夢と
幼稚園くらいの子供の俺と小さな女、そして大人の男と三人で遊んでいる
「ねぇ鋼二君、鋼二君は例え私がどんな風になっちゃっても、一緒にいてくれる?」
「どんな風にってなんだよ。まぁでもずっと一緒に居てやる。約束するよ」
「ーーーさんも、鋼二君とずっと一緒に居られるようにしてくれる?」
「ああ、約束しよう」
「えへへ、嬉しいっ!」
高校生くらいになり、トイレの個室に同年代くらいの少女と二人。少女は便器に座り、俺はその正面に立っている
「鋼二君、ずっと一緒に居てくれるって約束したの、覚えてる?」
「ああ、当たり前だろ。何があっても、傍にいてやるよ」
「そっか、じゃあ鋼二君にだけ、してあげる...」
そういうと椿はゆっくりと、自分のスカートをめくり始めた。
嬉しいような嬉しくないような、中が見たいような見たくないような。欲望と罪悪感の狭間で破裂しそうな理性をなんとか保っていると、中が見える直前でフッと視界が白くなった。
目の前に広がる無機質の天井、目が覚めた。
眠い、疲れが取れた気がしない...とりあえず学校だ、準備しよう。
準備も済ませトーストを一枚平らげ俺は家を出た。
いつもの見慣れたハイキングコース。いつもの場所でいつもの見飽きた顔と待ち合わせ
「よぉ鋼二!いつにも増してダルそ〜な顔してやがるな!」
コイツは佐藤猛、中学ん時から四年目になる腐れ縁だ。
「鋼二大丈夫?風邪でも引いた?」
こっちは秋野芳。女みたいな名前に女みたいな顔した野郎で、こいつは高校入ってから知り合った付き合い2〜3ヵ月の友人だ。
「あぁ。内容は覚えてねぇが、スゲェ疲れる夢を見た気がする...」
「鋼二!俺の顔みて元気出せ!」
「あー、お前の顔見てからさらにドッと疲れたわ」
「あはは、相変わらずだね二人共」
俺達はなんだかんだいつも三人でつるんでた。毎日三人で投稿し、三人で弁当食って三人で下校する。そんな仲だ。
学校に到着すると、数人の女子が常に俺達をチラチラと見ている。いや、正確には秋野を見ている。女のような可愛らしい外見に女みたいに優しくふんわりとした性格と喋り方。これが母性本能をくすぐるのか、今ではちょっとした人気者だ。
本当どうして俺や佐藤のようなむさい野郎と付き合ってるのか。
教室に着くと佐藤はこんな話を始めた。
「なぁお前等、誰が一番イケてると思う?」
「なんの話?」
「わかってんだろ秋野、女子だよ女子!誰が一番可愛いかって事よ!」
こいつはまたゲスい話を
「やっぱ才色兼備の委員長、倉山さんかな?あ、それとも男勝りなスポーツウーマンの水瀬さんかな?それともそれとも...クーッ、どれもたまらんっ!!お前等どう思う?なぁなぁ!」
「佐藤、お前女の話する時だけイキイキしてんなぁ、いっつも」
「あったりまえだろ?可愛い女子の嫌いな男なんかいねぇんだよ!なぁ秋野!」
「僕は、みんな素敵だと思うなぁ」
「カーッ、モテる男は言う事が違うねぇ!羨ましい!鋼二はどうだ?好きな子とか居ないのかよ」
「バカ言うんじゃねぇよ、あー眠ィ...」
好きな子、いるがコイツ等には言えねぇ。どうせおちょくられるのがオチだ。
一時限目の授業の準備をしていると、机の中に入れた覚えのない何かが入っていた。紙みたいだった。
「便所行ってくる」
そう言って俺は便所へ行き、個室の中で机に入っていたものを確認した。
それは手紙だった。それも同じクラスの夏野椿という女子からだ。夏野は、こんな正確から女子となんか交流のない俺達に普通に声をかけてくれる数少ない女子で、俺がこっそり想いを寄せる相手だ。差出人の名前を見た瞬間ドキッとした。誰だってそうだろう、好きな相手から突然手紙が来れば、スキンヘッドにグラサンをかけヒゲを生やした大男でも心臓が締め付けられるというものだ。
手紙の内容は今日二人で一緒に下校しよう、放課後玄関前で待つという内容だった。汗が吹き出る。これはあれか?ラブレターってヤツか?やばい、自分がどんな表情しているのかわからない。
俺はニヤけて気持ち悪い顔になっていないか、ひたすらきになり授業の内容もさっぱりなまま昼休み。
「ねぇ3人とも、よかったら私も一緒にお昼ご飯たべていいかな?」
そう声をかけてきたのは長い髪を二つの三つ編みおさげにした委員長、倉山鏡子。俺達に普通に話しかけてくれる数少ない女子の内夏野ともう一人の方だ。
だがすまん倉山、今お前の話に付き合ってる余裕はないんだ。
「いやーどうぞどうぞ!一緒に昼飯食いましょう委員長!」
そう言って倉山を引き込んでしまったのは佐藤だ。このスケベめ。だが佐藤のお陰で少し正気に戻れた。
せっかくなんで気になったことを聞いてみる
「なぁ倉山、さん...」
「ふふ、呼び捨てでいいよ。私も鋼二君って呼ばせてもらうね」
そう言うとニコッと笑顔を向けてくれる。その笑顔にちょこっと恐怖感を覚えた。何故かはわからんが。
「じゃあ倉山、なんで俺達なんかと?」
「私毎日一緒にお昼ご飯食べる人変えてるの。なるべくクラスの皆とお話したいから」
よく気の回ること、よく出来た委員長だ。
「オイ鋼二!羨ましいぞ!」
うるさい佐藤は無視だ。
「鋼二君と猛君、仲悪いの?」
「いや、この二人はいつもこんななんだ。仲がいい証拠だと思うよ」
「そうなの?なんだか芳君、二人のお母さんみたいね」
「僕、一応男なんだけど」
「あ、ごめんなさい。でもいい奥さんになりそうよ、芳君」
「もっと男らしくなりたいなぁ」
倉山と秋野の二人で話が盛り上がって、そこにちょくちょく口を挟む佐藤。俺は殆ど喋らなかった。
気を利かせて倉山は何度か俺に話を振ってくれたのは覚えてるが、どう答えたかも覚えていない。
そんなこんなで放課後になった。秋野と佐藤には適当に言い訳して先に帰らせ、遭遇しないように10分ほど時間を潰してから玄関の方へと向かった。
もう先に帰っちまってるかと思ったが、誰もいなくなった玄関口に一人、髪を肩まで伸ばし頭の右側面で髪を結びリボンを付けた小柄で可愛らしい後ろ姿があった。間違いない、俺が間違えるはずもない。あれは夏野だ...。