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CDI-Squad  作者: PLATINA
6/6

第6話/姿現す蛾と青年

CDI-Squadのボス、宮川俊介(みやかわ しゅんすけ)

彼はマザーコンピューター「ヴァサントゥ」の休眠を見計らい、高知県土佐清水市へ向かい、ある目的への心の決意を固めた。

その帰路、彼は謎の黒ずくめの男、「柴門(さいもん)」と遭遇した……!

羽田空港展望デッキ

「……がっかりだよ。あの言葉を自分で忘れたのかと思うと。君は有言実行する男のはずだからね。」

柴門はボスにそう言った。

「裏では続けている。ヴァサントゥが完全にシステムを復帰したら、あの時のようにならない。そして今回の休眠から目覚めれば完全に復帰する。いよいよ、あいつを破壊できる。」

「じゃあアクセス権を持った君はどうなる?前に自分で言ってたじゃないか。」

ボスは拳を強く握った。

「それも覚悟の内。そう決めてる。それがZONE-Fの人間、いやエナへの恩返しになる!それがおれの覚悟だ。」

「……なら、僕も自分の覚悟を貫くよ。」

柴門は去っていった。



官邸

「その柴門っていうのは、どんな奴ですか?」

全は中田に聞いた。

「どうやらそちらのボスは一切の事情を話していないようですね。彼は現在この世界では存在していけないオーバーテクノロジーを世界中の大企業に提供し、それらをあらゆる人間に売り渡している。いわば“闇商人”と言える男だ。」

「……ボスは、なんでこの事を言わなかったんだろ。」

蘭留はそう口にした。このように裏から特定の人物が複数の事件に関わっている事をリークしているのならば、普通はその人物に先手を打ち、事件そのものを回避させるはずだ。蘭留にとっては、このような任務はただの遠回りにしか考えられなかった。


通気口内

官邸内の調査は、まだ終わっていない。一回り終わればまた一回り、もう一回りと続ける必要がある。そんな中、隊員の一人があることに気づいていた。

「この通気口、妙に蛹が多いもんだな。」

通気口内には蜘蛛の巣も大量に張っていたが、肝心の蜘蛛がおらず、蛹が非常に多くある。隊員は、蛹を一匹ずつ指で取り、側面へどかしながら換気口内を張った。

そんな中、一つの蛹が殻を破り、羽化した。蛾である。その後も続々と羽化し、通気口からでようとしていた。

そのことに気づいたのか、隊員も急いで通気口内からでようとした。だが蛾が多く飛び、その鱗粉が舞っている。そこで隊員はミッションパックからゴーグルとマスクを取り出し、着用して通気口内から出た。

幸い彼は鱗粉が目に入ったり、吸ったりということもなかった。だが、その鱗粉の効果がどれほどのものかを知らずにいたのは、これから起こる出来事から考えると不幸であった…………。



オペレーションルーム

渚は、前回の事件についてまとめていた。ι-ブロブヒレンの件だ。そこである人物の関与が浮上した。これもまた紫門である。

渚はこれまでの事件に関与していないか、UCTのマザーコンピューター内のアーカイブにアクセスしようとした。しかし。

《アーカイブに接続できません。マザーコンピューターが起動されていません。》

「え……そんなはずないのに。」

マザーコンピューターが起動していなければ、この施設全ての機能が停止される……はずなのに。



官邸

パーティーが始まる前の騒々しさが全と蘭留を出迎えた。

どちらも正装。蘭留は化粧をし、少し上品さが出てきてる。全は……みっともなさが出てきてる。

「マスクきちんとしのばせてるでしょ?」

「あぁ…毒ガス撒かれるんだっけか。うーんと…OK。」

「ご来場の皆様。ただいまより藻軒佐喜雄(ものきさきお)氏よりご挨拶が申し上げられます。

全のOKにかぶせるように司会が喋った。

ようやくパーティが始まった。

と言っても、官僚が現状の政策を織り交ぜた挨拶を述べる中、豪華料理を食べるような、豪華でつまらない会だ。

「本当に食ってもいいのか……!」

全は目の前の北京ダックに引き寄せられた。

勿論、すぐに蘭留から止められたが。

「えー本日は、これほど豪華な方々がいらっしゃられ、誠に嬉しく思っております。さて、平成27年も総括の期間に…………

全はつまらなそうに官僚の挨拶を聞きながら、薄餅にタレを塗り、皮を削ごうとナイフを取った時、ダックの上に蛾がとまった。全は咄嗟に手でしっしとはらったが、また引っ付いた。

「……来年度の参院選で、選挙権が18歳ゲフン!…18歳以上に引き下げられゲフン!ゲフン!…ガハッガハッ!」

「目が……目が…。」

全が薄餅に具をはさんでいる最中に異常が起こった。官僚が喘息を起こし、退場。周囲の人間も続々と喘息を起こしたり、目が腫れたりと、会場は騒然となった。

「全くん!ちょっと!」

蘭留が全を大声で呼んだ。

「ガスって、これのことだったの……?」

蛾の鱗粉が毒ガスとなった合成種。紫門の放ったものだ。

混乱の中、喘息で苦しむ人々が倒れ、もがき苦しんでいる。

「あ゛ぁ……」

蘭留の足に誰かがしがみついた。必死な苦しみが伝わった。

………………

蘭留はその誰かの手をとり、出入り口へと運んだ。

「全君も早く運んで!」

全もマスクを装着して人々を助け始めた。




数時間後

官邸入り口

事件はメディアによって広まり、マスコミが入り口を囲み、救急隊員がそれを立退かせようとしていた。

そんな中、中田たちは全と蘭留の安否を心配していた。

「心配してました?」

腕を組み、目をキョロキョロさせてた3人に、女が声をかけた。蘭留だ。

「どっちも無事なので。私の出番は終わったので、帰ります。」

「……最初に倒れた藻軒氏は亡くなりました。あなたたちが救助した方々も意識不明の重体です。ガスを吸い、死へと道が決められたような人々を、なぜ助けたんです?あなたたちも道連れにされるところだったんですよ。!」

中田は、だんだんと声を荒げながら蘭留に言った。

蘭留は中田の言葉を聞いてコクリと頷き、口を開いた。

「皆道なんて最初から決められてません。今見捨てたら、自分が他人の道を決めてしまう……それが私は嫌なんです!」

全も少し遅れて駆けつけてきたが、蘭留の言葉を聞いてなにか“熱”を感じた。

そして中田は表情を変え、蘭留を見つめていた。どんな感情でどんな表情を見せたかは、敢えて言わないが。




東京地下秘密路線

宮川は、一般には存在を伏せられた秘密路線を走る電車に乗って、UCT本部に向かっていた。

UCT本部は都内地下にあり、CDI-Squadもその内部にある。



CDI-Squadオペレーションルーム

渚はアーカイブにアクセスしようと奮闘していた。だができない。

《アーカイブに接続できません。マザーコンピューターが起動されていません。》

その表示が続くだけであった。


UCTマザーコンピューター「ヴァサントゥ」内

宮川は椅子に座った。そして彼の目の前に、若い青年が現れた。

「こんにちは。私の名は機螺追儀斗(きらおい ぎと)。ヴァサントゥの代理です。」




つづく

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