第十八話
第十八話には、下品というか非常に残酷な描写が入ります。
苦手な方は絶対に読まないで下さいね!
「出会うインフェクターの殆んどが、食欲者か睡眠欲者かな。性欲者に出会うのは稀だね。食欲と睡眠欲の方が、性欲よりも強いから。食欲と睡眠欲が満たされて、初めて性欲が出てくるんじゃないのかなぁ。俺は性欲者を見た事がないんだ。」
ロディはそう言いながら、今度は果物らしきものに手を出し始めた。どんだけ食べるの。
確かに食欲や睡眠欲に比べ、性欲の方が弱いという事は聞いた事がある。
「俺は性欲者を見た事があるぜ。」
またしても聞いた事がない声が聞こえそちらを振り向くと、其処には燃えるような短い赤髪に、同色の赤い瞳をした男が居た。男はとても大きく、そしてごつい。男の目つきから凄く好戦的に感じられ、とても強そうだった。幹部三人目といったところか。
「俺が見たのは悲惨だったぜ。女のインフェクターに男が襲われてたんだ。その女は、性欲丸出しの性欲者だった。あっと言う間に男を押し倒し、ブツを取り出して銜えだしたのさ。初めは抵抗していた男も与えられる快感に次第に大人しくなっていった。」
うわ、なんか聞いていて気分が悪くなってきた。
「まぁ銜えられた時点で、男の感染は確実だけどな。魔術に汚染された女の唾液が、男のブツの先端から入り込み体に広がっていく。」
な、なるほど。それで、性欲者と出会えば天国行き。快楽と共に、どの道御陀仏さという訳か。
「男は女の愛撫でもう少しというところまで昇りつめていたんだが、女の動きがピタっと止まった。その後が、もう悲惨だったぜ。男の絶叫が響き渡った。何てことはない。女の欲求が性欲から食欲に切り替わったのさ。結果、女のインフェクターにより男のブツは噛み切られた。」
「・・・・・・・・・」
「今まで熱に浮かされていた男の顔が、あまりの激痛の所為であっと言う間に青褪めていった。まぁ、インフェクター相手に感じてしまった男が悪いのさ。自業自得だな。まぁセックスの最中に、性欲から食欲に切り替わる女もどうかと思うがな。」
そう言って愉快そうに笑う赤髪男に対して、私は思わず言葉を失う。これは、うら若き乙女に聞かせるような話ではないだろう。被害に遭った男性もあまりの激痛に青褪めたらしいが、今の私も相当青褪めている筈だ。自信がある。うぅ、ちょっと吐きそう。
「レス、そのくらいにしておきなさい。リンが青褪めてますよ。」
そう言いながらその声の主は、私に飲み物を渡してくれた。こげ茶色の茶髪に、同色の瞳の優しそうな男の人だった。うぅ、ありがとうございます。
ちなみに赤髪男の名前は、レスと言うらしい。
「全く、度が過ぎますよ。」
男の人が軽く窘めるが、レスは悪びた様子もなくお酒を飲んでいた。
貰った飲み物を飲んで少し落ち着いた私は、改めてその男の人を観察してみる事にした。こげ茶色の髪と瞳。この世界で出合った人達の中でも、一番馴染みのある色だ。色素が濃ければ、魔力は低いと言っていた。つまりこの男の人は、魔力が低いという事になる。しかしこの人も、どうやら幹部クラスのようだ。優しそうな外見とは裏腹に、実は強いのだろうか。
「私はアロンです。よろしくお願いしますね、リン。」
「お、お願いします。」
アロンの穏やかな物言いに、私は思わずホッとする。よかった!今まで出会った人達の中でも、一番まともそうな人だ!
突然の常識人の登場が嬉しくニコニコとしていると、急にお腹に何かが巻き付き、もの凄い勢いで引っ張られた。
「うわっ!」
「随分、皆と仲良くなったものだな。」
耳元でそう囁かれ、思わず体がゾクリとした。恐る恐る振り向くと、其処には妖しい笑みを浮かべたセインが私を見ていた。どうやら先程お腹に巻きついたものは彼の腕のようで、私は胡座を掻いた彼の膝の上に座らされたらしい。
「おまえを拾ってきたのは俺だというのに、妬けるではないか。」
拾ってきたって何!?私は猫じゃないんですけど!それに妬けるって、あなたさっき「おまえのような色気の欠片もないような女に欲情するほど、落ちぶれてはいない」なんて言ってなかったっけ?
色々と文句は言いたいが、セインを前にすると妙に赤くなってしまう私は、何も言い返す事が出来なかった。そんな私を見て、セインは本当に愉快そうに笑っていた。
またまた新キャラ二人登場。