から始まり、司令が呟く。
「それが・・・・前回探知した数値と全く同じものを探知しました。」
「どういうことだ?」
「おそらく、超能力者は初めから二人にて、偶然同じ場に居合わせたために一人だけだと我々が誤認したと思われます。」
「つまりあの日二人の能力者が誘拐され、我々はハズ・・・おっと失礼、能力が低い方を救出したと。そいうことかな?」
「はい。」
今さっき『ハズレ』って言おうとしたよな?
宇野さんも即答するなよ。
ま、結局そういうことだな。
別に俺は特別じゃなかった。ただそれだけのことだ。
「それで?誘拐された者の身元は判明したのかな?」
「はい。時間を洗い直し、あれから行方不明者が出たかなどの情報を照らし合わせた結果的、一名判明しました。」
「その名は?」
宇野さんは答える前に俺とキャシーを交互に見た。
「私立千零学園一年C組、白雪桜月。」
丘の上でバイクが止まり、俺達は目的地の廃墟を見下ろした。
バイクから降りた後、収納スペースが開きキャシーが二丁のサブマシンガンを取り出し、自分の両肩に掛ける。
さらにショットガンを取り出す。俺を助けたときのと同じタイプだ。
それを俺に渡す。
「オモチャじゃないから気をつけて。」
「まさに大人のオモチャですねぇ。」
「・・・・それ以上ふざけると本気で殺すわよ。」
「わかりましたよ。イングラム隊長。」
さすがの俺も今回は真面目にいこう。俺も今は『ハズレ』とはいえ立派なMEX隊員なのだから。
ちなみに今の俺の装備はクロップではなく、陸上自衛隊員に支給されている装備の黒色バージョンだ。さすがにクロップは使い物にならなかったため、宇野さんが自衛隊に頭を下げ準備してもらったのだ。
そして俺達は闇に紛れて駆け出す。背中をカバーしあい警戒しながら廃墟の中に入っていく。
ふとキャシーが俺にこの身のこなしについて聞いてきたため、俺は『海外のアクション映画を見て覚えた』と言ったら、彼女は『期待して損した』と言う。
当たり前だろ?
俺は別に正規の訓練を受けたソルジャーじゃないんだから。
俺はフツーの高校生ダヨ!
警戒しながら歩いていくと突然吐き気のするような異臭がしてきた。この異臭は目の前部屋からする。
そう思って俺は警戒しながら鼻を摘み、中を覗いてみる。
!!!!!!!!!!!!
思わず叫びそうになり、俺に気付いたキャシーが口を塞ぐ。
「おちつきなさい。」
「だっ、だっ、だっ・・・・あ、アレはっ!?!?」
「よく見ておきなさい。これが私達の敵の所業よ。」
そうキャシーが言って、俺は落ち着いて再び中を覗く。たまらずにその場で吐き出してしまう。
そこのあったのは死体の山だった。しかし全員目から上を横に切り落とされ、脳みそがある箇所はキレイさっぱりに空っぽだった。
皆、脳みそがなくなっていたのだ。
あまりにグロテスクのため俺の息は荒い。
「キョウ、深呼吸しなさい。」
「キャ・・・・た、隊長ォ・・・・。」
俺は目の前にいるキャシー・・・・いや、イングラム隊長を見た。まさに兵士の顔だった。
この時、俺は初めて彼女のことを心から尊敬した。
「だいじょうぶ?」
「は、はい。」
「なら行くわよ。着いてきなさい。」
そして俺達はまた動きだす。
◇ ◇ ◇
あれからどのくらい経ったのだろうか…
目の前には大勢のバケモノがひたすらワタシを眺めている。
何度かバケモノに拘束された人も見かけるが、どこかに連れて行かれてしまう。
何人も、何人も……
ワタシはどうなる?
殺されるのか?
死ぬのか?
死…
シ。
ワ、ワタシは…
し、死など、お、恐れな…
オソ…
ア、アァァァ………
◇ ◇ ◇
ふと目の前に背中を向いた異星人が立っていた。
死体の山を見た時の記憶がフラッシュバックし、俺は銃口を向けた。引き金を引く瞬間、隊長が静止の合図をする。
なぜ?
「…ヤツの後をつけば監禁場所へと案内してくれる。」
なるほど。
俺達は距離をおきながら異星人を尾行する。しばらくして大きな部屋へと辿り着く。
周りには大勢の異星人達が何かの作業をしていた。高度な機械がたくさんあり、差し詰め異星人達の秘密基地というところか。
そして中央に人一人入れるサイズの水槽があり、中には人型が浮かんでいた。その水槽を包囲するように異星人が立っていて、その内一体が他の異星人と比べて頭一個分背が高かった。
アイツがボスだろう。
「どうします隊長?」
「待って。」
隊長が耳元の通信機に手を掛ける。
「こちらイングラム。敵はサイン星系の種族と判明、その数約40。」
サイン星系…あぁ、俺を誘拐した奴らと同じタイプか。よく見たら見知った体つきだと思った。
「以前のような巨漢タイプは確認できていない。また、内一体に指揮官らしき個体を確認。」
『生存者は確認しましたか?』
前もって俺も装着していた通信機越しに青井さんの声がした。通信機は皆同時に会話ができるようになっているようだ。
「…途中おびただしい数の死体を確認。目標の白雪桜月を水槽内にて視認。生死は今のところ確認できず。」
『了解。ただちに生存者を救出し、敵を殲滅せよ。』
「了解。」
「…りょ、了解。」
とりあえず俺も返事してみる。通信を終え、隊長が俺を見る。
「ここから二手に別れて行動するわ。タイミングを見てアンタから異星人に接触しなさい。」
「ちょ、隊長は一体何をぉ?」
「私はアンタにあわせて行動する。いわばバックアップよ。」
俺にどうしろと!?
アクションスターのようにカッコよく殴り込めと!?!?
「何をするかはアンタ次第。けど、間違ってもアノ水槽を傷つけないように。」
あ、はい。わかっています。
「それじゃ、死なないようにね。」
そう言い残して隊長は俺を置いて走り出した。
しかたない。テキトーにするか。
お読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに!






