Episodio4 terza personaー三人目ー
「よし、ではそろそろ始めようか」
そう言い放ったのは、若き指揮官の真田だった。
俺は今、自衛隊の駐屯地でおこなわれている、緊急会議に来ていた。
自衛隊を中心として、約450人ほどいて《解放隊》と呼ばれ始めている、俺たちを真田はここに集めて、今後について話し合いをするらしい。
「俺は真田幸隆。自衛隊第一普通科連隊の連隊長で、今はこの区の自衛隊を指揮させてもらっている。よろしく頼む」
軽く自己紹介を済ませたあの男は、自衛隊でも屈指の武闘派で、先の侵攻では1人で10体の神兵を葬り去ったという。
「あの人かっこいいよな~」
隣でそう呟いたのは、福島広人。俺は暮らしていた埼玉県秩父市からここ練馬に爺さんの使いで来ていた時に、この事件に遭遇したため、恥ずかしながら友と呼べるのはこのデブしかいない。
そんなことを悲観しつつ、再び真田に意識を向ける。
「では、早速本題に入らせてもらおう。知っての通り、我々自衛隊が約束した1か月以内の練馬解放までにあと一週間を切った。しかし、昨日自衛隊の偵察隊がついに練馬区役所を発見した。」
途端、大きな歓声が上がる。当然だ。見えなかったゴールをついに発見したのだ。
そこにいる区長とやらを倒すことが出来れば、少なくともこの練馬が解放され、他の区の状況次第では、世界が元通りになるかもしれないのだ。
「静かに。ここから重要だ。区長戦を今までとは比較にならない程大きな戦いになるだろう。当然死者もでるかもしれない。そこで、街の防衛隊を除く、全ての《解放隊》が合同で挑むことはもちろん、人数が多いことによる指揮系統の混乱を防ぐため、3~5人の隊を組んで戦闘にあたってもらう。これ以下では、危機対応が心もとなく、これ以上では統制がとりにくいため、この範囲外の隊は認められず、安全上の理由から戦闘には参加させられない。また、各部隊の指揮はその隊の隊長に一任する」
なん・・・だと・・。俺は絶句した。周りではどんどん古くからの友人であろう者たちが隊を結成していく。そんな中、よそ者の俺は完全にぼっちになってしまった。
「なあ創也。俺とチーム組もうぜ」
そう話しかけてくれたのは、隣のデブだけだった。1人足りない、なんということだ、と心で呟きながら、頭を抱える。
俺たち以外はもう全員が3~5人の隊を組んだようで、真田が続ける。
「出発は、あさってだ。しっかり準備をしてきてくれ。出発前に隊の役割を軽く分担するからそれまでに隊を組んでおいてくれ。では、解散」
会議が終了し、皆が席を立ち、準備のため会議室を出るなか俺も考えていた。
他の3人の隊に入れてもらうか、いや、全ての隊が4~5人だった。
今から募集をかけるか、いや、この会議に来ている人はみんな隊を組んでいた。
どうする...。
《勇士求む!区長討伐に参加する人員募集中》の張り紙。
それが俺と広人が必死に考えた決死の手段だった。
現《解放隊》以外の人員、それが俺たちに残された希望だった。
自衛隊が配布した武器を受け取りながらも、安全区域にこもっている人は何人かいる。それしか俺たちには方法がなかった。
しかし、危険な区長戦に参加したいやつなんているのだろうか。もともと怖いからこの街にこもっているのに、そう思いながら張り紙に書いた面接所である噴水広場で待つこと早3時間。
一向に人の来る気配がなく、居眠りを始めた広人をどう起こしてやろうか画策していたその時、
「募集の張り紙を見させてもらいました。是非私を区長討伐に加えていただけないでしょうか」
その一声を待っていましたと、振り返った俺の目の前に立っていたのは、
黒マントに黒ローブ、おまけにトンガリ帽子をかぶったドンキで揃えた様な典型的な魔法使いの出で立ちをした少女だった。
面倒事の気配を感じた俺は、そっと目を背けることにした。