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KYOMEX -キョウメックス-  作者: 海ひとし
11/16

第11話 紫電ZERO

おつかれさまです。




今回も視点切り替えがあるため「◇ ◇ ◇」に注意を。




それではお楽しみください。



MEX日本支部技術開発部主任、宇野蛍・個人ログ



本日未明MEX日本支部の起動装甲車両の起動実験を行う。

地球上の度重なる化石燃料の消費により、いつの日か人類は新たなるエネルギー源に頼らざるおえなくなる。そのため、急遽電気自動車の民間での運用を世界的に発注する事になった。

しかしながら、通常の燃料で出していた車両のスペックに行き届くのは困難を極めた。改良を繰り返し、やっとのことで一定の水準に満たすことができたが、未だに不満が残る。

一番の原因は通常の燃料と比べて消費が著しく早いことであり、バッテリーの劣化も早いことである。この問題は現時点で未解決であり、ここ数年日本国内でも電気供給スタンド、略して電気スタンドの数を大幅に増設することで補っている。


以上を踏まえて、MEXの作戦行動における起動装甲車両にも重大なエネルギー問題が発生している。ついこの間までは。

以前救出した白雪桜月の協力の下、このエネルギー問題に解決の糸口が見えた。

彼女は歴代最高の念動力量を記録するほどの超能力者である。念動力量が高いということは、脳における電気通達が通常より高いということ。

私はこの点に目を付けた。

彼女の脳から発する電気信号をエネルギーとして吸収する機器の開発に成功し、それらのエネルギーで起動装甲車両の運搬に成功した。更に、戦力アップも兼ねて白雪桜月専用の強化外装の開発に取り掛かる。

しかし残念ながら日本支部は現在資金面での問題を抱えており、開発に行き詰まりが差し掛かる。そのため、異星人から接収してきた機器及び強化外装『クロップ』のパーツを流用することにした。

過去にEU支部でも異星人の機器を流用した新兵器の開発データがあるので、それらを参考にし日本のロボット技術を応用して開発を行った。その結果、試作機が出来上がり白雪桜月及びその他の隊員達立ち会いの下、起動実験を行うことになった。

試作機の正式名称は決めていないため、『紫電ZERO』という仮のコードネームを与える。



◇ ◇ ◇



「エネルギー供給100%。」


「生態反応問題なし。」


「アーム及びレッグの稼働を確認。」


「姿勢制御良し。」


「紫電ZERO起動確認。いつでもいけます!」



俺達は航空自衛隊の滑走路上にいた。

至る所にMEX職員が精密機器を操作しているのが見える。


その作業の中心に桜月ちゃんがいる。彼女は今ポニーテール姿で全身に紫色のボディースーツを着ている。

毎回作戦中にキャサリンが着ている戦闘服に似ているが、全くの別物だと聞いている。なんでも、極小の精密機械が至る所に埋め込まれており、装着者の生命維持や防御及び外部に取り付けるパーツに対応できる作りになっているとか。

どっかの特撮番組に出てくる戦隊服に見えなくもないが、俺的にはむしろボディーラインの方が気になった。キャサリンほどではないが、桜月ちゃんもスタイルは良く和風美人を思わせる容姿だった。

俺は心の中でこのスーツの制作者にグッジョブを送ることにする。

そんな桜月ちゃんの両手両足にはゴツい機械の手足が装着していた。ベルトもしており、腰もしくはお尻に近い部分では推進器のようなものが見える。



・・・・どっかのアニメでもあったような。こう、パワードスーツを装着した少女が飛び回るようなヤツ・・・・ま、いっか。



そんなこんなんで俺やキャサリンなどが見守る中このパワードスーツ、『紫電ZERO』の起動実験が始まる。



「ではこれより紫電ZEROの起動実験を開始します。白雪ちゃんいい?」


「問題ない。」



宇野さんが実験の開始を宣言し、桜月ちゃんが返事をする。

実験はまず簡単な両腕や指の操作から始まって、陸上の二足歩行へと進行する。桜月ちゃんの表情を見るに未だに負担はないようだ。

実験前に桜月ちゃんの脳から発する電気信号をエネルギー源にすると聞いたときはどうかと思ったが、余計な心配はいらなかったかもしれない。



「あっ!」



俺の思考がフラグになったのか、桜月ちゃんが後ろ手に倒れる。

しかし尻餅をつく前にフワッと風が巻き起こり、浮く(・・)

腰に付いた推進器が働いたようだ。

そういえば、両足にも推進器が付いているのも説明があったのを思い出す。



「白雪ちゃん大丈夫!?」


「あぁ、無事だ。問題ない。」



宇野さんが心配して聞いてくるが、桜月ちゃんは冷や汗をかきながらも冷静に答える。



「とりあえず、推進器のテストも良好というわけね。」


「そのようだな。このまま続けるか?」


「オーケー。じゃ次は思いっきり飛んでみよう!」


「飛ぶだと?」



どうやら実験はこのまま進むようだが、『飛ぶ』ってまさか・・・・。



もしかして桜月ちゃんはリアル『飛行少女』なのか!?


美少女で超能力者で鋼鉄の処女。おまけに飛行少女か。


なんでもありだな、オイ。


すごい子と恋人になったのものだ・・・・。



「白雪ちゃん、あなたが装着したパーツを浮かすイメージをすれば、論理的には空を飛ぶことが可能よ。」


「イメージ・・・・。」


「そう。全てはあなた自身のイメージ力が大事。あなたの力が増せばパーツを装着せずに飛ぶことだって可能になるわ。」


「飛ぶ・・・・。」


「さぁ、飛びなさい!」


「ワタシはぁ、飛ぶぅ!!」



瞬間、音もなく桜月ちゃんが大空へ飛び上がった。

彼女は空高くから地上を見下ろして言う。



「キレイ。」



その場にいた全ての人が桜月ちゃんを見上げて驚愕していた。

古来より人類の夢だった『空を飛ぶ』のをこの少女がやってのけたのだ。ある者は人類の次なる可能性を、ある者は単純に戦力アップを喜ぶ。

また、ある者はヲタク魂を刺激されて叫び声を上げる。

ちなみに俺は自分のことのようにさり気なく胸を張っていた。


そうしたら桜月ちゃんは突然急降下する。



「白雪ちゃん!」


「問題ない!」



宇野さんの心配をよそに、桜月ちゃんは降下中に急旋回を繰り返しながら周りを飛び回る。



「見ろ!ワタシは飛んでいるぞォ!!」


「まったく、心配して損したわ。記録よろしくね?」


「ハッ!」



空を飛び回ってはしゃぐ桜月ちゃんを見て宇野さんは呆れ、すかさず部下に指示をする。

一時はどうなることかと思ったが順調にいったようだ。


突然キャサリンが俺の方へ近づき声をかける。



「・・・・どう、アンタの彼女は?」


「俺としても鼻が高いよ。」


「心にもないことを。」


「・・・・」



正直、桜月ちゃんがここまでスゴいとは俺も思わなかった。恋人になったのも、キャサリンの嫉妬を扇ごうと思ってなったようなものだ。

でも、桜月ちゃんがここまでスゴいなら、もう少し真剣に彼女を俺のものにするよう画策するのも悪くないと思うはじめる。



「ヘタにサツキさんを傷つけたら許さないから。」



俺の考えを読んだのか、キャサリンが殺気を込めて警告してくる。



相変わらず勘の良いことで。



そして俺はふと疑問に思ったことを聞く。



「そういえば俺が超能力に目覚めたのって、結局桜月ちゃんが原因ってホント?」


「えぇ。アンタ達が同じタイミングで転校したことで、サツキさんの脳波が何らかの理由でアンタの脳波と同調した。それが原因でアンタの能力が目覚めた。」


「そして桜月ちゃんと俺が同じクラスになったため、反応が分裂したことに気付かなかったと。」


「頭痛が超能力の目覚の兆候だと聞いたとき、私はソレっぽい症状の生徒を探し始めた。そしてアンタに行き着いたわけ。」


「へぇ。じゃあ桜月ちゃんには既に聞いたの?」


「彼女にはそういった症状はなかった。けど、今に思えば私達は認識違いをしていたんだ。」


「ドユコト?」


「私達は過去の標準の数値(・・・・・)を示した例に沿って対応した。彼女の数値は歴代最高。つまり過去の例には当てはまらない。頭痛が起こらない可能性を見落としていた。」



なるほどな。



今までの常識に捕らわれすぎて、常識外の可能性を考えなかったと。

その結果ハズレの俺に行き着き、アタリである桜月ちゃんは長い間怖い思いをしたということだ。



結局俺はただの巻き込まれか・・・・。


でもそのおかげでMEXに入ったから、ある意味結果オーライ?



そして実験はそろそろ大詰めを迎えようとしていた。



◇ ◇ ◇



ワタシは今空を飛んでいる。


そもそもこの実験に参加したのもただの暇つぶし程度のものだった。


MEXには入ったが何をすればいいのかが解らなかった。


そんな時にワタシ専用の装備の実験をすることになった。


でもまさかワタシが空を飛ぶとは思わなかった。


なんとなくイメージすれば良いと言われたら簡単にできた。


しばらくヤミツキになるくらいに飛び回るとふとある光景を目にする。


ワタシの恋人になったハズのきょ、じゃなくてフクオがキャサリンと話していた。


べ、別にワタシはヤツのことが特別好きとは言えないが、そっちから告白しておいて別の女と親密になるのはいかがかと思う。


たしかに、職務上は上司にあたる女だからワタシも大きなことは言えないが、ちょっとムカついてきた。



「・・・・今から火器管制の実験に入っても良いか?」


「白雪ちゃん?えぇ、いいわよ。みんなスタンバって!」


「ハッ!」



ワタシのほうから宇野に提案すると、了承し部下に指示を出す。


大人気ないかもしれないが、ワタシの力をフクオに見せ付けなければならない。


ワタシは静かに地面に降り立つ。


そして構えをとり、両手を上下に向かい合わせて集中する。


たしか、ワタシの脳の電気信号を利用すれば手に膨大な電気を集めて的に照射することができるんだったな?


ならもっと集中だ!



「白雪ちゃん!?どうしたの!?普通に撃つだけでいいのよ!?!?」



わかっている!


それでも、彼氏の、ワタシの初めての彼氏が見ている前で無様は晒せない!!



「主任!これ以上は機械が持ちません!!」



力みすぎたか?なら放とう。


ワタシは宇野が準備した的に狙いを定める。


くらえ!



「奥義!波動純恋破(はどうじゅんれんぱ)ッ!!!!」



手から放った光線が的を飲み込み、閃光と騒音と共に大爆発する。


ふぅーっ・・・・


これがアタシの全力だ。


フクオはみていただろうか?


・・・・うん。振り返るとフクオが感心したような面をしていた。


さてはワタシに惚れ直したか?



◇◇ ◇



桜月ちゃん放った光線が宇野さんが準備した的を粉々に破壊した。

その光景を見た者達の大半は驚愕していた。想像以上の力だと。

俺自信は驚愕した後すぐに恐怖心が湧いた。



下手したら殺される。いやマジで。



桜月ちゃんが俺の方を向いた途端、俺の体は硬直した。

彼女は不敵に笑っていた。それがどんな意味をしているのか解らなかった。

俺は今どんな顔をしているのだろうか?

考える余裕を俺は持っていなかった。



決めた・・・・。



白雪桜月をダシに使うのはもうやめよう。彼女をなるべく怒らせずに別れを切り出そう。



でないと俺は間違いなく、死ヌ(・・)



おつかれさまです。


第二ヒロインポジションの白雪桜月ちゃんを中心とした話でした。


次回もお楽しみに。

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