11.川に来ましたよ!とりあえず、涼みましょう。
暑い。
空飛んでると遮るものがないから、余計に暑い。
しかも、何気にモンスター多いから姿くらましの魔法かけてモンスターやら雲の間を縫っていくから時間もかかる。
だが、その為あの鬱陶しい馬鹿使者もそう簡単には来ることができない。
やっと、山賊の根城の近くに来たが様子がおかしい。
いつもなら、高台に誰かしら見張りが立っているはずだ。
何故、誰もいない?
・・・・・妙だな、気配を消して当たりを探ってみるか・・・。
「サーチ」
何やってんだ、こいつら・・・。
根城ほっぽらかして、みんなで川遊びですか!コノヤロー!!
ふざけんなっ!私の心配返せ!!
そして、私も川遊びにまぜろ!!暑いんだ!!!
山賊共のすぐ真上に来てから、姿を表して驚かせてやる。
「ファントム解除」
あれ?
みんな反応なし?
何で?
「よう!来たのか。どうした、そんないたずらが失敗したガキみてぇな顔して?」
「何で、みな驚かないんだ?気配も消してたのに。」
不貞腐れて言えば、バンスは呆れたように手下を見ながら言った。
「ああ・・・。今、それどころじゃねぇんだよ。この暑さで、食料の持ちが悪ぃから鮭とっ捕まえねぇと食うもんがねぇんだよ。それに多めに捕れれば塩づけにして冬の食料に回せるしな。ここんとこ、暑すぎて狩りにも出れてねぇし。」
「つまり、今の奴らは食い気まっしぐら過ぎて周りが見えてないと言うことか。」
「まぁ、そうだな。」
「そんなんで、山賊としては大丈夫なのか?」
「駄目に決まってるだろがっ!!と言いたいところだが、この暑さだ。モンスターも同業者も同じように使い物になんねぇから大丈夫だ。」
「そうか。なら、私が横で水遊びしながら手伝ってやるから、鮭が多めに取れたら冬にうちの村に優先的に売ってくれないか。」
「おう、いいぜ。しかし、その格好で水遊びすんのか?」
バンスがそういうのも無理はない。
今、来ている服は前の世界で言えばインドのサリーに似た服だ。
確実に裾が濡れる。
とりあえず、魔法で水着に着替えてもいいが一つ問題がある。
この世界の水着は、ビキニタイプの水着しかない。
しかし、ここでビキニを着て水遊びをしたことがばれれば後で、絶対あの馬鹿使者につけ込まれるのは火を見るよりも明らかである。
う~ん。
どうするべきか・・・。
あぁ、そうだ。
ワンピースタイプの水着の上にTシャツと短パンを着ればいいんだ。
これなら、露出も少ないし問題もない。
よし、これでいこう。
「おっ?決まったのか?」
「ああ。」
「そうか。じゃあ、着替えてこい。俺たちは、ここで待ってるから。」
「いや、ここで着替える。どうせ一瞬で変わるから問題ない。」
「いやいや。駄目にきまっ」
「ザ・チェンジリング」
ボン>>
とりあえず、自分の服装を確認をする。
うむ。問題ない。
完璧だ。
が、自分の目の前にいる男は非常に怒りと呆れを混ぜたような顔をこちらに向けている。
「咲良。お前なぁ、嫁入り前の女ならもう少し慎みをもて!ここは、男所帯なんだぞもう少し考えて行動しやがれ。」
お小言は、まだまだあるようでうるさいので聞き流しておく。
何故か、この男は自分に対して時々母親のようにお小言を言うので不思議だ。
でも、何故かそれが嫌ではなくなってきている。
むしろもっと構って欲しいと思ってしまう。
この感情は、きっと元の世界に帰ろうとしている私には邪魔なものだ。
今のうちに、蓋をしてしまわなければいけない。
「おい。咲良聞いてんのか?」
「聞いてる。聞いてる。それより、水遊びをさせろ。暑くてかなわん。」
バンスをよけて、川に足を浸す。
あ~、やっぱり村よりここの方が涼しい。
川の水も冷たくて気持ちいい。
夏の間、ここに滞在しようかなあの馬鹿使者もここにはどうあがいても来れないだろうし。
でも、無理だな。
このまま、ここにいたらバンスに惹かれて元の世界に帰れなくなりそうだから。
やっぱり、村に帰って馬鹿使者が来るたびに逃げるぐらいにしといた方が無難だ。
「ところで、今日は何故こちらにきたんですか?」
フィニが唐突に聞いてきた。
答えないわけにはいかないよな。
めんどくさいが・・・。
「あ~。あの馬鹿使者のことは知ってる?」
「知ってますよ。王都の為に貴方に客寄せやれと言ってる馬鹿でしょ。」
「そう。それが、また来たんだよ。懲りもせずにね。」
「なるほど。それで、避難してきたわけですね。」
「察しが良くて助かる。」
「では、しばらくこちらに滞在するつもりということでよろしいですか?」
フィニは、鮭をひっつかみながら聞く。
「いや、さすがに今日は帰るつもりだよ。」
これ以上ここにいたら、本当に元の世界に帰ることを諦めてしまいそうだから。
それにしても、水が冷たくて気持ちいい。
水にぷかぷか浮きながらしばしまどろんだ。
バンスさんは、山賊の頭領です。
はい、名前を初めて出しました。