Episodio 5 Strega Explosiveー爆発性の魔女ー
なんとめんどくさそうな奴なのだ。
黒装束にトンガリ帽子、これに黒猫でもいれば完全に魔法使いだ。しかも、見たところ13~14歳で幼げな顔をしている。
ロリ魔法使いという要素にラノベ感を感じるが、あいにく俺は仲間にそんな要素を期待していない。
「ごめんね~気持ちはありがたいけど君みたいな小っちゃい子は危ないから連れていけないよ」
と、俺なりのベストな回答をしたつもりだったが、彼女には通じないようだ。
「まあ、そう言わず自己紹介をさせてください。私の名は片倉 虹!カールグスタフを操りし砲撃手にして、いずれ神々を葬り去るモノ!」
やたらとハイテンションな彼女の自己紹介を聞いた俺の脳裏に数々のツッコミが生まれる。
どこから突っ込めばいいんだ~、そうとしか考えられないので、順番に質問してみることにする。
「まずは名前だ名前。レインってどう書くんだよ」
「虹でレインです。いわゆるキラキラネームです。」
「そ、そうか。じゃあ次はカールグスタフってなんだよ。魔法の名前かよ」
「カールグスタフは私の相棒にして、最強の武器である無反動砲デス!」
「とてもツッコミたいがそれはおいておいて最後のは何なんだ」
「私とカールグスタフはいずれ全ての区長を葬り去り、その名を天界までも響かせるのデス!」
脳内メモのロリ、魔法少女の横に中二病気味を追加した俺は最後の手段に出ることにする。
「よし、分かった。じゃあ入隊試験をしよう。俺に力を証明することが出来たら入隊を認めよう」
と、テンプレなセリフを放った俺に、なおハイテンションなロリ魔女子は
「臨むところデス!我がカールグスタフの威力を見せて差し上げまショウ!」
と中二スイッチ全開で答える。
いまだに居眠り中の広人を一発の蹴りで起こし、俺たちは安全区域外の公園に向った。
移動中にレインを広人に紹介したが、思いのほか相性が良さそうで、元々オタクの広人はロリ中二病魔法少女に適応することができるようだ。
公園の横のマンションの一部屋に入った俺たちは、ベランダから公園を眺める。
それほど大きくないこの公園には、3体の神兵がいて周りを監視している。神兵の主な役割は監視で発見した人間を手当たり次第に襲ってくる。
「入隊試験はあそこにいる3体の神兵を10分以内に倒してもらう。危なくなったら俺たちが助けてやるから心配すんなよ」
そう隣にいるレインに言うと、子供扱いされたのがいやだったようで少し頬を膨らませるが、再び敵に向いなおる。
「うるさいです。そんな気遣いいらないです」
レインはそう言ってカールグスタフと思われる銃を武装する。
でかい、それが俺の印象だった。全長1Mはあるであろうその銃はまさに大砲だ。
自分の3分の2の大きさはあるその銃を構えた彼女は、さっきまでロリ魔法少女とは思えないほどのオーラを出していた。
「我が心に応えよカールグスタフ。そして、仇を焼き払え!」
そう叫びながらレインは引き金を引いた。
瞬間、とてつもない爆音と爆風が巻き起こる。
驚きのあまりとっさに横を見るが、何故かレインはいなくなっていた。
振り返るとベランダから吹っ飛び、リビングのソファーに横たわるレインがいた。
無反動砲とは何なのか、と思いながら、レインに聞いてみる
「何でこんな威力なんだよ。どう考えてもおかしーだろ」
「実は今撃った弾は火薬5倍の改造品なのデス。強力な威力と引き換えに無反動どころか超反動砲にナリマス」
もうすでにハイテンションモードに入り、中二スイッチも入る。
「芸術はエクスプロージョンなのデス!爆焔に抱かれて消えろなのデス!」
暴走気味のレインから視線を戻すと爆風による砂埃が晴れ、公園に砕け散った3体の神兵が見える。それと同時に破壊された遊具も目に入る。
隣でご機嫌そうに高笑いするこの少女は絶対に怒らせてはいけないことを悟った俺は、仕方なく彼女の入隊を認めた。
その後、他の入隊希望者が来ることはなく、結局この3人が椿隊となった。
何はともあれ、無事に規定の人数を満たすことができてなにより、と俺は心に言い聞かせた。
―――練馬区長討伐戦まであと1日