第13話 獅子玄武、発進!!
おつかれさまです。
今回は少々短めの話になります。
どうぞ、お楽しみください。
「アキハバラ・バトル・スタジアム・・・・これに参加して貰いますよ。」
アキハバラって…あの秋葉原??
「キャサリン、その秋葉原なんとかというのは何なのだ?」
俺同様疑問に思った桜月ちゃんがキャサリンに聞く。
「アキハバラ・バトル・スタジアム。東京都内の裏社会に生きる異星人と人間が共同運営する闘技場よ。参加者は皆トーナメント形式でリング内で闘う。武器の使用も認められて、相手を殺すことも可能。ルールはただ一つ、勝つことよ。」
なるほどね。映画とかに出てくるルール無用な殺し合いを楽しむ闘技場ってわけね。
「でもそれだけじゃないの。」
そして今度はマクケビンが口を開く。
「そう。スタジアムにいるのは参加者だけではなく、観客も存在します。観客はバトルを見ながら賭をし、楽しむ。そのため膨大な量の金が回りギャンブルができる。ワタクシへの支払いは、自身が賭けで儲かった分の金です。それに、あなた方がスタジアムに参加するメリットはもう一つあります。」
今度は何だよ?
「今度の大会では日本国内や外国で活動する、異星人犯罪組織の幹部の面々が直接観戦するのです。」
「ッ!!」
キャサリンがこれ以上ないくらい驚愕する。
そりゃ、俺達の敵が一カ所に集まるのだ。全員逮捕も夢じゃないってか?
「いいでしょう。参加するわ。日付と時間はいつ・・・・」
「ちょっと待った。ワタシが参加しよう。」
キャサリンの言葉を遮るように、桜月ちゃんが突然参加の意を示す。
「サ、サツキさん!何考えてんの!?これは殺し合いなのよ!?」
「そんなことは百も承知。しかし幸か不幸かワタシには最強の力がある。己の力を過信する気はないが、どうにかできようと思う。」
「危険すぎるわ。私は反対よ。」
「むっ。危険はキャサリンも同じのはず。さてはフクオにいいところを見せつけることが狙いか?」
「なんでそんな話になるのよ!私はキョウのことなんか何とも・・・・って、違う!!」
「何が違うのだ?お前はフクオが好きではないのか??」
「私が?ありえない!私が好きなのは・・・・!!」
なんか話が段々と脱線していく気がする。
でも途中、目の前の二人の美少女が俺を取り合うような形になったような・・・・。
なんかこう、私のために争わないで~とか言ってみたりして。
「・・・・あの、お二人共白熱しているところ悪いのですが?」
「「何ッ!?」」
マクケビンが仲裁しようとして二人が見事にハモった。
「ワタクシが参加してほしいのはお二人のどちらかではありません。キョウ君です。」
「「は?」」
「ほえ?」
このオッサンは何を言っているんだ?この俺がルール無用の殺人スタジアムに出場??
ありえなくね?
死ぬわ。
マジ死ぬ。すぐ死ぬ。DEATHルわ!!
俺が絶望的な表情をしていると、
「別に優勝しろとは言っていませんよ。参加して一戦すれば良いのです。」
「だが、それだと賭け金が・・・・。」
「ワタクシが別の選手に賭ければ良いだけのこと。」
「・・・・ならいっか。」
優勝しなくても良いということはギブアップも良いってことだろ?
どうにかできるっしょ。
そしてキャサリンが俺の胸ぐらを掴む。
「ちょっと!アンタはそれでいいのキョウ!?」
「いいよいいよ。俺のことを応援してくれる君達がいればどうにかなるさ。」
俺はそう言って、キャサリンへ向けてウィンクすると、キャサリンがジトッと俺を睨む。
「アンタってホントのバカね。」
「勝算はあるのかフクオ?」
桜月ちゃんの問いに俺は、
「あるわけないっしょ。開始直後にギブアップすればいいんだし。」
「大会にギブアップなどのルールはありませんよ?」
マクケビンの説明に俺の背筋が凍る。そして端末を取り出して説明を続ける。
「気絶するか死ぬかですよキョウ君。さて、エントリーを終えましたが、逃げるのはオススメしませんよ?主催者側から血の気の多い暗殺者が送り出されるとも限りませんからね。」
終わった。
俺の人生はここまでか。
「とりあえずマンバは此方からMEX本部へ送り出しますので。ご購入ありがとうございました。」
マクケビンが俺達三人に対して一礼する。
――MEX本部、数時間後
MKホームズを出た俺達は帰宅しようとしたが、本部から出動要請が出たので本部へ向かった。
本部に着くと不思議なことに紫電ZEROのすぐ隣にマンバが整備されていた。
俺達はそのまま会議室に入る。
――会議室
「本日未明午後○○時○○分、港区へ不審船が停泊したのを確認。以降下船した乗組員が突如暴れだして警察が出動し、銃撃戦が勃発。周辺に避難勧告を出した時には銃撃が止み多数の死者が出た模様。避難は既に完了したが、未だに取り残されている人間がいる可能性は大。敵の数や規模は把握出来かねるが、警察のカメラがワクイ星系の巨漢タイプを捉える。同種が多数存在している可能性が考えられる。」
俺達は静かにオペレーターからの報告を聞いていた。
バカな俺でも解るほど状況は悪い。民間人が多数取り残されている上に、敵の数も不明。
おまけに俺が以前遭遇したボス異星人である巨漢タイプが複数存在している。
まさにカオスな状態だ。
司令が一歩前に出て俺達に向き直る。
「直ちに準備に取りかかれ!なお、人命救助を最優先にし、遭遇する異星人には各個撃破に当たれ。MEX出動!!」
「「了解!」」
全員が一斉にに敬礼する。
「りょ、りょうかい・・・・。」
俺も遅れて敬礼する。
俺はキャサリンと桜月ちゃんから一旦離れて、更衣室で着替えていた。
マンバを装備するにあたり、下に私服を着るわけにはいかない。MEX隊員専用のアンダーウェアを俺は着た。
見た目は黒くて結構地味だったが、無いよりはマシだ。
――技研室
技研室へ入って目にしたのは皆が出撃に向けて準備している姿だった。
キャサリンは銃の動作確認をしながら、桜月ちゃんが紫電ZEROの手足を装備していた。俺はそのままマンバの方へ向かう。
一息して早速マンバを装着してみる。結構ズッシリした感じだったが、スイッチを入れると一瞬の寒気と共にバランスが崩れ、倒れそうになる。
『このスーツは装着者の体温を原動力にしている。』
そうマクケビンは言っていた。先程の寒気はスーツが俺の体温を、吸い取った時の感覚だろうと推測する。
そして改めて今の俺の状態を確認した。両手両足及び両肩には鎧のような物があり、腹部と胸部にはトカゲのような皮膚の柔らかい鎧がある。
指先は尖っており、全体的な色合いは黒をメインカラーにし、緑をサブカラーにした見た目だ。宇野さんが俺に歩み寄って何かを渡してくる。
「これは?」
「その強化外装とセットのヘルメットだと聞いているわ。これであなたも通信が可能よ。」
そのヘルメットには通信用のアンテナなのか、悪魔を思わせるような二本角が着いていた。
俺は顔をひきつりながら装着した。
なんだろこれ?
見た目的に桜月ちゃんが正義の味方で、俺が悪の怪人っぽいカンジだ。
俺が立ち尽くしていると宇野さんが俺達を近くのテーブルに案内した。
「ここでウノさんが新しい武器を紹介するわ。この間の戦闘で多数の異星人の電子機器や武器を手に入れたから、ウノさんがんばって自作してみた。」
そう言ってテーブルの中央に一丁の銃らしき物が置かれた。
正直、俺の目には如何にもSF映画に出てきそうな光線銃に見えた。
「今はこれ一丁しかないから、誰が使うのかみんなで決めて。」
「私は使い慣れていない武器を使うつもりはない。」
「ワタシには紫電がある。」
宇野さんの提案にキャサリンは顔を横に振り、桜月ちゃんは片手で拳を作る。
そうなると俺が使うしかなくなるので、渋々受け取った。
いざ手にすると、通常の銃より軽く感じ、専用のホルスターを受け取った俺は銃をしまう。
皆準備ができ、MEX起動車両『獅子玄武二式』に乗り込み、クリムゾン・デューマーま収納される。
そして皆を乗せた獅子玄武が本部を発進する。
お読みいただき、感謝致します。
次回もお楽しみに。




