第14話 遭遇
おつかれさまです。
今回は少々短めですが、今回もお楽しみください。
獅子玄武が走る中、キャサリン隊長が俺達に作戦を話す。
「作戦を説明するわ。獅子玄武は作戦区域に到達後、中央に待機。紫電が護衛しつつ民間人の捜索に当たる。私は北エリアを、キョウは南を捜索。途中、敵に遭遇した場合は臨機応変に行動するように。民間人の救助が最優先よ。」
「ほぅ、敵の撃破を優先しないとなると大半が逃げられることになるが?」
隊長の説明に桜月ちゃんが素朴な疑問をぶつける。
「今回ばかりはやむ終えないわ。民間人の救助が最優先だもの。」
「承知した。」
隊長の言葉に桜月ちゃんが納得する。今回の出撃は桜月ちゃんにとっての初の実戦になる。
うまく俺がフォローできればいいのだが。
「桜月ちゃん、リラックスだよ?」
「ありがとう、フクオ。でもワタシに心配なぞ不要だ。戦いの心得はできている。」
桜月ちゃんにさり気なく声を掛けたのだが、心配なさそうだ。この人、妙なバトル気質を持っているような気がする…。
隊長がクリムゾン・デューマーに近づき、エンジンを入れる。
「私は今から現場に急行する。各自の健闘を祈る。」
「「了解!」」
そう言って隊長がクリムゾン・デューマーに跨がり、
「ハッチ開放、スピード落とせ!」
通信用席から青井さんが指示を出すのと同時に、獅子玄武後部の壁が開きスピードも落ちる。そして、クリムゾン・デューマーがゆっくりと壁穴から外に出る。
「クリムゾン・デューマーの発車を確認。」
『こちらイングラム、現場へ急行する。』
バイクのエンジン音が鳴る中、壁穴が閉じていく。
◇ ◇ ◇
クリムゾン・デューマーを走らせた私は現場エリアへ入る。酷い光景だった。
道端の所々には瓦礫があり、幾つかの建物が燃えていた。
煙と人の血が混ざった臭いがする。空は血のように赤く光っていた。
いくつかの通りを過ぎていくと道端で人が倒れているのを目にする。私はバイクを止め、サブマシンガンを肩に掛けながら近づいた。
「だいじょうぶですか!?もう心配は・・・・ッ!!」
倒れていた人を起き上がらせようとして私は手を止める。既に意識がなく、体は冷たかった。
そっと体を地面に寝かして、私はサブマシンガンを構えながら辺りを捜索する。
途中、何度か返り血の跡を壁に見かける。
「・・・・すけてぇ・・・・」
「!!」
微かに声が聞こえた。私は立ち止まって呼びかける。
「だれかそこにいますか!」
「・・・・た・・・・け・・・・てぇ。」
声を頼りに私は駆け出すと、瓦礫に押しつぶされていた女性を見つける。彼女たちは血塗れになって、私に向けて手を伸ばそうとしていた。
私はすぐに瓦礫を女性から振り払った。
「もう大丈夫です。助けに来ました!」
「ありが・・・・」
女性はボロボロになりながらも、自分を助けた私に対して礼を言おうとした。そんな彼女を私は優しく抱きしめて通信を送る。
「オペレーター、要救助者を発見!自衛隊に連絡を入れたし!」
『こちらオペレーター。現在位置に自衛隊を送ります。』
この作戦は自衛隊と連携した作戦だ。
異星人との遭遇戦を想定し、私達MEXが先行して救助者を見つける。その後、私達の位置情報を元に自衛隊が救助しに来る形だ。
救助を待つ間、私はキョウと白雪さんの心配をした。
◇ ◇ ◇
「獅子玄武停車。作戦開始!」
作戦位置に到着し、我等は行動を開始する。
これが初の実戦。
先程フクオに心配するなとは言ったが、やはり緊張するものだ。そんな自分の心境に気付いたのかフクオがワタシに熱い眼差しを向けてくる。
君には敵わないな。
フクオのお陰でまたもや緊張が解れる。感謝の想いを込めてワタシは微笑み返した。
想いが通じたのかフクオが一度うなずいてからヘルメットを被る。
するとワタシはふと、あのマクケビンとかいう男の悪趣味に対して嫌気がさすのを覚える。フクオは気付いて無さそうだが、彼の格好は妖怪や物の怪を思わすような姿形をしていた。
彼氏にこんな格好をさせるのは気が引けるが、我等にはやることがあるのだ。ワタシは深呼吸しキョウと共に外に出る。
外は正に何かの災害あったような風景が広がっていた。
我等の任務は『人命救助』。
逃げ遅れた者を救うなが我等の役目なのだ。
「こちら白雪、上空より捜索を開始する。」
『了解しました。』
耳元に装着していた通信機で青井さんに連絡を入れる。
「行ってくるぞフクオ。君も頑張れよ。」
ワタシの言葉にフクオがうなずく。
そしてワタシは空を飛ぶ。
◇ ◇ ◇
獅子玄武内で俺は桜月ちゃんの色っぽいボディーに見とれていた。俺の視線に気付いたのか彼女はSっ気のある顔で微笑み返す。
このカンジ久しぶりだぁ~。ゾクゾクするねぇ~。
とりあえずクールに微笑み返してみる。
そして、この悪趣味なヘルメットを被る。
なんかアレだな。俺らの組み合わせってまるで、女王様とそれに付き従う下僕みたなカンジだ。
準備が出来たので外に出てみる。目の前はまるでどっかの、海外レスキューものの撮影セットみたいな風景。
でもこれは現実の、本物の『現場』なんだよな。
「行ってくるぞフクオ。君も頑張れよ。」
桜月ちゃんの声を聞いたんでとりあえずコクッとうなずく。
彼女の飛んでいく姿を見送った俺は、ヘルメットの横にあるスイッチを押す。すると、目の部分に黄色いバイザーが降りてきた。
便利なものだ。
なんか本格的に特撮ものの登場人物になったような気がした。
さて、お仕事お仕事。
とりあえず駆け出してみる……と思ったのだが………。
――ダッ!
俺は物凄いスピードで駆け出してしまう。
ふと目の前には壁。ジャンプしようと思って地を蹴ると、シュッと体が勢いよく浮かび上がって建物を飛び越えてしまう。
――タッ。
飛び越えた建物の二つ先の屋根の上に着地する。
スゲッ。このスーツ、マジスゲェ!!
たしか、マクケビンのオッサンが言うには防御力と引き換えに、スピードと瞬発力が上がるんだっけ?だとしたらさっきの説明がつく。
俺はこのスーツを装着している間だけはアメコミヒーロー並の身体能力を持っているということか。
だとしたらサイッコーじゃね?
とりあえず俺は走る練習をしながら要救助者を探す。ゆっくり走ったり、もう少し早めに走ったりと、慣れるまでそう長くは掛からなかった。
ふと建物の中に微かな人影が見えたような気がした。俺はすぐさまその建物に近づいて入っていった。
「だいじょうぶですか!?救助に来ました!!」
俺は元気よく言えたと思う。ところが、返ってきた言葉は予想外のものだった。
「な、なんだ!?」
「サツか!?」
「邪魔すんなオラァ!!」
俺の目の前には傷だらけで薄汚れた男が三人。床には散乱した物品。
彼等の手には札束や金目の物と思われる宝石の類が握られていた。
もしかしてこれは火事場泥棒ってヤツ?
火事で混乱した隙に窃盗など盗みっぽい行為に走る連中。現実にいるのは知っていたが、まさか本物に遭遇するとは。
「なんだコイツ?コスプレか何かか?」
「どう見てもサツじゃねぇ。」
「邪魔すっとコロスぞォ!!」
俺がただのコスプレ野郎と思ったのか、盗みを続ける三人。
さてどうする?
別に俺は正義の味方ってわけじゃないし、このまま無視するのも一つの手か?
…いや、止めておこう。
でないと隊長と桜月ちゃんに怒られるから。それに今の俺はMEX隊員だ。
とりあえず、救助と称してコイツ等を気絶させるか。
そう思った瞬間、突然三人の男達がいる天井が崩れ落ちた。この様子じゃ三人は助からなかったと思う。
崩れ落ちた天井の瓦礫の上から俺を見下ろす人影を俺は捉える。
「今度は人間じゃないな?」
その人影は人間じゃなかた。トレンチコートを羽織っていたが、両腕はどこかカマキリのような腕をして、頭部もエビのような頭をしていた。
ひとまず俺はその場から逃げ、隣の建物の屋根の上へ立つ。
だが、案の定あのエビもどきが目の前に降り立ち、俺に向けて片腕のカマを構えた。
コイツは俺を逃がすつもりがないらしい。
「わかったよエビカマ野郎……かかってきなァ?」
戦うしかないと思い、俺も構えた。
お読みいただき、ありがとうございました。
次回も、お楽しみに。




