第五十七話 オーディション、開始!
入ってきた五人は全員女の子だった。全員水着で、そして貧にゅ……微乳だった。人魚の国だもんね、そりゃ最初から水着審査になるよね。そりゃもう大歓迎なんですけど。
どうしてこう、全員が微乳なんだろう。そういう種族だってことなのかな。
女子がやたら多いのも種族の特徴なんだろうなぁ。うらやましいような、そうでもないような。
貧乳好きには天国のようなところなんだろうけど、あいにく俺はどノーマルなので、色んなタイプがいた方がうれしい。
あー、多分浦島太郎先輩はさぞ貧乳好きでいらっしゃったんだろうなぁ。
真剣な目に厳しい表情のままそんなあほな事を考えていると、ニミュエが候補者達に簡単な流れの説明を終え、とうとう最初の候補者が席を立って一歩前へ出た。
「エントリーナンバー1番、ルサリィです。21歳です。よろしくお願いします!」
ほう。年齢的にはJDか。よいなぁ。「可愛い」と「美人」が良い塩梅にブレンドされているタイプ。
俺、会社では後輩とかいなかったから、こんな新人が入ってきて「せんぱい」とか呼ばれたらもう、お持ち帰りを画策してビンタ食らう事間違いなしだ。くそう。
「完全なる奏唱者様がこんなにお若い方だと知って驚きました。ですからなおさら何かお力になりたいと思っています! 魔操鎧乗りですが、休日はショッピングしたり楽器の練習したりしています。得意な楽器は、琵琶です!」
あ、そうか。俺はついつい前の感覚で年下の女の子だと感じていたが、こっちでは16歳、つまりルサリィは俺より5個上のお姉さんという事になるんだ。年上に甘えるのも悪くないなぁ。でもその場合、やっぱりちょっとお胸は欲しい。惜しい。
「ほう、琵琶を演奏なさるのか」
シェリーの言葉で俺は我に返った。
び、琵琶? あの「耳なし芳一」でおなじみのあれ? 竜宮城という場所には似合うかもしれないけど「人魚」には似合わなすぎるぞ。
「そうですね。一番ポピュラーな、かわりばえのしない楽器ですけど」
そ、そうか。こっちの世界では、人魚の楽器といえば琵琶なのか。俺のいた世界のイメージだと、小さいハープ的なやつ(確か、リラとかライアーとか言うらしい)なんだけどなぁ。
「じゃあまず、その琵琶の演奏をしてみてもらっていいかな?」
俺がポーカーフェイスを崩さずにそう言うと、ルサリィは少し緊張した表情で椅子の後ろに置いていた楽器ケースを開いた。
彼女が取り出した楽器は小型のハープのような楽器。いわゆるリラと酷似していた。あの「ギター一族の先祖の親戚です」感のある琵琶のフォルムではない。
「え、それ、琵琶?」
つい口に出してしまった。
「は、はい。そうですけれど……」
ルサリィは困惑気味でそう答えた。そうなのか。たまたまあっちの世界のリラと同じような楽器が、あっちの世界にある別の楽器名と同じだったというわけか。紛らわしい。
「ごめん、初めて見たもんで……」
「カイ様は、ここ数日より前の記憶をなくしていらっしゃるんですよ」
サヤがすかさず助け舟を出してくれた。さすがサヤ、GJ!
「そうなんですね……」
ルサリィは悲しげな目に畏敬の念を込めて俺を見た。
「奏唱者様という重責の上に、そんなご苦労まで……」
少し涙ぐんでいた。まぁでも、これもオーディションに受かるために印象を良くしておこうという作戦かも知れない。まだ椅子に座っている四人も涙を拭ったり、鼻をすすったりしている。
まぁ生き馬の目を抜くような芸能界を目指す者達だ。したたかさだけが身を助ける世界に生きてきた者たちを、素朴に純朴に信じ込むのは愚の骨頂と言うものだろう。
……あれ? でも、これアイドルオーディションじゃないよね。あっちの世界の芸能界の話でもないし、考えすぎか?
「では、そんな奏唱者様がご記憶を取り戻していただけるよう祈りを込めて、一曲演奏致します」
ルサリィは演奏の後、歌を一曲披露してくれた。その間、青の宝玉には何の反応もなかった。てゆうか、今この段階で反応してないって事は、この1グループ目の五人は全員操者じゃないって事なんだろうなぁ。あ、ニミュエもそうか。なんとなく残念。
ルサリィの特技は、演奏と歌以外では魔操鎧の操縦や、すばやい事で有名な魚、ドユウェンの素手掴み漁という、ちょっとこの部屋では披露できないものだったのでご遠慮いただいた。ドユウェン。一体どんな魚なんだ。
他の四人も大体同じような感じだった。楽器や年齢層でグループわけをしているのかなぁ。みんな20代前半で、楽器は琵琶だった。
結局このグループでは、青の鎧の操者はもちろん、ジャンゲルロイコの正体もわからずじまいだった。
ついに、とうとうその時がやってきた。見覚えのある顔。そう、この子だ。
「エントリーナンバー23番、ネレス、16歳です!」
いかん、この子の名前、ネレスって言うのか。ジャンゲルロイコの子、としか覚えてなかった。てへ。
いやもうね、青の宝玉はうんともすんとも反応してないんだけど、俺的にはドキドキが止まりませんよ。なんたってジャンゲルロイコですよ。ジャンゲルロイコの正体がわかるわけですよ。これが興奮せずにいらりょうか。
「じゃ、じゃあ早速、ジャンゲルロイコを演奏してくれるかな?」
俺は勢い込んで言った。いよいよだ。
「え……? プロデューサーさん、どうしてそれを……?」
ジャンゲルロイコの子、いやネレスは不思議そうに俺を見返した。
「あ、そっか! 取材に来てた子がいたっけ! ご覧になってたんですね、感激ですっ!」
ジャンゲルロイコの子、いやネレスは輝くような笑顔になった。うん、この子普通にアイドルいけんじゃね?
「あ、でも……」
そう言いながら彼女が取り出したのは、またもや琵琶だった。えー? もう飽きたんだけどー。ジャンゲルロイコはー?
俺のあからさまな残念顔に気付いたジャンゲルロイコの子、いやネレスは、慌てて言った。
「あの、ジャンゲルロイコは、最後の特技で披露しようと思ってましてぇ……」
くぅぅ、焦らすなぁこいつ。
「ダメ……ですかぁ?」
ちょっとうるうるした目で俺を見る。あざとい。あざとすぎる。この子はやっぱり鎧の操者じゃなくアイドルの方が天職だろう。女性九割の社会じゃなければ良かったのにねえ。
結局、琵琶の一曲と、ぶりぶりの振付つきの歌を一曲聞かされた。タイトルは【私の彼は魔操GUY】。アイドルソングだけど内容はメカフェチ女子の歌だ。なかなか見応えはあったんだけど、別の事が気になってる俺にはなかなか入ってこなかった。
そして、ついにジャンゲルロイコとのご対面の瞬間がやってきた。
「では最後に、あたしの特技を披露させていただきますっ!」
ジャンゲルロイコの子、いやネレスが荷物の中から取り出したのは……。
……たてぶえそっくり。
こ、これがあの憧れのジャンゲルロイコかっ!? なんつーの? なんかがっかりと言うか、拍子抜けというか。読者の皆さんがここで読むのを止めちゃうんじゃないかと心配だ。
「では、あたしの特技、お見せします!」
ジャンゲルロイ……ネレスはたてぶえを口にくわえ、吹き始めた。なんだよー。こんな光景小中学校の時さんざん見たわー。
……ん?
俺の心が何かに引っかかった。
……この、曲は……!
そう。ジャンゲルロ……ネレスが奏でていた曲は、【蒼翼の獣戦機トライセイバー】のオープニングテーマだった。
次回予告。
シェライアだ。
水の民と言えば音楽。
オーディションで披露された数々の音楽はとても素晴らしいものだった。
だが、おにいちゃんはどうもあまり気に入らなかったようで……。
次回、Take It All! 第五十八話
「オーディション一日目、終了。」お楽しみに!
ファミルエリシャにも見せてやりたかったなぁ。
音は送れないけど、あとでラー印しとこっと。




