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無色騎士の英雄譚(旧題:無色騎士 ニートの伝説)  作者: 浦賀やまみち
第十二章 男爵 オータク侯爵家執政 百騎長 第十三騎士団出陣編
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幕間 その2 続・ティラミス視点




 数多の人々で賑わいをみせる王都の南門前広場。

 その真っ只中に現れて、いきなり歌を唄い始めた男に『ティラミス』は見覚えがあった。




 ******




「愛が上手ぁ~く、喋ぇ~れなくて、リュートを弾いたのさぁ~」


 歌唱力も、伴奏に弾いているリュートの腕も決して上手くは無い。

 時たま、音を外している時も有り、歌を生業とする吟遊詩人達とは比べ物にならない。


 歌詞だって、英雄が活躍する様な壮大なものとは違う。

 スローなテンポで唄われている歌詞の内容は何処にでもいそうな男女の有り触れた恋の物語。


 だが、それが良かった。自分自身の経験と照らし合わせて、ついつい聞き入らされる。

 広場を見渡してみれば、ほぼ全ての人々が立ち止まっており、男の歌声とリュートの音色だけが広場に響いている。


 石畳が敷き詰められた広場の中央に育つ一本の樅の木の下、特設されたステージに立ち、たまに身振り手振りを交えながら熱唱している男性はニート様だ。

 カツラを着けているのだろう。その先が動作の度に揺れるほど長く尖ったリーゼントな髪型をして、サングラスをかけているが間違いない。


 妙なのは髪型だけに留まらず、服装もまた妙であり、それを一言で表すなら『ハレンチ』が相応しい。

 太めの赤い薄布を帯にして、上下一体の白い光沢がある服はサイズが敢えて小さめなのか、肌にピッタリと張り付いて、身体のラインが丸わかり。


 当然、股間はもっこりと膨らみ、ニート様の逞しさも丸わかり。

 ついつい目が奪われる度、思わず昨夜の情事を思い出して、頬どころか、身体の芯が熱くなってくるのだから堪らない。


 慌てて視線を上げても、そこにも女を狂わす罠が存在する。

 最初からボタンが無いのか。それとも、ボタンをわざと外しているのか。正面をおヘソ近くまで大胆に開き、日々の鍛練で鍛えぬかれた見事な胸板を露出させており、両腕の袖口から脇の下まで幾つもぶら下がる銀糸が編まれた紐のカーテンが身振り手振りに合わせて揺れて、その胸板を隠したり、見せたりを繰り返している。


 余談だが、ニート様の左側一歩奥にて、同様の格好をした見知らぬ少年が歌の伴奏にリュートを弾いているが、彼はニート様ほど大胆になれないらしい。

 ステージに登場して以来、ずっと俯いたままでおり、どうしても目立ってしまう股間が気になって仕方が無いのだろう。リュートの構え方が股間を隠そうと不自然に縦向きとなっている。


「昨日とは打って変わり、今日はしんみりとした歌か……。

 聞くところによると、歌は日替わりで同じ歌は二度と唄わないらしいですから、大将は詩人としてもやっていけますね」


 しかし、それよりも今は重大な事実が存在する。

 ウィローウィスプ卿が先ほど語ってくれた物語の男性がニート様なら、ニート様が想いを寄せている女性がこの広場の何処かに居る筈だ。

 突然の出来事に驚いた後はニート様の歌に惹き込まれてしまったが、隣で広場の様子を一緒に眺めているウィローウィスプ卿の声に我を取り戻すと、嫉妬心がメラメラと燃え上がってきた。


 その女性は何処に居るのか、視線を広場のあちこちへ飛ばすが、数多に居る人々の中から見つかる筈も無く、誰もが只の観衆に見えた。

 こうなったら、ウィローウィスプ卿へ直接問い質そうかと考えた直後、ある事にふと気づいた。


 それがニート様が向けている視線の角度。

 ニート様は唄いながら顎を常に少し上げており、観衆を全く見ていない。

 その視線が捉えているのは南門であり、より正確に言うと城門の上に築かれた門塔である。


 門塔とは城門を守る兵士や騎士の詰め所。

 なら、ニート様が想いを寄せている女性は必然的に騎士という事になる。


 何故ならば、冒険者の女性が有事の際に傭兵として雇われる事は有るが、この国に女性の兵士は基本的に存在しないからだ。

 この予想が正しければ、同じ騎士のウィローウィスプ卿は女性の詳しい情報を知っているに違いない。知っているからこそ、私をここに連れてきたのだろう。


「ところで、アリサ嬢はお元気ですか?」

「えっ!? ……ええ、去年の夏に会った時はお元気でしたよ」

「その様子から察するに仲は良い様ですね」

「はい、とても。いつも会う度にニート様の愚痴をお互いに零してばかりですけどね」


 だが、それに先んじて問いかけられ、気勢を制される。

 それも質問の内容は脈絡が無く、戸惑いながらもアリサさんを思い出して笑顔で応える。


 ショコラさんから聞いた世間一般の話によると、正妻と妾は反目し合うのが多いらしいが、私達の仲はとても良好だ。

 不満を挙げるとするなら、アリサさんが私を必要以上に立てようとするくらい。やはり貴族と平民の身分の隔たりが大きいのだろう。


 その点で言うなら、アリサさん同様に妾となったリズはもっと酷い。

 嘗て、バカルディの城に勤めていた影響がいつまで経っても抜けず、未だ私を主人扱いで接しており、お姉様を通して叱って貰ったほどだ。


 正妻と妾、ここにも身分の差は確かに有る。

 しかし、私達はニート様を愛する者同士。公式の場は仕方が無いとしても、普段はもっと砕けた友人の様な関係になりたいと私は常々考えているのだが、なかなか上手くいかない。


「まあ、そうでしょうね。大将は女性に人気が有り、本人自身も紳士を気取っているがその実は女好きです」

「そう……。なんですよね。本当に……。」

「当然、奥さんとしては心配になりますよね?

 もっと妾や愛人が居てもおかしくはない筈だと……。いや、知らないだけで実は居るんじゃないかと……。」

「実を言うと、少しだけ……。」


 ウィローウィスプ卿は何を言いたいのか。

 アリサさんの話題を出してきたのが唐突なら、話題の切り替えも唐突であり、ますます戸惑うしか無い。


 だが、それは私が潜在的に抱えていた悩みでもあった。

 新婚旅行の中で気付かされたが、ニート様はとても女好きだ。


 その目は女性の姿を自然と探して追っている。

 特に人の往来が多いところで多い。当初、コゼットさんを探しているのかと思ったが、それはすぐに勘違いだと気付かされた。


 大抵、その止まった視線の先を辿ると、大きな胸や魅力的なお尻へ辿り着くからだ。

 ニート様もそうだが、男性の方々は見られている側が気づいていないとでも思っているのだろうか。


 その上、ニート様はとても性豪でもある。

 正直なところ、新婚旅行中はお姉様が居らず、毎晩がとても大変だった。


 あまつさえ、大きな街での滞在中は娼館へ密かに通っていた様子が有る。

 女である以上、私がニート様のお相手を出来ない日も有り、それはその日に限ってだった為、敢えて追求せずに今も黙っているがやはり面白くは無い。


 コゼットさん、アリサさん、ララノアさん、リズは構わない。

 私とニート様が結婚する前からの関係であり、そこへ割り込んだのは私なのだから。


 お姉様も私が誘ったのだから同様である。

 この先、どうなるのかは解らないが、ショコラさんも仕方が無いと考えている。親友となる過程において、その気持ちを痛いほど知り過ぎてしまった。


 だけど、やっぱり私だけを見て欲しい。

 それが本音であり、女としてのサガだが、それはきっと難しいだろう。


 なにしろ、ニート様は二十二歳と若い。現時点で関係を結んだのが私以外に五人も居て、候補者が一人居り、その候補者にもう一人が今日加わった。

 戸籍上は親子だが、真実は血の繋がりが無い筈にも関わらず、女癖の悪いところがレスボス老とそっくりなのだから困る。


 だから、新しい女性が出来たとしても隠さないで欲しい。それが私の願いだった。

 その時はきっと怒るに違いないが受け入れる覚悟は持っている。こそこそと隠されるより遥かにマシだ。


「なら、居ないと断言しましょう。

 もしかしたら、気になる相手は居るかも知れませんが、恋人以上の存在は居やしませんよ。もし、居たとしたら真っ先に奥さんへ相談するでしょうから」

「それはどうして?」


 その懸念を見透かしたかの様にウィローウィスプ卿が断言する。

 ウィローウィスプ卿へ向けられていた視線がニート様へ自然と向かい、不安に揺れる心が信じられる理由を求めて問い返す。


「どうしてかって言いますと、大将は浮気を隠せるほど色事に関して器用じゃありません。

 ……と言うか、大将は下手くそです。臆病と言っても良い。

 トーリノ関門で実際にそうでした。

 それこそ、女性が露骨にOKの合図を出していても、どうしてかは知らないが、それは違うと言い張って尻込みしてばかり。

 アリサ嬢を妾にする時もそうでした。トーリノ関門を離れる日が近づいて、アリサ嬢は大将の申し出を今か、今かと待っていたと言うのに……。

 大将ときたら、アリサ嬢を生まれ育った北の地から遠く離れた南方領へ自分の都合で連れて行って良いものかと散々悩みましてね。

 結局、ギリギリの間際まで結論を出せず、傍で見ている俺達がやきもきして、いい加減にしろと何度も怒鳴って急かしたんですよ。

 そうしたら、どうしたと思います? 

 一人、自室に半日ほど篭っていたと思ったら、いきなり正装した姿で現れて、いきなり馬を走らせたんです。何も告げず、酷く険しい顔つきで……。

 当然、俺達は大慌てです。

 格好も異常でしたが、馬を走らせる速度が使い潰す勢いの全力疾走。空だって、赤く染まりかけていましたから、これはきっと只事じゃないってね。

 急遽、トーリノ関門は厳戒態勢。血相を変えて、一緒に追いかけようとする殿下を宥めるのに随分と苦労したっけな……。

 ……で、取りあえずの手勢を百人ほど引き連れて、俺達が夜通しで馬を走らせた先で見たのが、村の畑で大将がアリサ嬢の両親へ『お嬢さんを僕に下さい』と土下座をしている光景でした」


 するとウィローウィスプ卿はニート様とアリサさんの恋物語を語り出した。

 ニート様やアリサさんから聞いて、ある程度は知っていたが、その話は初めて知る新事実ばかり。顔を弾く様に上げて、見開ききった目をウィローウィスプ卿へ向ける。


 通常、貴族が平民へ頭を下げるなんて有り得ない。

 ましてや、土下座など以ての外だ。もし、頭を下げる必要が有っても、その間に仲介者が入り、その仲介者が頭を下げる事になる。


 これが役職を持たない士爵位だけを持つ者なら理解もまだ出来る。

 彼等と平民の間に身分の垣根は確かに存在するが、役職を持たない為、士爵位の貴族年金だけでは生活が厳しく、借金に手を染めてしまった結果、商人へ頭が上がらなくなる者がとても多いと聞く。


「大将の性格は知っていたつもりでしたが、驚いたの何のって……。

 だが、俺が奥さんへ言いたいのはそこじゃない。俺が言いたいのは、大将って男は何事にも筋を通す人間だって事です。

 だから、妾や愛人が新しく出来たとしても、大将は正妻である奥さんに必ず報告する。奥さんにコソコソと隠れてってのは絶対に無いと俺は思います」


 しかし、すぐに笑みが口元に浮かび、ウィローウィスプ卿もまた笑顔を浮かべた。

 いかにもニート様らしい逸話だ。ウィローウィスプ卿が言う通り、身分に隔意を持っていないのがニート様の魅力であり、私がニート様を好きになった最大の理由でもある。


 恐らく、ジュリアス殿下がニート様と仲が良いのも同じ理由に違いない。

 前述にも有るが、身分の差は友人を作り難くする。私ですらそうなのだから、王族たるジュリアス殿下は尚更に決まっている。


「じゃあ、これは? 私、ちっとも知りませんでしたよ?」

「おや? ルシル嬢の事は聞いていませんか?」


 だが、『しかし』である。ウィローウィスプ卿の発言に矛盾を感じて、表情は更に変わる。

 眉を寄せながら頬を膨らませて、広場の舞台で唄っているニート様を指差すと、ウィローウィスプ卿はパチパチと瞬きを素早く繰り返して、その目を丸くさせた。


「あっ!? ……では、この歌はエスカ様に?」


 次の瞬間、頭に閃くものがあった。

 思わず驚きに声をあげ、その大きく開いた口に右手をあてがう。


 地元での結婚式と王都での披露宴の二つに列んで忘れられない思い出である婚約を交わした席での出来事。

 それはニート様が婚約を結ぶ条件として、『実はさ。もう一人、好きな人が居るんだけど……。』と言い辛そうに婚約の条件として出してきた名前の主だった。


 正しく、ウィローウィスプ卿の言う通りだ。

 確かにニート様はちゃんと筋を通しており、私も既に『仕方が有りませんね』と苦笑しながらエスカ様の存在を認めている。

 それを忘れていたのは、その名前が私の前に出てきたのが婚約を交わした席での一度っきりだったのと婚約した嬉しさに私が舞い上がっていたからであり、ニート様はその時に『今は訳あって、仲違いをしている』とも言っていた。


「ほらね?」

「はい」


 だったら、これ以上の嫉妬は筋違い。

 ぐうの音も出ずに頷くと、ウィローウィスプ卿はしてやったりの得意顔。右の人差し指を立ててみせた。


「そして、もう一つ。大将の色事を語る上で大事な点が有ります。

 釣った魚に餌をあげない……。

 これは熱心なアプローチをかけてきたのが、閨を交わした途端、態度が掌を返したかの様に冷たくなる男を表す言葉ですが、大将の場合はこれがまるっきり逆です。

 閨を交わす以前は変に余所余所しい態度を取るが、閨を交わした途端、猛烈なアプローチをかけてくる。……どうです? 奥さんなら思い当たるフシが有るんじゃありませんか?」

「あ、有ります。す、凄く……。」


 正しく、これまた言う通りなのだから怖い。

 もう頷くしか術は無く、顔を引きつらせながらウンウンと頷く。


 まだニート様と結婚しておらず、婚約をしていた頃の話。

 どうしてもニート様の心が早く欲しくて、私はエル達のアドバイスを元に様々なアプローチを試みたが、その全てが空振りに終わっている。

 今にして思い返すと、どうにも上手くいかないもどかしさから随分と過激なアプローチさえも行なっており、時が戻るなら当時の自分を馬鹿かと叱ってやりたいくらい。


 しかし、結婚を期にして、今度はニート様から逆にアプローチをかけられる様になった。

 前述にもあるが、ニート様はとても性豪であり、どうやら三日以上を間に空けるのが出来ないっぽい。


 それ故、新婚旅行中は本当に大変だった。

 宿屋に泊まっている時なら私も満更では無いのだが、野営時は外である上に護衛の冒険者達が傍に居り、さすがに遠慮したかったのだが、ニート様はお構いなしに私を求めてくるのだから随分と困った。


 強く断れば、退いてくれるが、翌日はどうしても持て余してしまうらしい。

 普段以上に好戦的となり、遭遇する盗賊や山賊、モンスターのゴブリンですら酷く哀れに思えた。


「これなんて、最たるものですよ。ここまで猛烈なアプローチが出来る男はそうそう居ません。

 少なくとも、俺にはとても無理だ。あんな格好をして、こうも自分の気持ちを赤裸々に唄うなんてね。

 もっとも、ルシル嬢にその気が無かったら、只の未練たらしい男ですが……。それは有りませんし、それを大将も解っているからこそです。

 何度も言いますが、大将は恋愛下手です。

 恐らく、相手にその気が無かったら、自分の気持ちはどうあれ、相手の事を必要以上に考えて、周囲が驚くくらい身をあっさりと引く筈です」


 その人目を気にしないという点に関して、目の前のアプローチも通じるものが有る。

 今度は納得に頷きながら、その一方で考える。もしかしたら、エスカ様はニート様が自分の為に唄ってくれるのは嬉しいが、こんな大騒ぎになってしまい、困っているのではないだろうか。


 まだ名前しか知らないエスカ様に親近感が湧いた。

 どうして、ニート様がこの手段に至ったのかは解らないが、こうなってしまうとニート様は決して止まらないのを私は知っている。

 おかげで、新婚旅行中はニート様の猛烈なアプローチを鎮める為、恥ずかしながら色々な術を覚える必要があった。


 そう、その色々な術を教授してくれた経験豊富な女性が護衛の冒険者達の中にたまたま居り、私は助けられた。

 しかし、エスカ様はそう言った導いてくれる人が居ないのではなかろうか。それでニート様と好き合いながらも上手く行かず、こんな騒ぎが四年も続いているのではなかろうか。


 そうだとするなら、私達はニート様を愛する者同士。

 私が冒険者の彼女から助けられた様に今度は私がエスカ様の手助けをしたい。


「つまり、奥さんの中に大将を想う気持ちが有る限り、大将は奥さんを愛し続けるし、奥さんと別れようだなんて絶対に考えやしませんよ。

 だから、出兵で少なくとも三年か、四年は帰ってこれなくなるでしょうが心配は無用です。もっとも、新しい妾を土産に持って帰ってくるかも知れませんけどね」

「えっ!? ……えっ!?

 あ、あの……。そ、その……。や、やっぱり、気付いて?」

「まあ、俺は奥さんより年上ですし、人生経験もそれなりに持っています。

 第一、新婚で幸せな筈の妻が持つ悩みなんて、旦那に関する事くらいしか有りませんからね。奥さんの様子を屋敷の廊下で見た時、すぐに解りましたよ」

「お、お恥ずかしい限りです。こ、この件は……。」

「心得ています。大将は当然として、誰かに言いふらしたりはしませんよ」


 そんな俄に湧き上がってきた使命感にニート様を見つめながら熱意を燃やしていると、ここで不意打ちが入った。

 最初は言わんとする意味が解らなかったが、それを数瞬後に理解して、慌ててウィローウィスプ卿へ顔を戻すが、そこにあったニヤニヤとした笑みを見続ける事が出来ずに俯く。


 顔が熱いくらいに火照っているのが解った。

 やはりと言うべきか、ウィローウィスプ卿は私が思い悩んで溜息をつくところを見ていたのだ。


 だからこそ、ここへ私を連れてきた。

 この南門前広場にて、エスカ様へ歌を捧げるニート様の姿を見せる事によって、悩みを解決する一助になればと。


 事実、私の悩みは解決された。

 ウィローウィスプ卿が諭してくれたモノは、私の悩んでいたモノと種類は違っても方向は合っており、今では心にあった曇りがすっかりと晴れ渡っていた。


 これでニート様の出兵を笑顔で見送れる。

 ウィローウィスプ卿が冗談めいて言った『新しい妾を土産に持って帰ってくるかも』が非常に気になるところだが、ニート様の帰りを笑顔で待てる。


「ありがとうございます。それと……。」


 それなら尚更の事、今度は私の番だ。

 エスカ様との仲で思い悩んでいるニート様がミルトン王国へ心置きなく笑顔で旅立てる様に全力を尽くさなくてはと決意した。




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