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第四話

 初めてあの風変りな世界に足を踏み入れた日の翌日の夕方、シロはさっそくガラクタたちのもとを訪れた。

 朝、前日に起こった出来事で頭を一杯にしながら登校すると、教室の前で真理恵たちと鉢合わせた。真理恵たちはおそらく、ひょっとするとシロは井戸の底に落ちて死んでしまったかもしれないと一晩不安に駆られていたのだろう、ぴんぴんとした様子で現れたシロの姿を見て、ほっと安堵の表情を見せた。と、それも束の間、穢れた中でもまだかろうじて残っていた中学生たちの一般的良心の表情は消え、瞬く間に、安心のもとに復権を得た意地の悪いいじめっ子の嘲笑いに変わった。

 シロが件のハンカチを持っていないことを見て取ると、真理恵はこう言った。

「あら、結局下まで行かなかったのね。さすがの鵜代も、怖くなっちゃったのね」

 シロは反論したかったが、社長との約束が頭をよぎり、思いとどまった。真理恵の言う通り下には下りなかったということにしておいたほうが、地下室の秘密を守るには好都合だと考えたのである。本当は、前日の素晴らしい出会いについて誰彼構わず自慢したい気持ちでいっぱいだったが、唇を噛んで胸の内に押しとどめ、真理恵には短く謝罪をして済ませた。

 そんな悔しい思いも、下校時間が近づくにつれ、また愉快な連中に会えるというわくわくとした気持ちに変わっていった。六限目の授業の終わりを告げるチャイムが鳴るやいなや、もうこれ以上待てないとばかりに、シロは校舎を飛び出し、あの井戸のある洋館へ走った。

 井戸の長い梯子をせかせかと下り、大部屋に出ると、その入り口のそばで昨日のガラクタたちが集まっていた。ひょっとすると、一晩中そこでシロを待っていたのかもしれない。ガラクタたちは満面の笑みを浮かべたシロの姿を見るなり、押し倒さんばかりに一斉に抱きついた。

「心配してたんだぜ!」

「社長のお叱りは大丈夫だったかい?」

「もう戻って来ないかと思ったであります!」

「また会えてオイラ、嬉しい!」

 バシャリ、バシャリ、バシャリ。

 シロも思いっきり、ガラクタたちを抱きしめ返した……

 ひとしきり再会の喜びを語り合うと、水っぽい感動の場面は素早くシャットアウトされ、彼らの心は子どもじみた遊びのモードに切り替わった。

「舞台のほうに行こうよ」

「おう、アドルフがどんなかわいそうな姿になってるか見てやろうぜ」

 そう言うと、テトラは愉快極まりないというふうにくつくつくつと笑った。

 ひとりと四体は、クリストーナの居る舞台のほうへ向かった。

 グランドピアノの黒いボディの輪郭が確認できるくらいの位置まで来ると、シロたちは立ち止まり、怖さ半分面白半分でそっと様子を覗った。だが、クリストーナはもはや雷を落としてはいなかった。鍵盤ひとつ鳴らさず、眠っているかのように静かだ。

 どこかにぺちゃんこになったアドルフの姿を見つけようと、いたずら連中は、再び前に歩き出した。ゆっくりと舞台の周りを巡る。すると、ふいにクリストーナの黒い足の後ろで、きらりと金色がきらめいた。そこにはアドルフが居て、身を寄せ合うようにクリストーナの足に寄りかかっていた。

 遠目で見たときは眠っているように見えた楽器たちだが、耳を澄ますと、ふたりのささやき合う声が聞こえた。

「ほんと、きみって世界一美しいよ、クリストーナ……」

「まあダーリンってば、あなたこそ宇宙一素敵な紳士よ……」

 ふたりはお互いの撫でるような音を狭い空間にとろけ合わせていた。

 あの大喧嘩やいずこに!

 ガラクタたちは顔を見合わせ、肩をすくめた。

「まったく、つまんねえ奴らだな!」

 ニコラはしかめっつらでそうこぼした。

「行こうぜ、見てられねえ」

 期待外れの場面にがっかりしたいたずら連中は、さっさとその場を去った。

 シロとガラクタたちは、舞台から少し離れたところにある、小物の積まれた山のふもとに集まった。

 テトラは、小山を手で指しながらシロに向かって説明した。

「ここには、俺たちのお気に入りのおもちゃを集めてあるんだ」

 シロは、小山の周りを巡って、それがどんな物質で構成されているのかを視察した。なるほどそこには、ぬいぐるみやおままごとの鍋やモデルガンのように申し分なくおもちゃと言えるものから、ただのパイプや扇風機の羽根や破れたズボンのように、どう遊べばよいのかよくわからないものまで、ありとあらゆる暇つぶしの友が揃っていた。

 ニコラは誇らしげに口の上を指でこすった。

「いい感じだろ?なんでもあるから、好きなように遊んでいいよ」

 それを聞くとシロは、目を輝かして小山の傍にかがんだ。山の中から、ボタンのところどころ外れたテレビリモコンを拾い上げる。ぐるぐると回して眺めながら、尋ねた。

「これは、どうやって遊ぶの?」

「それは、手乗り迷路だよ」

 テトラが答えた。そして、自分も小山に手を突っ込んでビスケットの空き缶を拾い上げ、中から赤いビースをひとつ取り出した。そのごく小さな球体を、リモコンの電源ボタンと音声切換ボタンのあいだにそっと据える。

「ほら、こうやって、黄色のところまで行けたらゴールだよ」

 シロはリモコンを傾けた。ビーズは突き出たボタンのあいだをころころと順調に転がって行ったが、途中で、かつて6と書いたボタンが存在していたであろう箇所の窪地にはまってしまった。

 ニコラが嬉しそうに叫んだ。

「あっはっはっは、ゲームオーバーだ!」

他のガラクタたちも、何がそんなに可笑しいのか、とにかくげらげらと笑った。シロも釣られて、たまらなく楽しい気持ちになって笑った。

それからシロは、小山から謎のおもちゃを引っ張り出しては、次々とニコラとテトラに遊び方を尋ねた。常識外れの双子は、どんなものだっておもちゃにしてしまった。そのほとんどは、本来の使い方を逸脱していた。例えば、おままごとのお野菜はパズル遊びのピースだったし、野球のミットはもぐら叩きのハンマーだった。ニコラとテトラは交互にもぐら役になって、狂ったように叩き合いを楽しんだ。シロもその楽しみに加わった。人形たちと違って〝痛い〟という感覚を知っているシロは、もぐら役に関しては辞退させてもらったが。

 ひとしきり叩き合って飽きて来ると、ニコラはミットを投げ捨てた。

「次は何をしようかな?」

 頭を捻りながら、ぶたれた拍子に飛び出して宙を舞っていた自分の綿を摘まみ、縫い目の隙間に押し戻す。

「ねえ、これで何かできないでありますか?」

 そう言ってぴょんぴょん近づいて来たのは、頭の上に器用に薄いケースのようなものを乗せたマカだった。

「この前、奥のほうで見つけて取って来ておいたであります。きらきらして、とても綺麗でありますよ」

 テトラはケースを受け取ると、ぱかりと蓋を開けた。中には薄い円盤(シロにはすぐにそれがDVDだとわかった)が入っていた。めきっと音を立てて円盤を取り出す。

「ほんとだ、きらきらしてる」

「この形、すごく投げやすそうじゃないか?」

「アドルフにぶっつけてやろうか」

 だが、悪童どもが話し合うのを横から覗き込んでいたシロは、DVDの盤面を見てはっとした。

「待って!投げちゃ駄目」

 そう叫んで、テトラの手からDVDをひったくる。

 その盤面にはひょうきんな緑の装飾文字で次のように書かれていた。


"若手芸人列伝2"


テトラは訝しげにシロのほうを見た。

「おい、どうしたんだよ、シロ?」

 シロは興奮気味に答えた。

「これ、お笑いのDVDだよ」

「オワライ?ディーブイディー?なんのことだ?」

「人間がね、他の人を笑わせるためにいろんなおもしろいことをするの」

とにかく愉快であればなんでもありのニコラとテトラは、"おもしろい"という言葉にぴくりと反応した。

「へえ、人間、いいことするじゃん」

「これ、まだ再生できるかもしれない」

 シロはDVDを回し眺めた。ケースはカバーが外れぼろぼろになっていたが、ディスクのほうは奇跡的に乱暴な人形どもの遊びの手から逃れ、ほとんど無傷で残っていた。

 ここに来る途中で、どれかのガラクタ山の上にテレビが積まれているのを見かけたことを、シロは思い出した。これだけ物が溢れ返っていれば、DVDの再生機もどこかで見つけられるだろう。

「テレビと再生機があれば、その"オワライ"を画面に映して見れるんだよ。ねえ、みんなでこのDVD見てみようよ」

 ガラクタたちは、シロの説明をいまいち理解できないようだった。

 ニコラは尋ねた。

「よくわかんねえが、それをやるとおもしろいんだな?」

「うん、うん、きっとおもしろいよ」

 シロは頻りに頷きながら、自信たっぷりにそう言った。

ニコラとテトラは顔を見合わせた。そしてふいにシロのほうを向くと、にやっと笑った。

「よっしゃ、じゃあ協力してやろう」

 シロとガラクタたちはテレビと再生機を探しに乗り出した。

 それらはいとも簡単に見つかった。テレビは、おもちゃの小山からふたつ隣のガラクタ山のてっぺん付近に、二十四インチの大きさのものが危ういバランスで乗っかっていた。ニコラとテトラが山に登り、慎重にそのテレビを下まで運んだ。再生機は、もう少し遠くで、アニメか何かのキャラクターのフィギュアを踏み潰して骨折の憂き目に合わせているところを発見した。いずれも古くて汚れていたが、まだかろうじて使えそうな代物だった。

 ガラクタたちは獲得物を抱えて、小山のところまで戻って来た。

「準備するから、ちょっと待ってね」

 シロは、テレビと再生機とを地面に並べて、汚れを払い、コードで繋ぎ始めた。

 その動作は、軽やかでわくわくしていた。元来お笑い好きのシロは、その文化を彼女の新しい仲間に教えてやれることが嬉しかったのである。何が起こるやらわかっていないガラクタたちまでもが、彼女から漏れ出る興奮に釣られて、まだ見ぬ喜劇の開始をうきうきと待っていた。

「いったい何が起こるんだ?」

「人間もおもしろいことが好きなんだな」

「社長を見ていても、そんなふうには思えないであります」

「本当に!いつも不機嫌そうで」

「社長は"オワライ"の話なんか一度もしたことなかったよ」

「ああ、楽しみ。シロ、まだかい?」

「もう少し……」

 だが、ほとんど準備を終えたところで、あることに思い当たって「あっ」と声をあげた。

「コンセントが無い……」

 いちばん肝心な電源のことを忘れていたのである。

 明らかに何か問題が発生したことを示唆するつぶやき声を聞いて、ニコラは、顔をしかめながらシロの手元を覗き込んだ。

「なんだ、まだ何か必要なのか?」

 シロは申し訳なさげに頷いた。

「うん。コンセントが無いと、使えないんだ」

 そして、天井を見上げる。

 高い天井には、ところどころ照明が埋まっている。この地下空間にも電気は来ているはずだ。洞窟のごつごつした岩肌に、普段見慣れ過ぎて至上の有難みを忘れているあの魅力的なふたつの穴がある光景はなかなか想像しづらいが、絶対に無いとは言い切れない。

「何を探せばいい?」

 テトラが尋ねた。

 シロはテレビの電源コードのプラグを持ち上げて、ふたつの灰色の刃を双子に見せた。

「これがぴったりはまる穴を探して」

 ニコラはプラグを受け取った。

「穴を探せだって?おかしな注文だぜ。まったく、もう少しだって言ったのに」

 思いがけず仕事を増やされて不機嫌そうなニコラの肩を、テトラがなだめるようにぽんぽんと叩いた。

「まあまあ、いいじゃないか。探してやろうぜ」

「仕方ないなあ」

「こりゃ大変そうだから、手分けしよう。俺とニコラで向こうを探すから、シロたちは反対側を探してくれ」

 シロはテトラの提案に乗った。

 ニコラとテトラはプラグを握って、コンセントを探しに去って行った。

 シロはマカとミスター・パパラッチのほうに向き直り、腰に両手を当てて、号令をかけるように言った。

「さあ、私たちもあっちを探そうか」

「了解であります!」

「わぁい、宝探しだ!」

 不機嫌なニコラと打って変わって、こちらはどこまでもお気楽だった。

 三人は宝探しを始めた。とは言っても、この岩とガラクタばかりの広大な洞窟のどこに行けばコンセントが見つかるのか、皆目見当もつかなかった。まだ壁際のほうが可能性があると見て、シロは洞窟の端まで行き壁に沿って探すことにした。

 マカとミスター・パパラッチは、捜索隊員としてはまったくの役立たずだった。というのも、落ち着きの無い彼らは、ひっきりなしにどちらかが引き金を引いては無垢な幼いふざけ合いを始め、そうなるともう周りには全然注意をやらないのである。そもそも、自分たちが何を探しているのかさえ、あまり理解していないようだった。シロは子どもたちがきゃあきゃあ騒ぐのを背後に聞きながら、ひとりでコンセントを探した。

 シロが壁際にしゃがんで穴を探していると、マカが甲高い声をあげながらその背中に飛びついた。

「シロさん、パパラッチってば酷いであります!」

「どうしたの?」

「"脇見"をして歩くから、二度も自分にぶつかったであります」

 シロは背中に手を伸ばしてマカを引っ張り、腕の中に抱えると、笑いながら赤ちゃんをあやすようになだめた。

「まあまあ、許してあげなよ。ぶつかったくらい」

「そうだよ!かわいいぬいぐるみが転がってたから、撮影しようと思って、ちょっとそっちに気がいっちゃっただけじゃん」

 ミスター・パパラッチが遠くから口を挟んだ。

「いいや、パパラッチはいっつも不注意過ぎるのであります。ちょっとの脇見だって、重大な事故に繋がるかもしれないであります!」

 そう言って、"交通安全強化月間"と印刷された紙面をべこべこと鳴らす。

 それはふたりにとっては極めて重大な議論らしいが、シロにとっては思わず微笑を漏らしてしまうようなたわいのないやりとりであった。

 シロはマカを地面に降ろそうとして、ふと、その真っ白な裏面に何か糸くずの群れのようなものが付いているのに気がついた。目を凝らすと、それは黒いインクで書かれた文字だった。


 小松菜 4束

 マカロニ 2袋

 かつお節 3パック

 蜂蜜 3瓶

 ルッコラ 1個

 茄子 1個


「シロさん、どうかしたでありますか?」

 シロが自分を放そうとしないので、マカは尋ねた。

「マカ、この買い物メモ、社長が書いたの?」

「買い物メモ?」

「背中に、何か書いてあるよ」

「ああ、それでありますか」

 マカは合点がいったように声をあげた。

「いえ、それは気づいたときからありましたんで誰が書いたのかはわかりませんね……今のところ、どうやら"マカロニ"と書いてあるらしいことまでは突き止めたのですが」

 先ほどDVDの盤面についても同様のことが起こったが、どうやら、ガラクタたちは文字を、殊に漢字を読むのが苦手らしい。

 この生真面目なポスターは、背中に間の抜けるような買い物メモが書かれていながら、その意味につゆ気づいていないのだと考えると、シロは可笑しく感じて、一層優しい微笑を漏らした。

 ミスター・パパラッチが遠くで、ぴょんぴょん跳ねながら叫んだ。

「ずるいぞ、マカ、シロに守ってもらって。この弱虫!」

「なんですって!」

 マカは怒って、シロの腕から飛び出し、ミスター・パパラッチのほうへ突進した。ミスター・パパラッチは、挑発のフラッシュをバシャリと焚くと、ストラップをしならせて逃げ出した。

「あ、ふたりとも、待ってよ!」

 シロは叫んだ。だが、罪の無い追いかけっこを始めたガラクタの子どもたちにはもはや聞く耳は無い。ふたりは大声をあげながら駆けて行き、あっというまに、どこかへ消えてしまった。

「やれやれ」

 シロはひとり肩をすくめた。

 ひとりになると、洞窟の中はいやに静かだった。もうずいぶん壁際を歩いたが、現代の果実を供給する優秀な双口はいまだ見当たらない。広げればどこかの惑星の掛布団にでもなりそうなくらい広大な壁面のすべてを調べていくことは、途方も無い作業であった。

 シロは半ば宝探しを諦めて壁際を離れ、ふらふらと散歩し始めた。舞台がある場所よりもかなり奥のほうまで来ていた。とは言っても、やはり目に入る景色は似たようなガラクタの山ばかりだが。

 しばらく、ひょっとすると電源があるやもしれぬという思いから、一応地面に目をやりながら歩いていた。だが、ふと視界の上の隅に何かの気配を感じて、ぱっと顔を上げた。

 シロは目を丸くした。

 高いガラクタ山のてっぺんに、女性が腰かけている。遠くからでは顔がよく見えないが、真っ白なワンピースに、ブロンドの長髪がまぶしく輝いて、汚れた鈍い色合いのガラクタの中に居ると、実に目立って見えた。うつむいて、膝の上に乗せた何かをじっと眺めている。シロの存在には気づいていないようだ。

 はて、ここには自分と社長以外の人間は居ないはずである。シロは疑問に頭を捻った。彼女の傍まで、山を登ってみることにした。

 足場の悪いガラクタ山を登るのはひと苦労である。シロは持ち前の運動神経で上手くバランスを取りながら、斜面を上がった。途中で見上げると、女性の、ひどく華奢で、病的に白い裸足の両脚がちらと目に入った。

 もう頂上まであと二メートルというところまで来たときに、足もとの空き缶を蹴ってしまい、空き缶はガランガランと派手な音を立てて斜面を転がって行った。シロは、静けさを野蛮な音で破ってしまったことに思わず気まずさを感じ、顔を上げた。夢中で何かを眺めていた女性も、その音に驚いて、はっとシロのほうに顔を向けた。ふたりの視線がかち合った。

 彫りの美しい顔に並んだふたつの大きな瞳には、黒目が無く、ただただ真っ白な表面が広がっていた。

「わあ、うるさくしてごめんなさい」

 シロは、いたずらっ子が赦しを請うときの癖で、あまり反省しているようには見えない皮肉な笑みを浮かべながら言った。

「いえ、構いませんよ……」

 美しいマネキンはか細い声でそう答えた。

 シロは残りの斜面をえっちらおっちらと登り、マネキンの隣に腰かけた。生気の無い彼女の白いなめらかな肌は、いかにも合成樹脂であり、ほのかに照明の光を反射していた。

 マネキンは、頭を傾けて人工のブロンドを垂らしながら、真っ白な瞳でじっとシロの顔を見つめた。

「あなた、もしかして……シロさんじゃありませんか」

「あれ、知ってくれてるの?」

「ええ、アドルフさんから聞きました。昨日、元気な人間のお嬢さんがここに来たって」

 そのか細い声は、ずっとどこか自信なさげだった。

 シロは喜んで謝辞を述べた。

「あはは、知っててくれてありがとう。あなたはなんていうの?」

「わ、私ですか?私はハマサキといいます」

 自分の名前を言うことさえ恥ずかしいようだった。

「そう、ハマサキさんっていうんだ。私、きっとこれからもここにお邪魔すると思うから、仲良くしてね、ハマサキさん」

「ええ……」

「この洞窟すっごく広いね。ハマサキさんは、こんなところで何をしてたの?」

「い、いえ、特に何も。ぼうっとしていただけです」

 そう言うとハマサキは、落ち着きなく、ちらと自分の膝の上に目をやった。

 そこには、茶色い縁の付いた丸い掛け時計が乗っていた。例に漏れず古い品ではあるものの、黒い秒針はちゃんと動いている。洞窟の中に居ると今が何時頃かまったく見当がつかないが、今日井戸を下りたときの夕暮れ空と、今の腹の空き具合から推して、どうやらこの文字盤はおおよそ正しい時刻を示しているようだ。短針はもうじき六時の角度に達しようとしていた。

「何かを待ってるの?」

 シロは尋ねた。

 すると、ハマサキは慌てたように時計を立てて、シロから文字盤を隠した。

「い、い、い、いえ、そういうわけでは……」

 シロは目を丸くしてハマサキの樹脂の頬を見つめた。

 そのとき、山のふもとのほうから、馴染みのあるやかましい声が聞こえてきた。

「おおい、シロ、これはどうかな?」

 身を乗り出して下を覗き込むと、ニコラとテトラがこちらを見上げていた。ニコラは頻りに、左手に持った何かに、右手でプラグを差し込む動作をして見せている。その後ろには、いつのまに合流したのか、マカとミスター・パパラッチも並んでいた。

 シロは目を凝らした。

「わかんない。ここまで登って来て」

「おうよ」

 ガラクタたちはガチャガチャと斜面を踏んで、てっぺんで並んで座っているシロとハマサキの傍までやって来た。

「これがシロの欲しがってたやつじゃないか?」

 そう言ってニコラは、左手に持っていたブツをシロに差し出した。シロはそれを受け取りながら、可笑しくて、大声をあげて笑った。

「違うよお。これはコンセントじゃないよ」

 それは、プラスチック製の豚の貯金箱だった。

「なんでだよ、ぴったりはまるぜ」

 ニコラは不満げに叫ぶと、豚をひったくってプラグを鼻の穴に突っ込んだ。確かに、奇跡的にふたつの剣は豚の鼻孔にぴったりと収まった。

 シロはますます腹を抱えてげらげら笑った。

「あっはっは、確かにぴったりだけど、豚からじゃ電気は貰えないよ」

「くそっ。わけわかんねえ」

 ニコラは口をひん曲げて、豚を乱暴に放り投げた。豚はサーカス団員よろしく華麗に坂道を転がり落ちて行った。

 テトラは豚を見送りながら、やれやれと肩をすくめた。

「しっかし、他にぴったりはまる穴なんて見つからなかったぜ。そんな穴、無いんじゃないの」

「あーあ、オイラもう疲れちゃったよ」

 ほとんど働いていないくせにそう文句を垂れると、ミスター・パパラッチはゴロリと斜面に転がった。

「もう、やめだ、やめだ。"オワライ"とやらは気になるが、これ以上よくわからねえものをじりじり探して回るのはうんざりだ。別の遊びをしようぜ!」

 ニコラが両手で天を仰ぎながら叫んだ。

 それを聞いて、先ほどまで笑っていたシロは一転、残念な気持ちに駆られた。せっかく人間の笑いの文化を、新しい最高の仲間たちに教えてやれると思ったのに。だが、これ以上彼らを出口の見えない探索に付き合わせるのも申し訳なかった。

 隣でシロの悲しげな顔を覗っていたハマサキが、おずおずと尋ねた。

「あの、みなさん何か探しているんですか?」

「うん。テレビを見るためのコンセントが欲しいんだけど。ハマサキさんは知ってる?」

 ハマサキは白い唇をわずかに開けて、考え込んだ。だがやがて申し訳なさそうに言った。

「……いいえ、わかりません……。ごめんなさい、お役に立てなくて」

「いいよいいよ、気にしないで」

 その背後にふらふらとニコラがやって来た。

 ニコラはハマサキが掛け時計を大事そうに膝の上に抱えているのを見つけると、いい憂さ晴らしの種を発見したとでもいうように、にんまりと笑った。そして、ハマサキの手からぱっと時計をひったくった。

「あっ」

 ハマサキは弱々しく手を伸ばしたが、ニコラは届かない位置で時計をひらひらさせた。

「おいおい、ハマサキ、また恋わずらいしてるのか?」

 そう言うニコラの表情は、獲物を見つけた猫のような、最高に意地悪いものだった。

 寝っ転がっていたミスター・パパラッチが、ぴょんと起き上がって叫んだ。

「何?恋愛スキャンダル?」

 そしてバシャリと一枚。

 ハマサキは激しい羞恥のために身を縮こませながら、首を横に振った。

「や、やめてください、違いますよ……」

 そのとき。

「おい、おまえら!何揉めてるんだ?」

 みんなは一斉に山のふもとのほうを振り向いた。

「あ、社長」

 あのガラの悪い中年男が、いつのまにかガラクタ山のふもとに居て、こちらを見上げていた。相変わらずふんぞり返った不遜な態度で、眉間にはしわが寄っている。ガラクタたちの中にシロが混じっているのに気づくと、露骨に不愉快そうな目つきでそちらを睨んだ。

「さっそく来てたのか……」

 シロは物理的な位置関係のせいか、些か優越感を抱いて、小さく挨拶の手を振る余裕を見せた。

 社長はニコラに向かって叫んだ。

「ニコラ、おまえまたハマサキをいじめてたんじゃないだろうな?」

 ニコラは白々しく口笛を吹く素振りを見せながら、掛け時計をマネキンの腕の中に押し戻した。

「いやいや、仲良くからかってただけさ」

 ハマサキは時計を取り戻すと、慌てて、顔を半分隠すようにそれを持ち上げた。

 社長はニコラの言葉を疑うように、顔をしかめた。

 テトラが横から、口を挟む。

「まあまあ、社長、そんな顔すんなよ。俺たち、すんごく行儀よく遊んでるぜ。心配要らねえよ」

「そうだそうだ。なーんも悪いことはしてねえぞ」

「とっても仲良くしていたであります!」

「そう、怒らないでよ!」

 ガラクタたちは口々に叫んだ。

 社長はしばらく黙って、わざとらしいお澄ましを見せるガラクタ連中の顔を順繰りに睨んでいた。だが、やがてやれやれとため息をつき、言った。

「ほんと、馬鹿な真似はしないでいてくれるとこっちも安心できるんだがな」

 そして、シロに呼びかける。

「おい、シロ。子どもなんだから、あんまり遅くまで居るんじゃないぞ。心配される前に、さっさと帰れ」

「はあい」

 シロは手を挙げて明るく応答した。

 社長は踵を返した。井戸の外へ帰るようだ。

 だが、社長が背中を向けるやいなや、お澄ましの笑みを見せていたテトラの顔が謀略企む悪魔のそれに変わった。さっと隣のマカの傍にかがんで耳打ちする。

「マカ!」

「アイアイサ」

 マカは背中をぴんと張って応答した。そしてぴょんとひと跳びしたかと思うと、自らの身体を素早く折り畳み、瞬く間に大きな紙飛行機に変身した。

 テトラはマカの身体を掴むと、全身を使って振りかぶり、山の下目がけて勢いよく発射した。

 パルプ製マカ号は、鮮やかに空を切って飛んで行った。そして、まっすぐ社長の後頭部まで辿り着き、射手の腕前や実に見事なりというものだが、その頭に乗った帽子を下からすくうようにひらりと奪い取った。

「あっこらっ」

 社長はびっくりして、頭を抑えながら叫んだ。

 山の上のガラクタたちはその素頓狂な声を聞くと、爆弾が破裂したみたいに一斉に、あはははははと笑った。

マカは帽子を先端に引っ掛けたままさらに飛んで行く。

 ニコラが叫んだ。

「加勢するぞ!」

 そして、ガラクタの中からへこみだらけの自動車のドアを拾い上げると、下り坂に叩きつけ、飛び乗った。テトラとミスター・パパラッチもその後ろに続く。

 三人の乗った橇は、ガラクタのゲレンデを、派手な音を立てながら勢いよく滑り下りて行った。あっというまにふもとに着いたかと思うと、クルーは橇を捨て、勢いそのままに駆け出す。そして、まさしく幼い子どもが鬼ごっこをするときに出す、まったく意味を成さない奇声をあげながら、押しのけるように社長の両脇を通り過ぎ、飛び続けるマカを追って走り去って行った。

 社長はとんでもない悪ガキ連中が駆けて行く背中を見ながら、地団駄を踏んだ。

「ああもう!あいつらは!」

 すべてが、雷鳴のように一瞬のうちに起こったのだった。

 ハマサキとともに山の頂上に取り残されたシロは、半ば笑いながらも、さすがに社長がかわいそうに思えて、声をかけた。

「社長、大丈夫?」

 社長は振り向いた。その顔は怒りでぴくぴくと震えている。

「本当に、こんなことの何が楽しいんだか!」

 そのしわの寄った不機嫌な顔と、髪の乱れてぼさぼさになった惨めな様子が可笑しくて、やっぱりシロは少し笑ってしまった。

 そんなシロの態度を、遠くからながらも雰囲気で察したらしい。社長は不満げに、無礼な子どもをじろりと睨んだ。そしてふいに、ずっと心配そうな表情で社長のことを見つめていたハマサキのほうを振り向いて言った。

「まったく、ハマサキだけだよ、行儀がいいのは。あいつらも見習ってくれりゃいいのに!」

 突然声をかけられたマネキンは、びくっと肩を震わせ、掛け時計を持ち上げてさらに顔を隠した。だが、隣に居るシロには、時計とブロンドの隙間からハマサキの横顔がちらと見えた。その合成樹脂の白い肌が情緒に合わせて色を変えようはずはないが、全体の仕草の甘酸っぱさが、まるでその頬が真っ赤に染まっているかのように思わせた。

「と、とんでもありません……」

 そう答えたが、その消え入りそうな声はおそらく社長には届かなかっただろう。社長は背中を向けると、憤怒で肩をいからせながら、悪ガキ連中の消えたほうへと去って行った。

 社長の姿が見えなくなると、シロは、相変わらず時計を持ち上げて身体を縮こませているマネキンの顔を覗き込んで、尋ねた。

「ハマサキさんは社長のことが好きなの?」

 ハマサキはまたびくっと震えた。

 唇を引き結んで黙ったまま、正面の文字盤をじっと見つめる。時を刻むカチ、カチ、という音が沈黙を埋めた。

 だがやがて、観念したようにぽつりと漏らした。

「……いつも、六時頃にここに様子を見に来るんです」

 シロは、尻を少し持ち上げ、馴れ馴れしいぐらいにハマサキに自分の身体を近寄せて座り直した。周りに誰も居ないというのに、内証話よろしく声を低くして尋ねる。

「ね、ね、どうして好きなの?」

 ハマサキは困ったような表情で、自分の肩の上に乗せられた、シロの興味津々の顔を見つめ返した。

 ずうずうしい女子中学生は、答えを待たずに続けた。

「どうして?だって、あんなにいつも不機嫌で、怒ってばっかりなんだよ」

「それは、ニコラさんとテトラさんがあんまり酷いいたずらをするから……」

 ハマサキは、弱々しく擁護した。

 構わずシロは畳みかける。

「それに、みんなのことを、この洞窟に閉じ込めてるんだよ。ニコラもテトラも、ハマサキさんのことも。この洞窟の外にはもっとずっと広くて、おもしろい世界があるのに。酷いと思わない?」

「そ、それはきっと、私たちを守ってくれてるんだと思います。外の世界のことはよくわからないけれど……きっと、危ない場所だから、私たちが出て行かないようにしているんだと思います……」

 弱々しいが、必死で擁護するハマサキを、シロは納得のいかない顔で見つめた。口を尖らせてつぶやく。

「ううん、そうなのかなあ。私にはやっぱり、あんまりいい人だとは思えないな」

 マネキンはブロンドの頭をぶんぶんと横に振った。

「いいえ、いいえ、あの人は優しい人です。私たちのことを、心から大切にしてくれています。あの瞳を見てください」

「瞳?」

 シロは、記憶の中の社長の目つきを頭に思い描いた。残念ながら、見ている人に心の安らぎを与えることは到底できっこなさそうな、不機嫌な、ガラの悪い垂れ目しか思い浮かばなかった。

 だがハマサキは、意図せず慕情が溢れ出たかのように微笑を湛えて言った。

「あの、黒くて丸い瞳……心の美しい人なんだと思います」

 そして、自分の空虚な瞳をぱちぱちと瞬かせる。

 自分には黒目が無いから、人間の黒目がもの珍しくて羨ましいというだけのことではないのか……そんな考えがシロの頭をよぎったが、口には出さなかった。

 ハマサキは掛け時計を脇に置いて、両脚を伸ばし、着ているワンピースを広げて見せた。

「これは、社長がくれたんですよ」

「へえ!」

 丈の長い真っ白なワンピースは、ほとんど凝った装飾が付いておらず、極限までシンプルな作りで、それゆえに美しく、ハマサキによく似合っていた。マネキンなのだから、たいていの服が似合って当然なのだが、それにしても、この衣装を着せるために作られたマネキンであるかのようによく似合っていた。

「すごく似合ってるね。社長、自分はあんなにだらしないのに、意外とセンスあるんだね」

「ええ、とても気に入っています」

 ハマサキは、なめらかな生地を慈しむように撫でた。そしてふいに、恥ずかしそうにもじもじし始めた。

「どうしたの?」

 シロが尋ねる。

「いえ、なんにも」

「なんにもないことないよ」

 ずぶとい中学生は引かなかった。

 ハマサキは、目をそらしながら、遠慮がちに言った。

「あの、初めてこのワンピースを着たとき、社長が言ってくれたんです……"綺麗だよ"って」

 そしてまた(全体の雰囲気によって)赤面した。

 なんだかあんまりいじらしいので、シロは思わず感心のため息をついてしまった。この純朴なマネキンの意志は固く、何を言ってもおのれの悪趣味を改めることは無さそうなので、社長に対する批判はもう慎んであげることにした。

「社長に好きってもう伝えたの?」

 シロが尋ねると、ハマサキは驚いたようにぶんぶんと首を振った。

「と、と、とんでもない。そんなこと言えません」

「伝えないの?好きって言ったら、向こうも好きになってくれるかもしれないよ」

「社長が?私を?……そんな、まさか……」

「こんな素敵なプレゼントをくれるくらいだから、脈はあると思うけど」

「そ、そうですか?」

 うっすらとした期待に瞳をぱちくりとさせる。だが、すぐに憂鬱に囚われうなだれた。

「いえ、でも、駄目です……私、社長を前にすると、ほとんど喋れなくなってしまうんです……そんな、好きだなんて、無理……」

「ううん、そっかあ。じゃあどうしたらいいかなあ」

 シロは頭を傾けて、考えを巡らせた。そして、何かを思いついたように、ぽんと手のひらを打ち合わせた。

「あ、そうだ。言うのが無理なら、ラブレターを書いたら?」

「ラブレター?」

 無垢な人形の頭上にはハテナが浮かんでいる。

「お手紙だよ。愛を伝えるお手紙」

 そう言うと、シロは身体を捻って辺りを見回した。ちょうど斜め後ろにクッキーの空き箱が転がっているのを見つけると、拾い上げる。

 空き箱を膝の上に乗せ、弾むようなかわいい字体で書かれた商品名を指でなぞった。

「ほら、文字だよ。こんなふうに紙に文字で好きですって書いて、渡すの。手紙を渡すのだったら、できそうでしょ」

「ええ、それなら……」

 ハマサキは、空き箱を乱暴に叩くシロの指先と、自信満々な顔とを交互に見やりながらつぶやいた。

「その、ラブレターというのを書いたら、社長に私の気持ちが伝わるんですか」

「うん、伝わると思う」

「そしたら、社長は……わ、私のことを好きになってくれますか」

「うん、うん。きっと」

 励ますように、何度も頷く。

 ブロンドのマネキンは斜に目をやってじっと考え込んだ。そして、ふいに顔をシロのほうへ向けた。

「わ、私ラブレターを書きたい」

 そう宣言した表情には、固い決意めいたものが漂っていた。だが、すぐに不安げに眉をひそめた。

「でも、私、文字なんて書いたことがなくって……書けるかどうかわかりません。あの、シロさん、よかったら、私に文字の書き方を教えてくれませんか?」

 そう言って、シロの手を取り、哀願するように自分の手を重ねた。

 シロは、自分の手に重ねられたハマサキの冷たくなめらかな手に目をやった。その白い手は人間のそれとほとんど同じ形をしていたが、人差し指から小指までの四本の指がお互い樹脂でくっついて、あひるの嘴のようになっていた。とても、ペンを握るにふさわしい構造には思えない。

 だが、変人であり変人であるがゆえに利他的な中学生は、躊躇なく答えた。

「うん、もちろんいいよ。教えてあげる」

 無垢の喜びがさっとハマサキの顔を美しく飾る。

「ああ、ありがとうございます、シロさん。ありがとう、本当に……」

 相手の柔らかい手を、ぎゅっと握った。

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