表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深海の星空  作者: ふあ
邂逅
4/63

邂逅 3

「おはよ」

 眠れない少女が、一層眠れなくなる缶コーヒーを手にしたまま声をかけると、少年は「おはようございます」と丁寧な言葉で呟いた。俯きがちな視線を新聞受けに向け、さっさと前かごから取り出した新聞を一部突っ込む。まるで、二日前の脅迫文句など忘れてしまったようなその姿を、缶を持った指を軽く振りながら少女は眺めていた。

「あんた、中学何年?」

 紙から手を離し、彼はようやく首を曲げて彼女を視界に捉えた。

「中三です」

 ぽつりと落とされる言葉に、少女は納得して頷く。彼は細身で痩せているが、今年で十五歳だと言われれば、確かにそれ以上にも以下にも見えない。

「じゃあ、私の二つ下なんだ」

 ほんの一瞬だけ、暗い瞳が少女の目を見る。見つめる、というような時間などない、確認するように向けただけだ。

「高校生、なんですか」

「そうよ。私のこといくつだと思ってんの」

 責めたつもりなど彼女にはなかったが、彼は上げかけた視線を再び外してしまった。

「考えたことなくって……」

 ハンドルを握り締める彼が、ごめんなさいと呟いた理由が少女にはわからなかった。

 致命的に会話のキャッチボールが下手な奴だ。人の目すら見やしないで。少女は中身を飲み干した空き缶で軽く塀を叩いた。自転車の軋む音はすぐに聞こえなくなり、時間をかけてようやく手を伸ばした朝日のせいで、夜霧は少しだけ白く染まり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ