第04話 海は広し
「いやぁ~~……。今日も良い天気ですねぇ~~……。」
俺を先頭にして、その後を四騎が続き、静かな森の街道を行く。
既に一刻ほど変わりばえの無い木だけの光景が続いており、馬の蹄の音がパカラ、パカラと鳴る中、目線が高くなった馬の背から秋晴れの空を見上げて欠伸をする。
だが、反応は何も返ってこない。
いつもなら『街道とは言えども、森の中。油断はなさらないで下さい』的な叱責が生真面目なサビーネさんから飛んでくる筈なのに。
その代わり、一馬身ほどの間を空けて続くサビーネさんから背中に刺さるほどの鋭く強い視線を感じる。
しかも、それは昨日泊まった村を今朝に出発してからずっと続いていた。
やはり、原因は昨日の道中の事。つい、うっかり『揚浜式塩田』の方法を零してしまった為だろうか。
その後、さんざん問われて、そのしつこさに根負けして知る限りの事を教えてしまった。
いや、そうとしか考えられない。
海も、塩湖も無かった山奥育ちの平民の俺が塩業の盛んな地ですら発見されていない確立された製法を知っているなど不可解が過ぎる。
だからと言って、実は『前世の記憶を持っている』とはまさか言えない。
ましてや、その前世の世界がこの世界の文明、文化より遙かに発達した世界であるとは口が裂けても言えない。
まず間違いなく、正気を疑われた末に可哀相なヒト扱いになるだろう。そんなのは嫌すぎる。
むしろ、その程度で済んだら御の字かも知れない。
何処かで聞いた言葉だが、『発達した科学は魔術と見分けが付かない』というものがある。
この世界に魔法は実際に存在はしているが、やはり文明、文化と隔絶しすぎた知識は異端視されるだろう。前世の世界であった魔女裁判の様にだ。
実際、子供の頃にそれと近い目に遭い、可能な限りは気を付けているのだが、ふとした時にどうしても出てしまう。
これからはもっと気を付けるとしよう。サビーネさんという頭の良いヒトが身近に居るのだから。
余談だが、大学では経済学を、社会人になってからは営業一筋だった俺が『揚浜式塩田』なる知識を何故に知っていたのか。
それは前世の末路がニートだったからである。
ここで注意して貰いたいポイントは二点。
一つは、ニートと混同視され易いが、『引き籠もり』では無かったという点。
もう一つは、最初の一年半は気ままに寝て、気ままに起きるという昼夜逆転の自堕落な生活を行っていたが、それ以後は今すぐ就職が決まっても困らない様に夜は寝て、朝は起きるという規則正しい生活を心掛けていた点。
つまり、食事は部屋から出てきて、両親と共に三食を食べていた。
その際、年老いた両親が視ていたテレビチャンネルは大抵が国営放送局だった。
それまで災害発生時の速報の時くらいしか視た事が無かった国営放送局。
お堅くて古臭く退屈なイメージだとばかり思っていたが、これが見慣れてくると意外に面白い。
いつの間にか、朝の連続ドラマですら欠かさずになり、それが早起きのきっかけにもなっていた。
そうした数ある番組の中に全国の様々な街を訪問して紹介する番組があった。
内容は実に有り触れたもの。男女のレポーターが訪ねた街の史跡や文化、芸能、特産名産などを紹介して、その土地の郷土料理を最後に食べるという構成。
しかし、史跡や文化、芸能、特産名産とはヒトが歩んできた歴史そのものである。
とても感心させられる事が多いと共に雑学を学ぶきっかけとなり、その中に『揚浜式塩田』も存在した。
海水を満たした見るからに重そうな二つの桶を天秤棒にぶら下げて担いだお爺さん。
俺よりも遙かに年上の人が俺なら一時間もしない内に投げ出してしまいそうな昔ながらの重労働を行い、自分の仕事を誇らし気に笑っている姿に心を打たれて、番組を見終わった後にハローワークへ出かけた事もあり、特に印象強く憶えていた。
もっとも、印象強くとは言え、その時に一度だけ視たっきり、肝心の製法はあやふや。
だが、そのあやふやなモノですら、この世界にとってはやはりオーバーテクノロジーだったらしい。
サビーネさんの食い付きっぷりはそれはもう凄かった。
三ヶ月ほど前、唐突にサビーネさんの副官を命じられ、それ以来を近くで接してみて解ったが、サビーネさんは明らかに学者肌だ。
解らない事を解らないままで居るのを嫌い、理解を得るまで絶対に諦めない。考えに没頭して、少しでも理解を得ようと努力する。
今も俺が語ったあやふやな『揚浜式塩田』をちゃんとした形とするべく考え込んでいるのだろう。
時折、その背中に突き刺さる様な鋭い視線を弱めては、何やらブツブツと呟いているのが聞こえてくる。
旅を共にしているサビーネさんの部下達は慣れたものだ。
サビーネさんの思考を邪魔せぬ様に口を噤んでいるが、こっちは退屈な上に居心地が悪い。
どうやって、興味を別のモノに移そうか。思わず溜息を漏らして、次の手を考えようとしたその時だった。
「んっ!?」
「……どうしました?」
刹那、サビーネさんの視線が緩んだ瞬間、サビーネさん以上に突き刺さる視線を感じて、慌てて手綱を絞って馬を止める。
一呼吸を置き、サビーネさんも思考の没頭から我に帰って馬を止め、その問いかけに視線を一瞬だけ背後に向けた後、掌を背後に向けながら左腕を水平に伸ばして無言で応える。
その合図にすぐさま後続の三騎がサビーネさんの元に馬を進め、その両脇と背後を固めた。
「どうした? 出てこないのか? まあ、こっちは一向に構わないんだが?」
馬達が漂い始めた緊張感を感じ取り、鼻息を落ち着きなく荒くする中、右手に持つ槍の石突きで大地を強かに叩き、槍を直立させる。
そして、腰に下げた短弓を構えると、矢を番えて、その狙いを十メートルほど先にある街道左脇の木に定めた。
「ほう、儂の気配を感じた上に位置まで違わずとは……。その若さで感心したぞ」
それに応えて聞こえてくる含み笑い。狙いを定めた木の影から初老の男が姿を現した。
「この一ヶ月間、出てきたのは魔物ばかり。
平和なところだなと感心していたが……。残念ながら、お前の様な輩はやっぱり何処にでも居るらしいな」
矢の狙いを定めているにも関わらず、全く気にした素振りを見せず、街道の真ん中まで堂々と進み出た初老の男。
その目が合った瞬間、全身の毛穴という毛穴が一斉に開き、冷や汗がブワッと噴き出した。
まるで肌がチリチリと焼ける様な感覚。それに覚えがあった。
それがあの戦奴として参加した初陣にて、一騎駆けを行ってきたおっさんを迎え撃とうとその目の前に立った時の恐怖と知り、短く息を飲む。
どうして、こんな化け物がチンケな盗賊稼業などやっているのか。そんな疑問が頭を過ぎるが、目の前の現実は変わらない。
一瞬たりとも目どころか、意識すら離せない。
空元気の何食わぬ顔で軽口を叩き、油断したら身体が震えてきそうな自分自身を奮い立たせる。
「まあ、そう言ってくれるな。儂にも事情というものがあるのだよ」
「ふん! その歳になっても、手下がやっと四人。どうせ、儲かってないんだろ?」
一方、初老の男は余裕綽々の涼しい表情。両腰に下げた剣すら抜いておらず、自然体を保ったまま。
だが、今構えている弓矢を放ったところ、神速の抜刀と共にあっさりと撃ち落とされてしまう近未来が容易く見える。
ふと視界の両端にある森の中を駆け抜けて行く四つの影。
恐らく、これで後方は塞がれた。サビーネさん達が気がかりではあるが振り向けない。
どうしたら良い。腕が最も立つという事で隊列の先頭を任された者として、早く決断しなければならない。
とてもサビーネさん達をかばって戦える相手では無いし、それ抜きにしても勝つのは難しい。ここは逃げの一手となるが、進むか、退くかが問題となる。
「ふっ……。なかなか手厳しいではないか。
さて、そろそろ始めようか? それとも、様式美として、こう言った方が良いかな? 女と金目のモノを置いてゆけば、命だけは助けてやるぞ、と」
そんな俺の迷いなど放って、初老の男は身体の前で腕をクロスさせると、両腰の鞘から剣をゆるりと抜き放った。
しかし、構えは取らない。その両の腕と共に二つの剣先をだらりと下げて、再びの自然体。
いや、それ自体が構えなのか。ただ立っているだけにも関わらず、隙が全く見当たらない。
それにしても、なんと絵になる姿だろうか。
身に纏っている皮鎧と衣服は盗賊らしくみすぼらしいが、一つ、一つの仕草に優雅さを感じる。
老いは隠せず、年相応の皺を刻んでいるが、その顔は実に整っており、髯と軽くオールバックさせた金の髪と相まって風格を醸し出している。
正直、おっさんより貴族っぽい。さぞや、若い頃は何人もの女性を虜としてきたに違いない。
「抜かせ!」
だから、前に進むと決めた。
緊張をし過ぎて乾ききり、口の中に湿り気は無いが、音をブッと立てながら唾を地面に吐き飛ばす真似をする。
そう、あらゆる世界の共通の合い言葉『リア充、死ね』と言う奴だ。
但し、弓では絶対に勝てない。
その横を馬で駆け抜けようとしても、馬を斬られて落馬するだけ。
だったら、弓は要らない。邪魔になるだけのものは投げ捨てる。
先ほど大地に直立させた槍を抜いて手に取り、背中に隠した左手でハンドサインをサビーネさん達に送る。
即ち、強敵故に次の合図が有り次第、前方に向かって、全速力で逃げろと言う合図。
それを受け取り、すぐさま左隣へ進み出てきた一騎に馬の手綱を渡して下馬する。
幸いにして、ここは森の中であり、猟師である俺の領分。
例え、勝てなくとも、一人だけなら幾らでも何とか出来る。最優先するべきはサビーネさん達をこの場から逃がす事だ。
「弓を捨てて、馬からも下りるか。なかなか良い判断だ」
「そいつはどうも……。っと!」
初老の男が眉をピクリと跳ねさせて含み笑う。
それがますます癪に触ったが、間一髪を入れずに一足飛んで間合いを詰め、渾身の突きを放つ。
こちらが欲するのはたった数秒の隙。それは二の手を半ば放棄した捨て身の突き。
「……温いな」
「なっ……。にぃぃっ!?」
金属と金属が打ち合う剣戟の音。驚愕のあまり目をギョッと見開く。
俺にとっては渾身の突きでも、目の前の相手には通じない。弾くか、避けられるとは予想していたが、この様な方法でとはまさか考えもしなかった。
初老の男は腕を下げたまま、双剣の剣先を交差。まずは小さなハサミの様な形を作ってみせた。
その後、こちらの槍の軌道を読み、槍頭の根元を下から双剣が交差する支点に持ち上げて乗せると、ハサミを閉じて掴み、両の手首を捻り返した。
傍目には、初老の老人がただ単に剣を持った両手を肩まで上げただけにしか見えなかっただろう。
だが、その実は恐ろしく繊細な高等技術。それを命のやり取りをしている中、まるで息をするかの様な当たり前の動作で行ったのだから驚くしかない。
一方、俺はと言えば、体勢を大きく崩していた。
掴まれた槍頭の根元をテコの原理で返され、上半身を仰け反らせながら槍を両手に握り持ったままで万歳をしている有り様。
「速さは申し分無かった。
しかし、逃げに意識を割いた分、鋭さに欠けてしまった様だな」
「くっ!?」
無論、その隙を逃す理由は無い。
初老の男が攻撃に転じて、双剣を何度も交互に繰り出し始める。
慌てて相手と正対して、体勢を整え直す。
槍を持ち替えて、柄の中程を左手では順手で持ち、右手では逆手で持ち、相手の攻撃を槍の両端を使って防いでゆく。
リズミカルな剣戟の音が森に絶え間なく響き渡る。
おっさんもとんでもない化け物だが、目の前の男もとんでもない化け物だ。
しかし、俺は有る意味で運が良い。
おっさんと初陣で相対した時もそうだったが、これが体力、気力の充実している全盛期にもし出会っていたら、もっと一撃、一撃が重くて鋭く、あっさりと斬られていたに違いない。
だが、おっさんと同様に年齢と経験を重ねた分、老獪と言うべきか、技が冴えている。
実際の剣筋に加えて、目線や殺気、残身などの全てにフェイントを織り交ぜており、攻撃が左右交互に来ると解っていながら虚実の判断が難しい。
正しく、剣の結界と言うべき攻撃。
初老の男はゆっくりと前進しているだけで征圧してゆき、こちらは間合いを弾かれて、ただただ一歩、二歩、三歩と後退してゆくしかない。
その攻めあぐむ焦りを悟ってか、初老の男が口の端をニヤリと吊り上げる。
「どうした? 出てこないのか? まあ、こっちは一向に構わないんだが?」
「馬鹿にして!」
それは俺が戦い前に隠れていた初老の男を挑発した言葉。
そっくりそのまま返され、頭が瞬時に沸騰。それは剛力を呼び、右下段から振り上げられようとしていた相手の左の剣を激しく弾く。
その勢いを余らせて、土を抉って深く突き刺さる剣先。初老の男の左腕が止まる。
絶好の好機。即座に腰を捻って、槍を右奥に引き絞り、溜めた力を爆発させようとした次の瞬間だった。
「っ!?」
寒気が背筋に走った。考えるよりも早く、身体が後方へと跳ぶ。
その直後、俺が一瞬前に居た場所に凝縮された濃い殺意が電光石火の速さで伸びてくる。
それは剣の柄頭を握り締めた拳の中指と人差し指の間に挟みながら、手首と肘、肩、腰、脚の捻りが全て乗った右の突き。
しかも、それは後方へ跳んでいる最中の俺を追いかけて、俺の胸元を貫こうと更に、更に伸びてくる。
まるで時間がスローモーションの様にゆっくりと流れてゆく感覚の中、のろまな動きを見せる自分の腕に焦り苛立ちながら槍を胸元に引き、その柄を盾代わりに使う。
その結果、正に間一髪のタイミングで剣の切っ先と胸元の間に槍の柄を割り込ませる事に見事成功。
ところが、剣の切っ先と槍が接触した瞬間、木が裂け割れるバキリという音が鳴った。
「ほう、やるではないか。
儂のとっておきを受けて尚、生きていられたのはお前が二人目だ。自慢すると良い」
足が大地に着き、見開ききった目で見ると、初老の男は右手の剣を俺に伸ばしたままで左右の足を前後に限界まで開き、地に伏せる様な前傾体勢。
一拍の間の後、胸元にチクリとした痛みが走り、下を覗き込んでみれば、剣先が胸元の皮一枚を斬り、その先端のみが微かに突き刺さっており、槍は真っ二つに分かれていた。
思わず見開ききっている目を更に見開かせて、生唾をゴクリと飲み込む。
俺が使っている槍は、初陣の戦場跡地から失敬してきた品。
おっさんの見立てによると、その槍頭は拾い物にしてはなかなかの業物らしい。
柄だって、さすがにおっさんの赤い鉄槍には負けるが、材質は樫の木。乱暴に扱っても折れず、掘り出し物だなとも言ってくれた。
だから、使い勝手が良い様に大枚を払って、最初に付いていた槍頭根元の鎌の様な片刃を鍛冶屋に頼んで取り払い、ずっと愛用してきた。
今、その槍が真っ二つに真ん中辺りで折れていた。それだけで今の突きの威力が伺い知れる。
もし、まともに受けていたら、ただ突き刺さるだけでは足りない。胸を抉り取られて、穴が空き、背中まで貫通していたのではなかろうか。
だが、それを安堵してどうなる。
槍を失った今、どうするか。二本となった槍で二刀流など馬鹿げている。
一応、親父からは二刀流の手解きも軽く受けていたが、目の前の男と同じ土俵に上がって勝てる筈が無い。
こうなったら、一か、八か。死中に活路を求めるしかない。
本当は心の底から嫌だけど、腕の一本も犠牲にすれば、サビーネさん達を逃がすくらいは出来るだろう。
「止めておけ。もう勝負は決した」
「うぐっ!?」
しかし、その考えすら読まれたのか、初老の男が鋭い視線をギロリと向ける。
思わず身体がビクッと震えて竦み、決意が鈍りかけるが、心を奮い立たせて睨み返す。
どうしてか、サビーネさんは俺を酷く嫌っている様だが、やっぱり女性。
エステルが遭った様な酷い仕打ちは二度と御免だ。今度、守れるのに守れなかったら、俺はどうしたら良いのかが解らなくなる。俺が俺である為に諦めるなんて絶対に出来ない。
「だが、合格だ」
「……へっ!?」
「今からお前は儂の息子だ。さあ、父と呼ぶが良い」
すると初老の男性は前に出している足を戻して、体勢を整えると、二本の剣を鞘に収め、放っていた殺気を霧散させた。
挙げ句の果て、腕を組みながらウンウンと頷き、いきなり意味不明な事を言い出したかと思ったら、両手を左右に大きく広げて、『飛び込んで来い』と言わんばかりに微笑んだ。
「えっ!? えっ!? えっ!?
……って、あ、あれっ!? ど、どうしてっ!? な、何でっ!?」
場の空気が一気に緩み、竦んで強張っていた身体も緩んで茫然と目が点になる。
何が何やら、さっぱり訳が解らない。思わず助言を求めて、背後を振り返り、今更ながらに気付く。
森の中、先ほど街道の左右を通り抜けていった四つの影。
背後を塞がれて、サビーネさん達も懸命に戦っているとばかり思いきや、そんな様子はちっとも見当たらない。
全員、下馬しており、見知らぬ四人の顔も加わって、目を丸くした驚き顔を横に列べている。
但し、気のせいか、どうも俺が驚いている理由とは違った理由で驚いている様に見えるのは何故なのか。
「わっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!」
「こ、この声はっ!?」
突如、森に木霊して響き渡る笑い声。
その声を俺は知っていた。この六ヶ月間、ずっと待ちに待ち望んでいた声だった。
すぐさま振り向き戻ると俺の期待通り、先ほど初老の男が隠れていた木の影からおっさんが姿を表す。
「どうやら、儂が居なくとも鍛錬は怠っていなかった様だな! 小僧!」
「お、おっさんっ!?」
ますます訳が解らず、混乱は深まるばかり。
どうして、おっさんがここに居るのか、目の前の初老の男は何なのか、全てが解らない事だらけ。
そんな中、只一つだけ解っている事があった。
それは約六ヶ月ぶりにおっさんの顔を見て、心の底から安堵したという事だ。
「えっ!? あれ? あれ? あれ? ……な、何だ? こ、これ?」
付け加えて、命のやり取りをしていた緊迫感との落差から腰の力が急にストンと抜け、その場に尻餅をついてしまい、暫く立ち上がれそうに無かった。