Episodio2 Sentenza di Dioー神の宣告ー
目の前に起こった現象を言葉で表すことが出来ない。
足元には、さっきまで立っていたはずのアスファルトの道路ではなく、芝生が広がる。
周りを見渡すと、道案内をしてやったデブが入っていったTアニメーションや遠くに見えていたはずの練馬駅は見えず、代わりに数え切れないほどの人々がざわめく様子が見える。
だが、この景色には見覚えがある。
練馬に最近できた大きな広場で、コンサートなどを行う企画がされていた場所だ。
「なあ、こらぁ一体どうゆうことなんだよ」
聞き覚えのあるのんびりとした声が聞こえ、振り返る。
「知らねぇよ。逆にこっちが聞きたいね」
先ほどまでは面倒なやつに見えていたデブもこの状況では少し安心感を与えてくれる。
「お前もここに飛ばされたのか」
と、自分の身に起こった現象が真に現実のことなのか、確認するように問う。しかし、
「それがよ~。Tアニの自動ドア通ったら、急にグニャグニャ~ってなって、気が付いたらココにいたんよ。マジでパニくるぜ」
と、あくまでのんびりとした口調で語ってくるデブに対して、どこからどう見てもパニックになってるようには見えねーよ、というツッコミを心でしていると、周りのざわめきが急に大きくなった。
天からこの場所に一筋の光が差し込んだのだ。
光の中からうっすらと人影が見える。
だが、人間のサイズではない、全長18Mはあるのではないかという圧倒的に大きな人影だ。
俺の脳裏に《神》という単語がはっきりと浮かび上がる。
しかし、俺は昔から幽霊や神、仏のような己の目で見ることの出来ない存在をずっと否定してきたはずだ。
だが、それでも目の前の人影は長年の俺のそのような概念を打ち消すような神々しさ、威圧感を放っていた。
そんな俺の脳が処理落ちしそうな思考を一瞬であざ笑うかのように奴は言い放った。
「私の名は、伊弉諾。諸君らを人と呼ぶなら、いわゆる神というものだ」
ウソだろ、としか考えられない。
隣を見るとさすがにこのデブも驚きを隠せない様子で口を開けてあぜんとしている。
周りの人々も同様のようだ。
当然だ、今まで漫画かアニメでしか見たことのない《神》という存在が目の前に存在しているのだ。
奴の言い放った言葉が偽りでないことはこの状況において疑いようのない事だった。
あぜんとする俺たちにイザナギと名乗る神はさらに衝撃を与え続ける。
「今、君たちのいるこの東京23区は外界から完全に遮断されている。また、区間の移動も出来ないようになっている。」
そう言いながら、イザナギは一つの映像を映し出した。
そこに映っていたのは空中に浮かびあがり、一つ一つが空を浮かぶ島のようになっている東京23区だった。
状況を全く理解できず、呆然とする俺たちに構いもせず、奴はさらに話し続ける。
「君たちが解放される条件はただ一つ、この東京23区を支配する我々23の神、区長を全員倒すことだ。1区につき1柱ずついる区長を倒せばその区は解放され、隣接区との行き来が可能になる。そして、この東京23区の区長を全て倒した瞬間、大地は再び外界と繋がれるだろう。」
俺は、ただ呆然とするしかなかった。
区長だ?23体の神を全員倒せば解放だ?何を言っているのだこいつは、そもそもどうやってあんたらを倒すんだよ、という疑問が次々と湧いてくる。
「どうやってあんたらを倒すんだよ!銃で撃ったら死ぬのかよ!」
という叫びが背後から聞こえた。
それに続くように周りがざわめき立ってくる。
すると、俺たちの手の中に光と共にスマホのような物が突然現れる。
「それは、いわゆる文明の利器というものだ。それの武装化という項目を選択すると、君たちの肉体を完全にコピーした戦闘体が生成さ、生身と入れ替わる。しかし、戦闘体が破壊されれば、当然生身に戻る。」
俺は奴の言いたいことをやっと理解した。
奴は、2つの命をやるから我々23の神々を倒してみろ、と言いたいのだ。
「何で...。何が目的でこんなことを...。」
と、いう俺のつぶやきが聞こえたように奴はこう答えた。
「君たちは今、何故こんなことを、と思っていることだろう。これは、試練である。我々がこの日の国を創り、幾千の時が経った。その間に君たちがどこまで進化したかを試すための試練である。我々神々の創り出した神兵たちを倒し、天界民の兵たちを倒し、それぞれの区役所で待ち受ける神々を倒し、君たちの力を証明してみろ。私からは以上だ。文明の利器の詳しい使用法は、設定の項目から確認できる。では、君たちの健闘を祈る。」
そう言って奴は光と共に空へと消えていった。
周りの人間はもう完全に静まり返っていた。
これはまぎれもなく現実で、騒いだところでどうもならないことを悟ったからだ。
誰もが思考を停止し、呆然とする中、俺は隣でアホ面をかましているデブを見て覚悟を決めた。
「広人、俺は戦うことにする。お前もついてこい」
「でも、死んじまうかもしれないんだぜ」
と、弱気な一面を見せるデブだが、俺にも恐怖のような気持ちは山ほどある。だが、
「安全地帯なんてものがない限りどこだって同じだろ。逆におびえている方が危険だ。練馬には、自衛隊の駐屯地がある。自衛隊はそこで武装を整えるはずだから、いっしょについていけば、武器のおこぼれがもらえるはずだ。」
「でも、そこまでに道中で敵の襲われたら...。」
「大丈夫。俺には日本刀があるだろ。」
自分でも驚くほど自信がみなぎっている。
この状況で頭がおかしくなってしまったのだろうか、などと考えてしまうが、
「よし、行こう。自衛隊のライオットシールドもらったら、ばっちり守ってやるぜ」
という言葉で再び思考が前向きになる。
「頼むぜ《動く要塞》さんよ」
「まかせろ《侍》!」
そんなやりとりをしながら、俺と広人は人ごみをかき分け駆けだした。
俺たちの刃がきっとこの23の牢獄を切り裂くことを信じて...。