表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無色騎士の英雄譚(旧題:無色騎士 ニートの伝説)  作者: 浦賀やまみち
第十三章 男爵 オータク侯爵家陣代 百騎長 ミルトン王国戦線編 上
105/140

第07話 十年の決着と末路


「大任を任されておきながら、それを果たせず、誠に申し訳御座いません!」


 季節が夏に入り、寝苦しさが増えてきた昨夜、ちょっとした事件が起こった。

 街の西区にある商家の倉庫から出火したらしい炎が乾燥した空気と東南の風に煽られて燃え広がり、この事態に前の世界で言うところの消防署の役目を兼ねる軍は初動に大きく遅れてしまい、街の西区の三割弱が灰と化した。


 このネプルーズの街を占領してから既に一ヶ月半。

 気の緩みが初動の遅れに繋がったのは明らかではあるが、二週間後の再侵攻に備えての書類整理を行っている机の向こう側にて、彼が土下座を行っている理由は違う。


 むしろ、彼は出火元近くに居た為、どこの部隊よりも現場に早く到着して、消火作業と住民避難の見事な指揮を執っている。

 これだけの大火事でありながら、人的損害が軽傷者のみで済んだは彼のおかげと言っても良いほどであり、褒める事はあっても、罰する事は何も無い。


 だったら、何に対しての謝罪を行っているか。

 それは俺が兼任する事となった新たな役職に起因する。


 ボンクラが国家反逆罪に処せられて、空位となった捕虜収監責任者。

 この一件に関係深い俺が責任を取る形で新たな座に就く事となったのだが、参謀長の仕事が忙しくて、とても兼任しきれずに代理を立てたのが彼『ヒューゴ・デ・ミラー・ジェイド』である。


 苦労人を感じさせる白髪が少し混じった茶色い髪とモミアゲから繋がる短く切り揃えられた顎髭。

 やや大柄なガッチリとした体格をしており、武官としても、文官としても平均点以上の能力を持っており、何事もソツなくこなす。


 ただ、実直で正義感が強い性格が災いしたのと今まで上司に恵まれなかったせいだろう。

 この一年の様子を見ていた限り、もっと出世していても良い筈が 捕虜収監責任者代理となる以前は今年で四十五歳を数えながらも無役の平騎士でしかなかった。


 そんなジェイド卿を十騎長に昇進させると共に抜擢してみたところ、これが見事なくらい捕虜収監責任者代理という役目にピタリとハマった。

 その性格故に不正を許さず、捕虜の生活レベルはミルトン王国での身分に関係ない一律のモノとなり、ボンクラが許していた捕虜へ対する理不尽な暴力も禁止されて、捕虜収容所は健全化した。

 問題を強いて挙げるなら、ブタが下がった生活レベルについてゆけず、何かと文句をブーブーと喚き、酷い時は癇癪を起こして、暴力を周囲に振るい、その被害による怪我人が既に十人を超えている事か。


 余談だが、捕虜審問の結果、ブタは高額な身代金を課さられて、正式な捕虜となっている。

 第三王子派の面々はジュリアスが馬鹿にされた事を理由に斬首を強く訴えたが、その馬鹿にされたジュリアス本人が『賄賂による約束とは言えども、約束は反故されるべきでは無い』と主張して、それが決定打となったからだ。


 しかし、そのブタが死んだ。

 昨夜、ジェイド卿が最低限の要員を捕虜収容所に残して、部下達と火事現場で消火作業を行っている最中、ブタは何者かに殺された。


 今現在、捕虜収容所として使われている屋敷は占領時に軍が接収した元貴族の屋敷であり、捕虜収容所とは思えない立派な外観を持つ。

 どうして、そこを捕虜収容所として定めたのかと言ったら、今後はこのネプルーズの街が前線基地となり、これからも捕虜が増えてゆく事を考えたら、それなりの敷地とそれなりの部屋数、自力では越えられない敷地全体を囲った高い壁の条件を兼ね備える屋敷がこれしか無かったからだ。


 その屋敷二階にあるバルコニーからの転落死。

 そう装われてはいたが、数多の殴打の痕が身体中に有り、顔に至っては人相が解らないほどに腫れ上がっているとか。


 勿論、犯人の捜索は今も行われているが見つかっていないし、この先もまず見つからないだろう。

 この世界に前の世界の様な発達した科学捜査は無い。現行犯逮捕でない場合、目撃証言が絶対に必要であり、その目撃者が一人も現時点で見つかっていないのだから仕方が無い。


「金貨、……枚」

「えっ!?」


 書類整理の手を止めて、両肘を机に突きながら組んだ両手の上に顎を乗せて告げると、ジェイド卿は伏せていた顔を上げ、その表情に戸惑いを浮かべた。

 当然の反応だ。金貨は存在を知っていても、よっぽどの富裕層で無い限り、手に取る事はおろか、見る事も縁が一生無い為、その数字を告げられても比較対象すら思い浮かばず、それがどれくらいの数字かすらも見当が付かない。


「フロム殿の身代金額です。銀貨だと、……枚ですね」

「も、申し訳御座いません! こ、此度の責任は私一人に有り、部下達に落ち度は有りません!

 な、何卒、何卒! ぶ、部下達には累が及ばぬ様! ば、罰は私のこの命一つで! わ、私のこの命一つで済む様に取り計らって貰いたく! こ、この通り、伏して願います!」


 しかし、銀貨に換算して、それが何の金額かも改めて告げると、ジェイド卿は目をこれでもかと見開き、真っ青となった顔を再び勢い良く伏した。

 その際、床を叩く痛そうなガツンという音が聞こえ、思わず机を両手で叩いて立ち上がり、その安否を気遣うが、ジェイド卿は顔を伏したまま。


 それにしても、ジェイド卿は予想以上の掘り出し物だった様だ。

 ジェイド卿が部下を持ったのは捕虜収監責任者代理となってから。他人へ責任を押し付ける様なヒトだとは思っていなかったが、その逆にたった一ヶ月の関係でしかない部下達を庇うほどの気高い義心を持っているとも考えていなかった。

 今まで捕虜収容所をジュリアスと共に何度か視察しているが、部下達からも慕われていて受けが良い。どうやら、良い意味でジェイド卿を俺は見誤っていたらしい。


「まあ、責任を感じないのも駄目ですが、そこまで責任を感じる必要は有りません」

「そ、そうは参りません。ぎ、銀貨、……枚と言ったら、私が一生をかけても償えない金額。そ、それを……。」

「なら、そうですね。少しだけ教えてあげましょう。

 先ほどの金額がどれほどの金額かと言ったら、オータク侯爵家の税収で五年分です。

 そんな大金、今のミルトン王国に支払える筈が無い。もし、支払ったら国が確実に破綻します。

 つまり、殿下は温情を以って、フロム殿を正式な捕虜としましたが、いずれは奴隷となるのが決まっていたんですよ。

 だったら、身代金の支払い期限が切れる五年後まで生かしておくのは金の無駄でしかありません。

 今回の事件……。いや、事故はある意味で『渡りに船』と言ったところ。ジェイド卿がそこまで気に病む必要は有りません。

 むしろ、私は昨夜の迅速な対応と見事な陣頭指揮を評価します。よくぞ、一人の犠牲も出さず、市民を守ってくれました。

 その功績を以って、今回の失態を相殺。そう殿下へお願いするつもりです。殿下とて、有能な臣をこんな事で失いたくは無い筈ですから」

「私ごときを高く評価して頂き、ありがとう御座います。ですが、私は……。」


 そんなジェイド卿が背負った負い目を少しでも軽くしようと説くが、ジェイド卿は頑なに頭を上げようとしない。

 声は漏れていないが、その肩は微かに震えており、泣いているのは明らか。不遇の時を長らく過ごした末、ようやく掴んだ幸運が手の内から消えかけているのだから無理は無い。


 ちなみに、あくまで俺の私見だが、捕虜審問における身代金額を設定するやり取りはちょっとした見応えのあるショーだ。

 平民や下級貴族は少しでも値切ろうとするのに対して、上級貴族は反対に値上げしてくる事が多く、その自身の財布を考慮しながら葛藤する姿は実に面白い。


 身代金額が自分の価値とイコールで繋がっている為、プライドを刺激されるのだろう。

 世間知らずのブタなんて、先ほどの身代金額を二倍にしろと訴えて、皆から失笑され、俺に至っては堪えきれずにゲラゲラと腹を抱えて笑ってしまった。


「解りました。ジェイド卿が罰を望むのなら、捕虜収監責任者代理の任を解きます」

「はい……。」


 暫くの間、ジェイド卿の姿を黙って見守っていたが、これ以上の説得は無理だと悟る。

 机の上に積まれた幾つもの羊皮紙を探って、その内の一つを手に取り、丸まっているソレを溜息を漏らしながら広げて、その上に羽根ペンを走らせてから、それをジェイド卿へ差し出す。


「そして、これを……。」

「はい……。」


 一拍の間を置いて、ジェイド卿がゆらりと立ち上がる。

 下唇を噛んで涙を堪えているが、堪えきれずに肩を震わせてしゃくり上げて、こちらへ歩み寄ってくる足取りは重い。


「はぇっ!? ……えっ!? えっ!? えっ!?」


 だが、羊皮紙を恭しく両手で受け取り、再び丸まった羊皮紙を広げて、その書面に目を走らせた途端、ジェイド卿は目を丸めながら間抜けな声を放った。

 その上、目をパチパチと瞬き。涙で滲む目を右袖でゴシゴシと拭ってから、書面を改めて確認すると、俺の顔と書面へ視線を交互に何度も向けて戸惑いまくり。


 それもその筈、羊皮紙の書類に書かれている内容は只の異動辞令。

 ジェイド卿の名前の横に記載されている階級も十騎長のままで据え置かれており、自分の死刑執行書を渡されたかと思っていたジェイド卿が驚きのあまり戸惑うのは当然だった。


 但し、その異動先が罰になっている。

 我々がレッドヤードの街からこのネプルーズの街まで進軍してきた南回りの街道。ミルトン王国軍の焦土作戦によって、廃墟となった街や村の一つ『ランバレネ村』を再建する現場監督官。それがジェイド卿の新たな役目である。


「これでもう完全に前線へ出られる可能性は無くなりますが、補給路を確保するのも前線を支える大事な役目です。引き受けてくれますね?」


 当初、この廃墟となった街や村を再建させる役目を俺はご褒美と認識して、先日の戦いで武勲を挙げたジェイド卿の様な不遇の期間が長かった年輩者達へ任命しようと考えていた。

 なにせ、完全な後方勤務。その任に就いたら役目の性質上、再建が完成するか、ミルトン王国参戦の年季が明けない限りはまず解かれない命の危険が無い安全な役目であり、あとはのんびりと過ごして貰いたかったからだ。


 しかし、それは大きな勘違いだった。

 俺はジェイド卿の様な不遇の期間が長かった年輩者がこのミルトン王国戦線に賭けている意気込み、出世欲を舐めていた。


 この廃墟となった村や街を再建する現場監督官の辞令を渡そうとした者達全てがオイオイとむせび泣き、前線から遠ざけてくれるなと土下座で懇願してきたのである。

 どうやら、この現場監督官は『村長』の様な役目の為、平民が担う役目を騎士が担うのは左遷先というイメージが大いに有るらしい。


 嫌々に役目を引き受けて貰っても、作業は捗らずに再建が遅れるだけ。

 それなら、やる気が有る者にと考えて、今日まで来てしまったが、未だに現場監督官達がちっとも決まらない。再侵攻が二週間後に迫った今、そろそろ強引に決めるかと頭を悩ませていた。


 だから、今回の一件は都合が良かった。

 最良はジェイド卿が捕虜収容所責任者代理を引き続いて務める事だが、ジェイド卿がそれを望んでいないのでは仕方が無い。


「はい! はい、勿論です!

 ありがとう御座います! 本当にありがとう御座います! ジェイド家末代までの忠誠をコミュショー卿へ捧げます!」

「い、いやいや……。そ、それはジュリアスに、殿下に捧げてあげて?」

「無論です! 無論、ジュリアス殿下にも捧げておりますが、是非とも貴方にも捧げさせて欲しいのです!」


 だが、机の向こう側から身を乗り出して、文字通りの目の前に迫られ、こうも熱烈な感謝を捧げられると、さすがに困る。

 自分より年齢が一回り近く年上の相手に号泣されながらだ。思わず顔を引きつらせて仰け反り、椅子の足が床と擦れる音を鳴らす。


「あ、ああ……。う、うん、そうだね。よ、よろしく……。

 そ、それじゃあ、新しい捕虜収監責任者代理を後で向かわせるから……。」

「御意、引き継ぎの用意をしておきます。

 それとブラックバーン侯爵家嫡子殿の遺体に関してですが……。」


 たまらず話を打ち切ろうとすれば、その返事が一歩下がっての最敬礼で早速の主君扱い。

 ますます顔が引きつるが、続いた問い掛けに表情を真顔に戻して、椅子へ深く背もたれながら天井を見上げて考え込む。


 ミルトン王国がブタの身代金を支払う事はまず有り得ないが、可能性はゼロでは無い。

 その一パーセントにも満たない可能性の為に遺体は保存しておかなければならないが、あのデブデブと肥えきった身体である。特注の棺を用意しなければならないし、それを保管する人材と場所も必要となる。


 生きていた時も忌々しかった奴だったが、死んでからも俺の頭を悩ますとは何処までも忌々しい奴だ。

 本音を言ってしまえば、そんなモノは森に放置して、獣か、モンスターの胃袋に収まるのが相応しい末路だと考えるが、そういう訳にもいかない。


「なら、首は念の為に塩漬けで残しておくとして、あとは奴隷用の共同墓地へ埋葬するで」

「御意、その様に致します」

「では、よろしくお願いします」

「はい! それでは失礼します!」


 結局、幾つか浮かんだ案の中から最も無難なモノを選び、この件はこれで終わりと羽根ペンを取る。

 ジェイド卿はそれを合図に俺と正対したままで三歩下がり、そこで回れ右。出入口のドアを開ける前と閉める前に二度の最敬礼を俺へ捧げて退出した。


「ふぅ~~……。何だか、余計に心苦しくなっちゃったな」


 その様子をこっそりと書類整理のフリをしながら窺っていたが、ドアが閉まった直後。

 羽根ペンを机の上に放り投げて、脱力させた全身を椅子に預けもたれながら溜息を深々と漏らす。


 どうやら、先ほどの末代までの忠誠を捧げると言った誓いは本気らしい。

 元から俺を年下だからと侮らず、上役に対する礼儀正しさを持っていたヒトだったが、それに敬々しさが加わって更にレベルアップ。まるで王族へ対する態度に変わっていた。


 しかし、貴族社会は家の歴史が深ければ、深いほどに寄り親、寄り子の結び付きが強く縛られており、寄り子側から縁を切るのはタブーとされている。

 ジェイド卿の寄り親はこのミルトン王国戦線に参加しており、このネプルーズの街に今居る。生真面目なジェイド卿の性格を考えたら、今日中にも縁切りを宣言しに行くのは間違いない。


 それ故、その前にジェイド卿の寄り親と話を付けておく必要が有る。

 二週間後の再侵攻を控えて、書類の整理と決済に忙しい今、大きなタイムロスとなるが仕方が無い。


 それと手土産に何を持ってゆくかも考えなければならない。

 ジェイド卿の今までの不遇を考えると、寄り親側はジェイド卿へあまり関心を持っていない様だが、人様のモノをタダで貰う訳にもいかない。

 唯一の救いはジェイド卿の寄り親は第三王子派に属しており、その点で話は拗れ無さそうなところか。


 いずれにせよ、今回の事故についてを改めて言わせて貰えれば、ジェイド卿は運が悪かったに過ぎない。

 非常時における捕虜収容所の監視と警備の体制を反省して見直す必要は有ったが、気に病む必要が無ければ、俺に忠誠を末代まで捧げる必要も無かった。


 そう、たまたま火事が捕虜収容所の近くで発生したに過ぎない。

 目撃者が居たとしても犯人をはっきりと判別し難い消灯後の夜に火事が発生したのもたまたまなら、何かと問題を起こすブタの部屋が他の捕虜達の部屋から遠い隔離された場所にあったのもたまたまだ。


 そもそも、西区の三割弱を焼いた大火事である。

 捕虜収容所の者達がすぐ近くで起きている火事騒ぎに気を取られてしまい、ちょっとした騒ぎが捕虜収容所の一角で起きていても気づく筈が無い。


 それほどの火事だった。火事現場の西区は夕方の様に茜色となり、この街に居る全ての者達が不安に眠れぬ夜を過ごしたに違いない。

 夕方はそよ風に過ぎなかった東南の風が火事の前後で徐々に強まり、ああも燃え広がるとは予想もしなかった。


『おかげで、本懐を遂げる事が出来ました。我々一堂、コミュショー卿へ心からの御礼を申し上げます』


 今朝、ジュリアスと一緒に火事現場へ視察に赴いた際、出火元らしいと言われている倉庫の持ち主である商人が復興費用の資金援助を申し込んできたのだが、こんな事を最後に言い残していった。

 その商人はブタがこの街の少女達へ行った愚行を涙ながらに陳情してきた少女達の父親の一人だと記憶はしていたが、礼を言う相手をきっと間違えたのだろう。意味がさっぱり解らない謂れ無い礼である。


「う~~~ん……。ランバレネの村の再建が上手くいく様なら、もう二、三箇所を手掛けて貰って……。

 その功績と俺の推薦で……。領地は再建した村々を……。いや、さすがに男爵は難しいか? まあ、上手くいったらの話だな」


 今回の事故に関して、俺個人が何かを言うとしたら、ただ一言だけ『ザマアミロ』だ。

 数多の殴打の痕が身体中に有り、顔に至っては人相が解らないほどに腫れ上がっている。ブタの遺体について、ジェイド卿はそう言っていた。

 頭を殴打され、その当たりどころが悪ければ、ヒトは簡単に死ぬが、それ以外はなかなか死ねない。間違いなく、ブタは苦しみ抜いて死んだ筈である。


 しかも、首だけは念の為に残したが、その遺体は奴隷用の共同墓地に捨てられる。

 大抵、奴隷用の共同墓地は街の外に離れて有り、共同墓地と名付けられているが、それは只の深く掘られた穴であり、悪く言ったら『ゴミ捨て場』に過ぎない。


 穴へ投げ込まれた遺体は時の経過と共に骨だけとなり、その骨は他の骨と入り混じって、誰のモノかが解らなくなる。

 数多くの幼い少女達の人生を狂わせてきたブタにお似合いの末路と言えるのではなかろうか。残った首とて、首壺に『絶対に捨てるな』とでも書いた札を張り、適当な場所に保管しておいたら十分過ぎる。


「マイルズ、予定変更だ! 出かけるから用意を頼む!」


 とにかく、これでブタへ対する復讐は終わった。

 是非、それをエステルへ報告したいが、その行方がさっぱり解らない。


 全ての始まりであり、全てのきっかけとなったあの事件から約十年。

 あの頃から既に大器の片鱗を魅せていたエステルである。さぞや、今は素敵なボインちゃんに育っているのだろうなと思いながら席を立った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ