第7話 サイコ・キャパシティー
おつかれさまです。
今回もお楽しみに!
授業も無事終わり、俺も帰路に就く・・・・・・・・わけではないんだなコレが。
今日はMEX日本支部で訓練することになっている。そうキャシーに言われたので俺は本部に向かっている最中だ。
改めて俺達が住む地区について説明しよう!
東京都千零区。
大田区の東側に位置し、新宿区と同じぐらいの大きさだ。
この区は珍しくキレイな円形をした人工島で、大きく分けて7つのエリアに分けられている。中央に位置する区役所エリアから住宅区画、繁華街、自衛隊駐屯地区、工業地区、小さな遊園地を中心とした娯楽施設、発電施設と融合した自然公園エリアで構成されている。
元々は東京湾の海の汚れの浄化を目的として建設され、大多数の反論や陰謀論があったが、結果的に海の汚れが多少綺麗になったことで収まったとのこと。今や環境保護に大きく貢献した区として祭り上げているのが現状だ。
と、俺はこの間まで信じていた。
異星人の存在を知った今、絶対何か秘密があるに違いない。俺はそう思い始めていた。
そうして俺は工業地区と自衛隊駐屯地区の間付近に位置する、宇宙博物館へ入っていった。
この博物館は典型的な宇宙博物館だが、それは地上での話。実はここがMEX日本支部の本拠地になっているのだ。
案外簡単にバレるかもしれないが、逆にこんなベタなところに異星人と戦う組織の基地があるなんて思わない。その考えを逆手に取ったのだろう。
俺は入り口にてセキュリティーチェックを受ける。
ロビーにてどこに向かえば良いのかを聞き、そこに向かう。向かった先は『異星技術研究開発室』通称『ラボ』。
「・・・・やぁっと来てくれた。さ、さ、入って、入って。」
中にはいると眼鏡をかけたラボコートに身を包んだお姉さんに声を掛けられる。
「散らかっててごみーんねー。主任の宇野蛍よ。あなたが例の新人くんね。」
俺はお姉さんを観察してみる。
身長約150cm代に丸眼鏡、茶髪で三つ編み上のツインテール、胸のほうはというと・・・・OH・・・。
「ちょっと!今失礼なこと思ってなかった!?」
「イエイエ・・・・」
俺のヒロインはキャシーだけだということを再認識した瞬間である。
「なんかムカつくけど、時間もないしさっさと始めるわよ!」
そうして宇野さんの後についていくとゴツいボディースーツが目に入る。
「今回あなたにやってもらうのはこの子の動作チェックよ。」
本格的だな。待っていましたよこういうの!
俺がニヤニヤしているうちちに宇野さんの説明が始まる。
「強化外兵装『クロップ』。あなたの脳から発する念動波を動力源にし身体機能を飛躍的に高める使用になっているわ。腕力、防御力、ジャンプ力、さらには視力まで上がっているわよ。ただし、起動時は念動力が使えないから、任意でスイッチで電源をオフする必要があるのが欠点。その際、約30秒念動力が使える反面身体機能が著しく低下する・・・・って、ちょっと聞いてる?」
途中から宇野さんの説明を聞き逃していた。
俺は今猛烈にこのスーツを着たい衝動に駆られている。
「・・・・ま、いいわ。どうせ早くこの子を着たくてウズウズしているんでしょ?」
そういって俺は服を脱いでインナー姿になって早速このクロップを装着していった。
――数分後
俺は今、特撮ヒーローにでもなった気分でいる。男ならこの燃えるシチュエーションが解るだろう。
だが・・・・
――ギシッ・・・・
ふん!
――ギシッ・・・・
ふん!!
――ギシッ・・・・
歩きにくい。
何故だ?
身体機能が高まっているんじゃないのか!?
これじゃ、敵の的になるだけじゃないのか。
「うーん……おかしいわね。」
次の瞬間強烈な衝撃に襲われて壮大に倒れる。
「なっ!?何をしたんですか!?!?」
「いやちょっと遠隔で電源を入れようかと思ったんだけど、ちゃんと入っていたようね。」
「一言言ってからしてください!」
「イヤ~、メンゴメンゴ。」
途端に体が軽くなった。だが立ち上がるのも一苦労だった。
「・・・・もしかしなくても故障とかっ!?」
俺が話終える前にまた床に倒れる。
さてはまた電源を切ったな。
「失礼ねぇ!ウノさんは多少抜けてるけどプロの科学者よ!!」
一人称が『ウノさん』なんだ・・・・。
「大体、指令の気まぐれでうちに入ってきた新人が、しゃしゃり出るんじゃないわよ!」
うまく取り入れたつもりが、気まぐれだったとは…。
「そのスーツはいわばあなたの念動力を動力源にするのよ?もっと集中しなさい!」
なるほどね。
集中、集中・・・・
そしてゆっくりと俺は再び立ち上がる。
「その調子、その調子。」
そこで扉が開いてキャシーが現れる。
「どう調子は?」
「キャサリン!…それがあんまりなのよ。」
よく見るとキャシーはいつかの日の如く真紅のボディースーツを着込んでいた。
この光景、メッチャたまらん!
「今朝の威勢はどうしたのキョウ?」
「・・・・これぐらい何ともないぜぇ?キャシー。」
「あ~あ。」
ふと宇野さんを見ると額に手を当てていた。
「…動作確認の手助けをしてあげるわ。」
俺の目の前でキャシーが構える。
「ふっ!」
俺はとっさに動こうとしたが、スーツがうまく動かなかったため何もできなかった。
結果、キャシーは俺のムスコ《・・・》を壮大に蹴り上げることになった。
股間に強烈な痛みが走り、俺はまた床に倒れてしまう。
「まったく使えないわね。」
「フッ・・・・フフフフフッ・・・・・・・・キャシーは金的フェチだと・・・・メモメモ・・・・」
そしてまた体に別の衝撃が走る。またキャシーに蹴られたようだ。
「お楽しみのところ悪いんだけど、この子本当に例の子なのキャサリン?」
「・・・・残念ながらね。」
俺は気絶したフリして二人の会話を聞く。
「それにしてはあまりにも念動力量が低いわよ?」
「ウソでしょ?」
「珍しくトリプルチェックしたわよ。この子の念動力量は歴代最低よ。」
「・・・・だったらこの間のは何?アレは一体何だったの??」
俺も我慢できなくて立ち上がった。
「その『サイコ・キャパ』っていうのは何のことっすか?」
「アンタも案外頑丈なのね。」
「それほどでも~」
キャシーが悪態ついて、俺は軽く流す。
「コホン。とりあえず新人くんに軽くレクチャーするわ。」
宇野さんの説明が始まった。
まず超能力というのは地球人独自の能力ではなく、エイリアンがとある目的のために地球人へ与えた力だということ。その力は人間の脳を刺激し活性化させ第六感を強化する役割を持っているという。次第に考えるだけで物を動かせることができるようになる。ただ、エイリアン達にとっての予想外の副作用が発生していた。超能力は遺伝するということだ。個人差はあれど、何かの拍子で能力が発現することもあり得るのだ。遺伝すること以外にも長時間能力者と共にいれば接触感染することもあるが、このケースは稀である。
「・・・・ということは俺の家族や親戚の中に、超能力者がいたということっすか?」
「可能性はあるわね。」
俺って案外恵まれていたんだな。
「それで異星人が能力者を狙うことが解ったから保護の名目上、能力者の脳から発する念動波を探知する装置をMEXが開発したっていうこと。念動波を数値化して計測したものを私達は念動力量、またの名を『サイコ・キャパシティー』と呼ぶ。」
なるほどねー。勉強になりましたよー。
「それで学校で歴代最大の念動力量の反応を探知したから、私がアンタに接触したの。」
「そんなまどろっこしい理由を付けなくとも、好きなら好きって・・・・グッ!」
キャシーが俺の首を掴む。
「ダ・レ・ガ、ダ・レ・を、好きって?」
「!?お取り込み中邪魔するけどキャサリン、画面を見て!」
壁に立て掛けてある液晶モニターに東京都全域が映し出す。
その一カ所にバツ印が点滅しているのが見える。
「これは・・・・」
血相を変えたキャシーが俺を解放する。
「何がどうなっているんです??」
そして宇野さんが呟く。
「・・・・・・・・・・・・・・・・歴代最大の念動力量、再び探知。」
いかがでしたでしょう?
今回は舞台となる千零区の設定や超能力に関する設定がメインでした。
次回もお楽しみに!