第2話 俺の時代
二話目です。
今回から視点が変わりますので、「◇ ◇ ◇」マークに注意してください。
寒い。
サムイィ…。
ここはどこだ?
私は誰だ………って言ってみたりして…。
つーか、暗くて何も見えん。
そうこうしているうちに意識がクリアになっていく。
暗かった視界に光が射すと、緑色な液体の中に俺がプカプカ浮いていることがわかる。
これはどういうことだろう?
ただの誘拐では?
それともどっかのマッドサイエンティストの実験台にされているとか?
正面にうっすらと人型が複数見える。
ライトを当てているのか一瞬視界が明るくなったと想った瞬間、
視界が割れた。
◇ ◇ ◇
――数分前
「…見つけた!目標の反応を確認。これより突撃します。」
迂闊だった。
まさか『ヤツら』が先回りするなんて。
せっかく私が付きっきりでボディーガード役を買って出たのにこれじゃ…。
こんな時こそ冷静になるのよ。
私はMEXなんだから。
バイクをフルスロットルにし、私はビルの窓目掛けて駆け出した。
ガラスが割れると同時に、私の乗ったバイクがビル内に飛び出し、窓ガラスが飛び散る中バイクに収納していたサブマシンガン、MP5Kを片手に周りの敵を乱れ撃つ。
水槽内に浮かぶキョウを見つけ、彼を救うためその水槽にも弾丸を入れる。
水槽のガラスが割れ、緑の液体と共にキョウが流れ出る。
彼が目覚めるのを確認すると私は安心させようと笑顔を向けた。
もう大丈夫。あなたは私が守から。
◇ ◇ ◇
どうやら俺は水槽に入れられていたのか、ビショビショに濡れていた。
顔を上げるそこには超セクスィーな女が銃を構えて真っ赤なバイクに跨がっていた。
女はそりゃもう真っ赤でド派手なライダースーツを着込んでおり、体のラインがピッチピチに見える。
むしろタイツなのでは?とも思った。
顔の方をよく見ると今度こそ俺は驚愕した。
「イングラム嬢……だよなぁ?」
俺に気付いたのか、俺に微笑みかけた。
肉食獣が獲物を見つけたような不敵な笑みを。
この表情、実にゾクゾクするねぇ~。
ふとイングラム嬢の背後に人影が彼女目掛けて飛びかかってきた。
彼女はそれを察してか、背中に携帯していたショットガンを取り出しその人影を撃った。
高い騒音と共に肉片が飛び散る。
オイオイオイ!
イングラム嬢が人を殺したぁ!?
しかもショットガンを片手で!!
だが俺は倒れた人影をよく見ると気付いた。いや、気付いてしまった。
コイツラハ人間ジャナイ。
その死体は俺でも気付くほど人間の体つきをしていなかった。
どこかバケモノチックなソレだった。
冷静になって立ち上がり、俺は周囲を観察した。
ここはどこかの古い建物の中で、至る所には火が燃え上がり、地面には無数のガラス片。
振り返ると俺が入っていたであろう割れた水槽、横にはSFチックなスゴイ機械。
もしかして俺は今ドエラい事件に巻き込まれている?
しばらくすると俺とイングラム嬢を囲むように複数の人影が包囲する。
そのどれもが人間じゃないバケモノ軍団だった。
「こいつは一体…?」
「伏せて!」
イングラム嬢の掛け声と共に、不思議に光る光線が彼女と俺目掛けて飛んでくる。
同時に彼女はショットガンとサブマシンガンを、周りのバケモノ共に向かって撃ちまくる。
俺はというと、地面で顔をイングラム嬢の胸に押しつぶされて只今幸せな状態。
そして俺達は立ち上がると、俺の手をイングラム嬢に引かれて駆け出す。
「いきなり訳わからないと思うけど、とりあえず私を信じてついてきて!」
OH! YES!!承知しましたぁ!!
そうしてイングラム嬢を筆頭にしてバケモノ軍団に追われながらの逃避行が始まった。
時折立ち止まっては銃を乱射し、また逃げるの繰り返す。
途中何体かのバケモノが倒れていくのを俺は見ていた。
しばらくすると外に出て俺達は物陰に隠れる。
「…愛の逃避行も嬉しいが、そろそろ話くれないかいハニー?」
俺が喋りだすとイングラム嬢は無表情で俺の股間めがけて銃を一発撃つ。
弾は背後にある壁に跳弾せずにのめり込んだ。
「今度そういう冗談言ったらズドンよ?」
スッゲーッ!!
外国の女優みたいでマジタイプ!!!!
さすがに股間を潰されるのはシャレにならないので、とりあえず親指を立てた。
「わかればよろしい。」
イングラム嬢は俺に向き直り話し出す。
「ヤツらは異星人。人間社会に溶け込んだ害虫どもよ。影に隠れて組織的に行動し誘拐、人体実験、破壊活動、数えだしたらキリがないわ。要するに私達人類の敵。今はそう理解して。」
異星人ねぇ…。
スゴイ中二設定で笑い飛ばすところだが、今まさに俺が『誘拐』されたところだ。
信じるぞ。
いやぁ~待ってましたよこういう展開!
ん?
ってことはナニか?
「つまり俺は『偶然誘拐された一般人』ってことか?」
「残念だけどことはそう単純じゃないの。」
お?
「ヤツらはランダムに人を誘拐なんてしない。あなたは狙われたのよ。」
マジか。
「今朝言ったわよね?あなたに最近頭痛はなかったか。」
「強いて言うなら偏頭痛ならあったが…。」
「なら今日不思議なものを見た覚えは?」
う~ん……今朝のUFOっぽい影とか?
それ以外じゃテスト中に消しゴムが……ッ!
「心当たりがあるようね。」
「…落ちる消しゴムをとろうとしたら、俺の方に飛んできた。」
「やはり目覚めたのね。」
「目覚めた?」
この展開、まさか。
「消しゴミがあなたに飛んできたんじゃなく、あなたの意志の力で消しゴムをキャッチしたのよ。」
まさか、まさか、まさか、マ・サ・カァ??
「その力の名は念動力。あなたは超能力者よ。」
キターーーーッ!!!!
まさに主人公っぽい展開。
俺が主人公ならイングラム嬢、君が俺のセクスィー・ヒロインだ!!
と、いうことはこの後…。
案の定激しい騒音が響いた。
俺達が出てきた建物の中から一際大きなバケモノもとい異星人がでてきた。
「さがりなさい。ここは私が。」
凛々しいなぁイングラム嬢、いやキャシー。
遂に俺の時代が来たのだ。
お読みいただきありがとうございます。
無事読みきれば幸いです。