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とあるファンタジー世界の話

魔竜討伐パーティと少年勇者

作者: 深月 涼
掲載日:2012/09/22

 古来より、ひとつの伝説があった。曰く、


    忘れられた国、白毛に血赤玉の瞳の竜あり。

    かのもの目覚めし時、世界は7日7晩の雨に包まれ

    世界は終焉を迎えるだろう


 …と。

 北の魔の国終焉を予知し、阻止せんと各国へと伝令を飛ばす。

 西の水の国からは神官戦士が

 中央華の国からは狩人姫が

 東の炎の国からは騎士王子が

 南の雷の国からは盗賊王を継承するものが

 魔の国の魔女姫と共に旅立った。


 一行は世界各地を巡り、勇者と出会う。

 その後、炎の国の王子が生き別れの兄と再会するも、魔竜に(そそのか)され、父の死の原因だと偽りの情報を与えられた兄は、弟に復讐せんと牙をむく。

 苦難の末、兄弟は義理の兄弟と知り、兄は失われた国の竜王として目覚める。 

 そしてついに一行は、滅びの竜の住処へと足を踏み入れようとしていた。 





「ねえ、まだー?」

「やっと山を降りて来た所ですからね、次の村まではー…」

「半日くらいかなあ」

「そこまでいきませんよ、でも疲れているようならもう少しだけ歩いて休憩しましょうか」

「もう少し!休憩!」

「ゲンキンな奴。ただ歩くだけがそんなに大変か?」

「うっせ!現代のもやしっ子なめんな!」

「…お前の言ってる事さっぱりわかんねーよ」


 疲れたとか言ってるのにずいぶん元気だなあ、と先方の青と黄色と小さいのを見ながら思う。

 何だかんだで仲良くやれている様で良かった。出会った頃はお互い怒鳴り合いだったもの。

「2人ともそのくらいにしておきなさい。余計に体力を使っちゃうわよ」

「ドーラさん」

「ドーラ」

「姉ちゃん、だってこいつがー」

「はいはい文句言う前に足動かす。ダニエルさんも、そんなに熱心に止めようとしなくても良いんですよ」

「…それは」

 水の国の青い神官服を着たダニエルさんは、気まずそうに後ろをちらっと見ると言葉を濁した。その意味するところは、「後ろの連中を視界に入れるのは気が進まない」である。温厚な神官さんらしく、ずいぶん控え目な言い方ですね。

「まあ、後ろの連中相手にするよりは、俺達の口喧嘩の仲裁の方がまだマシだよな」

「これ、ボウ」

 理性ある大人たちが一生懸命見ない振りをしているのに、この金ぴか盗賊少年はっ。

「今からでも仲裁に入るー?」

「御冗談を」

 即答ですか、ダニエルさん。

「……いつまで、やってんのかなあ?あの3人」

 パーティーの最年少の言葉にその場にいた全員が、ギギギ、とぎこちない動作で後ろを振り向いた。


「ふん、その程度で東方最強を名乗ろうとは、炎の国も落ちたものだな!」

「兄さん!」

「もうお止め下さいお二人とも!メイリンは、メイリンは…!」

「ほう、今のは耐え切ったか。ならば受けてみろ!ハアッ!」

「にいさーん!!」


 剣撃の音が絶え間なく響く。傍らでは、花の様な美少女がはらはらと涙をこぼしながら…

「ヒール!」

 赤いマントの王子に回復魔法をかけていた。


「止める気、ねーだろ。メイリン」

「ご自分に酔ってらっしゃるのでしょう」

「なんというカオス」

 そういう自分達も止める気は、というか、参加する気は一切ない。  

「今日は下山する前からだったわね」

「ほぼ半日かー、よく体力持つよな」

「ああ見えてメイリンさんて凄いんだなあ」

 最年少の子の瞳が、心なし輝いた気がしてあわてて釘を刺した。

「見習っちゃダメよ。ダイチ」

「はーい」

 いい返事ねえ。

「あっ」

「えっ!?」

 脇から驚いた声がして慌てて戦闘中の方を見る。ちょ…っ、

「おおー!」

「ドラゴン召喚キター!」

 あああああ、もう教育に悪いじゃない!子供達の目が完全に旅芸人のショーを見る目になってるわよ! 

「ドーラさん!」

「分かってます!」

 愛杖と符を構えて略式呪文を唱える。

「火炎弾!」

 強力召喚を阻止するためにはこれくらいしないと止まらない。

 ボウンと鈍い音が辺りに響いて、熱風が肌を撫でた。

 当たった先の3人は、ようやっとこちらを認識したらしい。ぶすっとした表情で見返してきた。

 何か言い返そうとする前に、こちらの説教が火を噴いた。

「2人とも、いいかげん兄弟喧嘩は止めなさい!」

 大の男が2人揃って何か詰まった顔をした。

「そ、そうですわ、わたくしずっとそう言って」

「止めるつもりがあるのなら回復呪文掛け続けない、メイリン」

 びしっと言うと、王子が怪我するの見てられないとか、もじもじと。

 火属性に弱いお姫様を庇うように東の国の王子が抱えている。かと思うと、また二人の世界が出来上がった。ああもう、勝手にやって下さいよ。


「うわ、でたよバカップル」

 うぇ、あめえ、とダイチが舌を出した。と思ったらこっちを見て、

「姉ちゃんは良いの?」

「良いのって、なにが」

「あんなふうにべたべたしたりしたくならないのかなって」

 ……なんてこと言うのかこの子供は。

「それは俺も聞きたいな」

 ……ダイチの言葉を借りれば「くうきよめ」だろうか。

 火属性無効の弟と違って兄は特に抵抗はない。ただ、背中から出した頑丈な竜の翼で防いだらしい。

 覚醒がつい最近だったくせに使いこなしてやがる、とついでに昔のことまで余計に思い出して、ちょっとムっとなった。

「で、どうなんだ」

「あ」

 不意に手を掴まれた。え、あれ、力が入っていないように見えても振りほどけない。思わず何度も顔と手を見比べる。わ、笑わないでよ。なんでそんな嬉しそうなの。

「ぼちぼち先進むか」

「姉ちゃんおさきー」

 え、え、何皆して置いていこうとしてるのよ。慌ててついて行こうとしても、目の前の大きな体が邪魔で進めない。というか、手!

「たまには甘えてみるのも良いものですよ。15年ぶりの再会なのでしょう?」

 ダニエルさーん!!

「らぶらぶちゅっちゅすればいいよ」

「誰、そんな言葉教えたの!」

 ほんとにこのお子さんはっ!

「元の世界なら誰でも知ってるよ」

「嘘ーっ!」

 


 後に伝説は語る。

 異界より来たりし勇者は当時11歳。ショウガクセイであったとされる。

 その明るさと、快活な様子から誰にでも好かれ、人に牙をむいた魔物ですら懐き従えたという。


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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして(・∀・)♪ 読ませていただきました* とても面白かったです\(^O^)/ これからも頑張ってください(*^-^*)
2012/09/23 08:20 退会済み
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