幕間 その5 続々々・ショコラ視点
「ど、どうしよう?」
塔の中を響き渡る音がカツーンカツーンとこちらへゆっくり近づいてくる。
その正体は考えるまでもない。お祖父様との勝負に勝ち、次なる目的を果たそうと王城に繋がるこの塔へ入ってきた叔父様の足音だ。
嘗て、地中深くに埋もれ、悠久の時を過ごす過程で腐敗してしまったのだろう。
この塔を始めとする地下空間に存在する全ての建物に木製の部分、木製の品は存在しない。
壁も、床も剥き出しになっており、非常に固くて、その手触りは石そのもの。
まるで巨大な岩を削った作ったかのように継ぎ目が見当たらず、その点から漆喰のようなものと推測されるが、鉄の棒で力一杯に打ってもちょっぴり欠ける程度。私が知っている漆喰とは強度が大きく違う。
また、その強度が持つからこそだろう。
この塔は上層へ至る階段を中央に置き、それが階段、踊り場、階段、踊り場を繰り返す半吹き抜け構造になっており、私達以外は誰も居らず、小動物をたまに見かける程度の生活音の無さも加えて、ちょっとした物音が木霊して大きく響く。
「こ、こうなったら……。」
私の心は暴風雨の海原のように渦巻いて荒れていた。
聞こえてくる足音のリズムで手に取るように解る。今、叔父様はお祖父様との戦いを経て、歩くのも億劫な精も根も尽き果てた状態だと。
一方、今の私の身体は火が着いた状態どころか、身を焦がすほどの炎が轟々と燃え盛った状態。
今、叔父様と顔を合わせるのは危険だった。今の叔父様だったら押し倒すのも簡単なら、そのまま事にまで及んでしまうのも簡単であり、それを自制するのは今の私に難しかった。
なにしろ、私の女の部分は叔父様が欲しいと全力で訴え、足音が聞こえてきた時からキュンキュンと高鳴りっぱなし。
スカートの中では許容量の限界を超えてしまったパンツが防波堤の役目を失い、雫が内股を伝うまでもなく床へポタリポタリと滴り落ちていた。
しかし、しかしの二律背反。私は勝利者たる叔父様を出迎えなければならない大事な役目を担っている。
この上は燃え盛る炎を少しでも鎮火させる必要が有ると考え、スカートを左手で捲くり上げて、右手を濡れ染みで色濃くなった水色のパンツの中心へ伸ばす。
「馬鹿! 何、考えてるのよ!」
だが、指先がそこへ接触する寸前、正気を取り戻した。
慌てて右手を引き戻すと共に捲り上げたスカートも叩き付けるように戻して、一瞬でも愚かな考えに至った自分自身を罵る。
先ほどもいったが、この塔は音がとても響く。
ソレを実行したら、その音はいやらしく塔の隅々まで響き渡るに違いない。
女性との経験を豊富に持つ叔父様の事だ。
最初は何の音かと戸惑うだろうが、その音の正体にすぐ辿り着いてしまうだろう。
こんな時に、こんな場所で。
叔父様からみたら、非常識極まりない変態さんである。きっと私の恋は終わる。
第一、猫族の娘がすぐ近くに居る。
視線を確認の為に向けてみれば、未だ気絶中のようだが、次の瞬間に目を覚ますかも知れないのだ。
ソレは誰しも大人になる過程で自然と覚える行為である。
結婚適齢期を迎えた女なら週に二度、三度は必ず行なっている行為であり、ソレを行うのは決して悪い事ではない。
ただ、ソレは人知れずにひっそりと行う秘め事。
同性同士とはいえども、ソレの現場を目撃されてしまったら、それは間違いなく生涯に渡っての記憶に残る強烈な恥となる。
私の身体は本当にどうなってしまったのか。
頭が熱と快感に侵されているとはいえ、当たり前の倫理観すら忘れて、ソレを実行寸前にまで至ってしまうなんて。
「どうしたっ!? 何があったっ!?」
しかし、ソレを踏み止まれたのは良かったが、正気を取り戻す為に叫んだのが失敗だった。
叔父様が疲労困憊の身体に鞭を打って走り、階段を途中で踏み外したっぽい音を響かせながら立ち止まるも即座に再び駆け、この場へ私の心の準備が整う前に到着した。
「んぁっ!?」
私の身を案じてのその行動に胸が嬉しさにキュンと高鳴る。
同時に私の女の部分を刺激するスパイスにもなり、快感が身体中を駆け巡り、すぐさま右手で口を覆ったおかげで声を発するのは辛うじて防げたが、足が床から一瞬離れるほどに腰が勝手に跳ねた。
「ショコラちゃんっ!?」
すぐ近くで猫族の娘が気絶しているのもあって、それは不安を抱かせるに十分な理由だったに違いない。
叔父様が血相を変えて駆け寄ってくるが、その両手が私を掴もうと持ち上がりかけるの目に入れ、慌てて右掌を勢い良く突き出して叫ぶ。
「大丈夫! 大丈夫ですから!」
「でも!」
「あの娘もお祖父様の気当たりで気絶しているだけですから!」
神速の世界の中、お祖父様と斬り結び、結びきれずに負った各所の切り傷から流れる血。
マジックアイテムの特殊能力を用いた代償だろう。この地下空間はひんやりとした肌寒さを感じるにも関わらず、まるで真夏の炎天下に長距離を走ったかのように額から滴る汗。
その二つの臭いが駆け寄る際に生まれた風に乗って、私の鼻孔に届いて擽ると、今まで以上に強い快感が連続的に走ると共に火花が視界の中でバチバチと飛び散った。
今先ほどの失態を繰り返すまいと胸を強く意識して張れば、固く尖った胸の先っぽが日頃は優しく包んでくれているブラジャーに圧迫されて、それが新たな快感を呼ぶ火種となる始末。
そう、今の私にとって、今の叔父様はあまりにもセクシーで危険だった。
叔父様がこの場を訪れる前、私は叔父様の身を案じていたが実際は逆だ。これでは私が危ない。
間違いなく、私は叔父様に触れられただけで絶頂に達する。
それもここまで耐えきって至るのだから、あられもない嬌声をあげながら失禁した上に失神もするだろう。
そうなったら、同じ失禁と失神でも猫族の娘以上の痴態である。
猫族の娘はお祖父様の殺気を浴びたのだから仕方ないと同情を誘えるが、私の場合はそれが無い。
失神した理由が介抱される際に失禁とは別の臭いでバレてしまい、変態さんのレッテルを貼られてしまう。
その上、別の厄介な問題も有る。
お祖父様は叔父様にとっての父親なら、私にとっての祖父である。
血の濃さで比べたら、叔父様の方が上だが、お祖父様と過ごした時間は私の方が圧倒的に上であり、お祖父様と私は剣の師弟関係でもある。
これを踏まえて、私が今とった態度は傍目にどう映るか。
決まっている。お祖父様を討ち取られた憎しみと恨みから強く拒絶したとしか見えない。
ちなみに、勝負の結果について、私の心中を語るなら複雑だ。
お祖父様は左腕を肩から断たれており、その際の出血量が多すぎる。残念ながら、命の灯火が消えてしまうのはそう遠くない。
もしかしたら、素早い応急処置を的確に素早く施せば、命だけは助かるかも知れないが、それを肝心のお祖父様が絶対に望むとは思えない以上、その可能性を考えるのは無駄でしか無い。
それ故、孫として語るなら悲しみも有れば、叔父様への憎しみも有る。
だが、私はお祖父様の慟哭を知った。一人の剣士として語るなら、お祖父様を老いによる衰えの呪縛から開放してくれ、大きな満足を与えてくれた叔父様には感謝している。
しかし、それを今語っている暇は無い。
私の態度はきっと誤解を生むだろうが、変態さんのレッテルを貼られるくらいなら、ここでの誤解は甘んじて受けるし、挽回は幾らでも後から効く筈だ。
「ショコラちゃん、俺……。」
案の定、動きを止めた叔父様の声は沈んでいた。
その憂いを帯びた表情が私の乙女心にジャストミート。思わず熱い吐息を漏らしそうになるが、叔父様の眼差しもまた沈んだのに察知して、目をギョギョッと見開く。
実を言うと、先ほど静止を叫ぼうと腹筋に力を入れた拍子にプシュリと勢い良く漏れていた。
確認はしていないが、失禁では無いソレは両足の間に零れ落ちて、ちっちゃな水溜りを作っている筈であり、ソレは何かと叔父様から問われるのはとても都合が悪かった。
「お祖父様は真剣勝負を望み、叔父様はそれに応えた!
それが全てです! だから、何も言わないで下さい! それより、これを!」
叔父様の注意を惹く為、慌てて右手をスカートのポケットの中に。
そこから取り出した意匠を凝らしたラベルが貼られているガラス製の茶色い小瓶を勢い良く差し出す。
「ええっと……。それは?」
思惑通り、叔父様の視線は私へと戻ってきたが、既に叔父様を直視しているのすら辛い。
膝が微かに震え、自分自身を支えるのがやっと。ちょっとでも気を抜いたら腰が落ち、そのまま尻もちを突きかねない。
誤解をより深める結果になろうと構わず、顔を首が痛くなるくらい真横に背けるが、私の意思とは裏腹に目が、身体が叔父様を勝手に求めてしまう。
そう長くは保たないと確信する。
内股を伝って流れる雫は量と早さを次第に増しており、目眩まで感じ始めた。
こうなったら、正気を保っている内に役目を済ませて、この場からさっさと立ち去るに限る。
その結果、叔父様に猫族の娘の後始末を任せる事になるし、その過程で猫族の娘の失禁が叔父様に知られるだろう。心苦しさを同じ女として感じるが、やっぱり我が身が可愛い。
「お祖父様から事前に預かっていました! 聞けば、今代の姫巫女様が自ら祝福を授けたポーションだとか!
なら、これを飲めば、怪我がたちどころに治り、体力も回復する筈! 今の叔父様に必要なものです!
それとどんな理由が有れ、これから王妃様と面会するのにそのままでは無礼に当たります! せめて、身体を清めて下さい!
少し温くなったでしょうが、あそこに湯と布を用意してあります! ……それじゃあ、私はお祖父様の様子を見てきますので!」
そうと決まれば、善は急げだ。
用件を伝えている途中、叔父様が口を何度か開きかけたが、間一髪を入れずに捲し立てる。
最後にポーションを押し付けるように渡して、この場から去ろうと叔父様の横を通り抜けようとしたその時だった。
「待ってくれ!」
「キャっ!?」
叔父様が私を立ち止まらせようと右手を伸ばしてきた。
ここで叔父様に触れられたら、今までの努力が水の泡。慌てて避ける。
だが、タイミングが悪すぎた。
駆け出そうと踏み出した瞬間だった為、叔父様との距離を大きく空けてのサイドステップ。オーバーアクションになってしまった。
「ショ……。ショコラちゃん?」
叔父様は大きく見開いた目をパチパチと瞬き。
その表情に驚き以上の戸惑いを暫く浮かべた後、自虐的な笑みを口の端に小さく乗せた。
山盛りの誤解を与えてしまったのは明白だった。
それも時間を置けば置くほどに挽回が難しくなる類いであり、すぐさま誤解を解く必要があった。
「ち、違うんです! お、叔父様!
わ、私は! だ、だから……。そ、そのですね! え、ええっと……。」
だが その為には私の身体で今起きている不可解な現象を説明しなければならず、それが出来たらとっくにしている。
慌てて弁解しようとするが、上手い言葉が出てこずに詰まらせていると、叔父様は首を左右にゆっくりと振りながら自虐的な笑みを深めた。
「解っている。良いんだ……。
それよりもショコラちゃんに聞きたい事が有る。このポーションだけど……。」
私は『解ってないし、良くもない!』と声を大にして叫びたかった。
しかし、私は変態さんのレッテルを貼られる事を拒み、押し黙る術を選んだ。
******
「お祖父様……。」
お祖父様は決着が着いた場所から一歩も動かず、そこに居た。
失った左腕の肩口を右手で押さえているが、出血は勢いを弱めても未だ止まっておらず、その左半身を赤く染めながら足元に血溜まりを広げて。
近くで見て、改めて感じた。
顔どころか、唇すら血の気を失って青みがかり、今正に命の灯火が消えかかっているのを。
だが、命を長らえたとしても剣士として終わった今、お祖父様が余生を望んでいないのは一目で解る。
その証拠に地下空間の天井をぼんやりと見上げながら微笑む横顔は満足に満ち溢れており、とても穏やかだった。
なにしろ、お祖父様といったら、皺を眉間に刻んだ険しい表情。その印象が強い。
日常生活の中ですら、間合いの一歩手前へ入っただけで鋭い視線が、死角へ入ろうとすれば殺気が即座に飛んでくるのが常だったが、それが無いばかりか、今は逆に隙だらけ。
「んっ!? ああっ……。ショコラか。
ニートはどうした? まさか、置いていかれたのか?」
しかも、私が声をかけるまで接近に気づかなかったらしい。
こちらへ振り向けた顔は心底に驚いており、こんなお祖父様は初めて見るだけに戸惑いながらも用件を伝える。
「叔父様がお祖父様にこれを……。」
「なっ!? あいつ、飲まなかったのか?」
「いえ、飲みました。但し、半分だけ……。残り半分はお祖父様に譲るそうです」
スカートのポケットの中から取り出したガラス製の茶色い小瓶の中で揺れた液体が音をポチャンと鳴らす。
姫巫女様が自ら祝福を授けたポーションといえども万能では無い。本人に生きようとする強い意思が無かったら、小瓶の中身が満杯であったとしても意味は無い。
しかし、痛みは確実に和らぐ。
そうポーションを半分飲んだ叔父様に言われて、私は残りの半分を託されていた。もし、お祖父様が飲まないなら捨ててくれと付け加えて。
「馬鹿が! いつか、その情けがお前を殺すぞ!
大体、自分が今どれほど大事な役目を担っているかが解っているのか!」
言わなくても、それが解っているのだろう。
お祖父様は激しく毒づきながらもポーションを受け取ると、まずは切断された左腕の肩口に振りかけて、次に飲み口を口に運んだ。
「んっ!?」
だが、小瓶を傾けようとする寸前、動きをピタリと止めた。
数拍の間の後、ポーションを胸元まで下ろして、それをまじまじと暫く見つめると、今度は私をまじまじと見つめ始めた。
その不可解な行動に思わず首を傾げる。
しかし、お祖父様がポーションを口ではなく、鼻まで運び、鼻を頻りにスンスンと鳴らし始めた瞬間、お祖父様の意図を即座に悟り、私の胸はドッキーンと高鳴った。
実を言うと、どうしても我慢が出来なかった私は致してしまっていた。
叔父様と別れた後、塔から出ると、ここには真っ直ぐに訪れず、塔の裏へ回って。
勿論、事後は手をきちんと洗ってある。
塔の裏には今日までの地下空間生活を支えてきた水場が有り、そこは新鮮な水が常に湧き出ており、水量も膝まで浸かれるほど豊富。手を洗った後は汚れた下半身も洗い、特に大事なところは二回目をつい始めたくなったくらい念入りに洗ってある。
衣服に汚れは付いていない筈だ。
きっと凄い事になる。そう事前に予想が出来た為、面倒臭さと逸る気持ちを必死に抑え、服を脱いで全裸になってから済ませている。
実際、凄かった。最初から最後まで十を数えるまでもない瞬間的な出来事だったが、本当に凄かった。
そこへ触れた瞬間、待っていましたと言わんばかりに大きな波がザブンと一回。間を置かず、荒々しい波に何度も翻弄されて、最期に襲ってきた大きな波が私を飲み込んだ際、背が弓なりに反って跳ね、後頭部を寄りかかっていた壁にぶつけた痛みが無かったら、私の意識は確実に海の底へと深く深く沈んでいたのは間違いない。
唯一の懸念を挙げるとしたら、今の私はパンツを履いていないという点だ。
水場が有り、致す前から汚れていたパンツが有るのだから、洗濯するのは当然であり、洗濯でズブ濡れとなったパンツを履く気にはなれず、今は塔の出入口近くで乾燥中。後程、回収予定になっている。
もし、臭うとしたらソコからだが、スカートという壁が臭いを外に漏らさないように守ってくれていると信じている。
それでも、今すぐ右手を嗅ぎ、臭いの有無を確かめたいが、それを行なったが最後、女性相手に百戦錬磨なお祖父様に致した事を暴露するも同然であり、その衝動を必死に堪える。
「ショコラ、お前……。」
「な、何っ!?」
「そうか……。遂に目覚めてしまったか」
「えっ!? えっ!? えっ!?」
長い沈黙の末、お祖父様は溜息を深々と漏らした。
その一緒に漏れた言葉の意味が解らずに戸惑うがお構いなし。喉をゴクゴクと鳴らして、残っているポーションを飲み干すと、再び溜息を深々と漏らした。
そして、私を一瞥。連続して三度目になる溜息を深々と漏らす始末。
こうも言いあぐねられ、私の胸は今にも張り裂けて飛び出してきそうなくらいドキドキと高鳴った。
嫌な予感ばかりが募る。気づく筈が無いと、気づいたところで解る筈が無いと自分自身に言い聞かせながら強く祈る。
「自慰で済ませたのか? もし、そうなら無駄だぞ?」
だが、祈りは届かず、現実は厳しかった。
全く飾らない直接的な問いかけに思わず身体がギクリと跳ねた。
言葉後半の『無駄』という部分がとても気になったが、まずは乙女の尊厳を守る為に反論しなければならない。
「は、はぁっ!? い、いきなり、何をっ!?」
「足運びに変わりは無くて、時間もそれほど経っていないからな」
「だ、だから、何をっ!? お、お祖父様、何を言ってるのっ!?」
ところが、今の危機を予測して用意していた筈の反論が頭の何処にも見当たらない。
そればかりか、声が裏返って反論どころか、肯定したも同然の態度に動揺はますます激しくなり、何でも良いから早く言い返さなくてはと焦りまで併発する。
「安心しろ。……というのは無理か。
お前のそれはレスボス侯爵家の血……。いや、呪いと呼ぶ方が妥当か」
「ち、血? の、呪い?」
「そうだ。これを見ろ」
そこへ追加されたのが、予想外な胸騒ぎを覚えるキーワード。
動揺と焦りの上に困惑まで生じ、目をパチパチと瞬き。言われるがままにお祖父様がひっくり返した親指の先へ視線を向ける。
「左腕を断たれ、今も激痛を感じていると言うのに勃っておる」
「たっておる?」
「ほれ、ギンギンのビンビンだ」
最初は何が言いたいのかが解らなかった。
だが、お祖父様がニヤリと笑いながら腰を突き出した瞬間、ズボンの股間部分が不自然に突っ張っているのに気づくと共に意味を理解して、目をこれでもかとギョギョッと見開く。
「にっ!? ……にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
即座に後退り、更に背後へ倒れそうになるくらいの勢いで後退る。
同時に近寄るなという意思表示に開いた両掌を突き出すが、お祖父様との距離を十分に取り、立ち止まったところでこれが間違いだと気づく。
今の私はパンツを履いていない。
あまりにも無防備なソコを守る為、股間をスカートの上から両手で力強く押さえる。
何度も強い好奇心に駆られながらもソコを傷つけず、今日まで大事に守り続けてきたのは何の為か。自分の為、叔父様の為、来たるべき幸せな未来の為、絶対に死守しなければならない。
お祖父様の事は信頼しているが、お祖父様の女癖の悪さは信用が出来ない。
いつでも動けるように腰を少し落として、お祖父様の一挙手一投足を見逃すまいと鋭く尖らせた視線を向けると、お祖父様は喉の奥が見えるほどの大笑いをあげた。
「はっはっはっはっはっ! さすがの私も孫相手に食指は伸びんよ。
むっ!? 早速、痛みだけは引いてきたか。さすが、姫巫女が自ら祝福したモノだけの事はある。
まあ、値段もそれ相応だったが……。
さて、せっかくニートがくれた時間だ。少し長くなるが、今言った呪いという部分も含めて、お前に話しておくか」
どうやら身の危険は無いらしい。胸をほっと撫で下ろす。
しかし、ソコへスカート越しに触れた瞬間、腰が勝手にビクッと跳ね、この場へ訪れる前に冷ましたばかりの身体が再び火照り始めているのを知って戸惑うしか無かった。