第16話 進撃の白雪
おつかれさまです。
今回は本作のヒロインの一人である白雪桜月ちゃんの一人称です。
お楽しみください。
「こちら白雪。獅子玄武応答願う。」
『青井です。どうかなさいましたか?』
「ポイントD-85にて要救助者多数確認。自衛隊に連絡を頼む。」
『了解しました。続けて捜索をお願いします。』
「承知した。」
獅子玄武に乗っている青井に連絡を終えた後、ワタシは別方向へと飛び捜索を続ける。
あれから三十分以上が経過したが……ヒドイものだな。
空から見下ろす町は正に火の海だった。時折視界が煙に遮られるが、能力を駆使して煙を逸らす。
正直、ここまで念動力が使い勝手の良いものだとはワタシも思わなかった。精々敵と戦うためだけの攻撃手段としか思っていなかったからな。
先ほどキャサリンから要救助者を多数発見したとの連絡を受けた。向こうも順調なのだと予想ができるが…。
改めてワタシは思う。学園での弱々しい態度と違い、キャサリンは生き生きしていた。
そんな彼女の本性を見抜けなかったワタシの眼力もまだまだということだろう。
そう思っていると地上からワタシ目掛けて瓦礫の塊が飛んできた。すかさずそれをかわしたと思ったら、複数の塊が続けざまに飛んでくる。
それらを問題なく避けたワタシは周囲を見渡す。異星人共があちこちいる。
それらはまるで岩を全身に纏った筋肉質の大男の姿をしていた。
以前キャサリンとフクオを襲った巨漢とやらか?しかも複数いるとは…。
空を飛行しているワタシは問題ないが、ワタシが避けたことで投げられた塊が周りの建物壊されるのが見えた。連中がワタシを狙うがために周りに被害が及ぶのは忍びない。
意を決して、ワタシは地面に降り立ち通信を入れる。
「こちら白雪、獅子玄武応答願う。巨漢を数十体確認。」
『青井です。状況の説明をお願いします。』
「空中から捜索中に巨漢共から多数の瓦礫を投げられた。ワタシはそれらを回避することで周りに被害を及ぼすと判断したため、地上に降りて各個撃破すると判断した。」
『了解しました。注意してください。巨漢タイプを一人で数十体撃破した例はありません。危険と判断した場合は即時撤退を。』
「無論、承知している。」
そう言ってワタシは通信を切り、構える。周りの巨漢共は物珍しそうにワタシを睨み続けるまま立ち尽くしていた。
「ならば先手必勝!弾丸拳!!」
ワタシは瞬時に紫電の右手を拳にし、目の前にいる一体目掛けて射出する。巨漢一体に命中した拳はそのまま巨漢を押し続け、稼働圏外に達する手前にワタシの元へと戻ってくる。
仲間がやられた腹いせか、周りの巨漢共が全員でワタシに飛びかかる。その様子を見たワタシは次の行動に移る。
「フッ・・・来るなら来い!弾丸拳二ノ片!!」
両方の紫電の拳を手前に射出し、ワタシの周りに高速回転させる。ワタシに近付く巨漢は、周りを回転する拳の餌食になり弾かれていく。
そんなときに、雑音と共に通信が入る。
『ジジジッ・・・逃げなさいキョウ!今のアンタじゃ・・ジジッ。』
フクオ?
一瞬の気の迷いで回転していた紫電の回転速度が落ちる。そして一体の巨漢がそれに気づき、ワタシの懐まで近付き体当たりした。
「くっ!」
ワタシとしたことが油断しを・・・。
体当たりの反動で揺れながらも通信が続く。
『ジジッ・・・私が・・ジッ・・・なんとか持ちこたえ・・・ジジジッ』
通信越しでも解るほどキャサリンが心配しているのが解る。
すると突然ワタシの背後から衝撃が走る。別の巨漢がワタシに跳び蹴りをしたのだ。
ワタシはそのまま前のめりに倒れる。そして周りの巨漢が一斉に飛びかかり、ワタシは咄嗟に能力を駆使して防御したが間に合わなかった。
ワタシは殴られ蹴られ、巨漢共に袋叩きにされた。唯一の救いは、能力で薄い結界のようなものを作り、痛みを和らげることに成功した。だが、やはり痛いものは痛い。
時間が経過することで、同じ箇所を攻撃されたところから徐々にに痛みが増していく。
ワタシもここまでなのかな、フクオ・・・
『俺達の任務は人命救助でしょ?』
フクオの言葉に思わずハッとなった。
そうだ我等が倒れたら誰が皆を救う?
『俺は・・・ジジジッ・・・・MEX隊員です。』
その言葉を最後に通信が途切れる。
そうだ!そのとおりだ!!
流石は我が恋人。フクオの強い信念がワタシに伝わってくる。
ならワタシも彼女として恥のない戦いを見せなくは!
そしてワタシは集中した。
巨漢一体一体を…正確に……掴む!!
巨漢共は動きを止め、一斉に宙に浮かび上がる。
「先ほどはよくもやってくれたな?」
ワタシは浮かび上がった巨漢全てを周りに回転させる。
もっと早く!もっと早く!!
竜巻の如く巨漢共が回転していく。回転速度が更に勢いを増し、尚も速度を上げていく。
「はあああああっ!烈風ぅ!!風神竜巻ぃ!!!!」
その瞬間、ワタシは瞬時に速度を数倍上げたことで、巨漢達の肉体が耐えきれずに四散していく。肉片があたり一面に落ちていく中、ワタシは落ちていた紫電の両腕を再装着する。
「さて、今行くぞフクオ。獅子玄武応答願う!」
『青井です。』
「直ちにフクオの居場所を教えろ!ワタシが向かう!!」
そう言ってワタシは飛び上がる。勢いが強すぎたせいか、土煙も共に舞う。
青井の誘導でなんとか囲まれていたフクオまで到着する。
「助けに来たぞフクオ!」
満身創痍で背中から血を流すフクオの姿にワタシは心を痛む。
そして目の前のカマキリ共に向き直り、
「ワタシの恋人に手を出した罪万死に値する!」
手始めにワタシは目の前にいる数人のカマキリ共を能力で掴もうとするが、気づかれたのかワタシの視界から四面へとかわす。別の一団にも同様のことを試みたが、同じ結果になった。
フム。巨漢共と違って一筋縄にはいかないな。
ワタシとフクオはカマキリ共に囲まれていた。ふと右後ろから殺気を感じて振り返ると、一体がワタシに飛びかかってくる。
ワタシは体を回転しながら紫電の腕でソヤツをなぎ払う。そのすぐ後に背後から複数の殺気を感じ、首だけ向くとニ体襲いかかってくる。
間に合わないと思ったが、間にフクオが割り込み眩い光の光線を発生させてカマキリ共を振り払う。よく見るとフクオの手には光線銃が握られていた。
おそらく引き金を引いたままにし、光線を続けざまに発射することで光の剣を形成したのだろう。
「桜月ちゃん、後ろは俺にまかせろ!」
「心強いよ、フクオ。」
フクオと共に戦うことでワタシは、己の胸の高まりを押さえつけられない。
「弾丸拳ニ連撃!!」
ワタシは両腕の紫電を同時に射出し、ワタシとフクオを中心に回転させる。
これでカマキリ共も容易に近づけまい。
そう思ったのだが、周囲を回転する紫電を避ける個体もいた。カマキリ共は巨漢共より明らかに動きが良かった。
フクオは突破してきたカマキリ共に向けて光線銃を撃った。全弾命中とはいかないが、何度か命中する。
それでも尚近付く個体にフクオは、匠な動きでそれらを地面に叩き伏せる。
フクオには武術の心得があるのか?
多生のムダがあったが、フクオの動きは武術の経験のある者の動きだった。
ワタシの恋人は強い!
ワタシは素直に感心した。戦いに集中しようとした直後、離れたところから大きな爆発がしたのを目撃する。
あそこはたしかキャサリンがいるところじゃ?
カマキリ共は戦いを止め、一斉に爆発の方へ走り出す。いやな予感を拭えずにフクオ共々立ち尽くす。
無事でいるのだぞ、キャサリン!
お読み下さり、感謝致します。
ちゃんとアクションシーンとか書けていないか不安です。読みにくかったら謝罪致します。
では次回もお楽しみに。




