表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/33

第十一話

「え・・・」

 セインの言葉に、私は思わず呆ける。どうして分かったのか。そんなに怪しい素振りは、見せていなかった筈だ。それともこの世界では、異世界からやって来る人間は珍しくないのだろうか。

 私がオロオロと動揺していると、セインは呆れたように溜息を吐いた。

「何故分かったのかという反応だな。まず第一に、お前からは魔力を感じられない。この世界の人間には、少なからず魔力が生ずる。」

 魔力という事は、この世界では魔法が使えるのか。魔法など存在しない平凡な世界に身を置いていた私が、魔力なんぞのファンタジーなものを所持していないのは当然である。

「黒髪と黒目が、その証拠だ。魔力の高さは、色素の薄さに比例する。魔力が高ければ高いほど髪や目の色素が薄く、逆に魔力が低ければ低いほど色素は濃くなる。しかし、魔力がゼロという事はありえない。つまりこの世界では、黒髪と黒目両方を持ち合わせている人間は存在しないという事だ。」

 成る程。つまりこの世界では、黒髪黒目を持つ私の存在は異形という事になる。誰もが魔力を当たり前に持つこの世界で、魔力を持たないという事は、きっと役立たず以外の何者でもないのだろう。この世界でも、必要とされない存在なのか。そんな事実に、私は自称気味に笑みが漏れた。

「それに、ジルヴァリュコス号の船長セイン。この世界で、この名を知らぬ者は居ない。俺が始めに名を名乗った時、おまえは何の反応も示さなかった。普通の者なら、驚愕の目で俺を見る筈だ。」

 なんと、セインは有名人だったのか。そういえばセインが名を名乗った時、私は何の反応も示さなかった。そんな私を、セインは怪訝そうに見ていた気がする。あれは名が知れている自分を知らなかった私に対して、不信感を持ったからか。セインの髪は、眩い銀髪だ。もしかすると彼は、この世界では有名な魔法使いなのかもしれない。

 もう誤魔化しても仕方がない。そう考えた私は、セインに全てを話す事にした。此処とは違う世界で生きていた事も。突然ブラックホールに吸い込まれた事も。



「そうか。」

 私の話を聞いたセインは、それ程驚いた様子もなく静かに私を見ていた。やはり魔法が当たり前のように存在しているこの世界では、異世界から来た人間など珍しくのないのだろうか。

 不思議そうにしている私を見て、セインが苦笑を漏らす。

「異世界から来た人間など、恐らくお前が初めてだろう。だが、この世界には古くから言い伝えがあってな・・・」

 先程から私の考えている事が、セインに筒抜けになっている気がする。今まで思考が顔に出にくいと思っていたが、もしかするとそんな事はないのかもしれない。

 そんな私の考えを余所に、セインは一端言葉を区切ると小さく息を吸い込んだ。

『この世界狂気に堕つる時、異界より黒髪黒目の乙女現る。彼の者皆の希望となりて、世界を平和に導かん。』

 そう言い終えると、セインはこちらをジッと見つめてきた。

「・・・え、もしかして、それが私?」

 突然の話に私は驚く。人違いではないのだろうか。私は、そんな大層な人間ではない。

「俺もそんな黴の生えた言い伝えなど、信じてはいなかったさ。だが現に、この世界が崩壊の危機に面している今、突如としておまえは現れた。」

「この世界は、崩壊の危機に面しているの?」

「おまえも見たであろう。あの狂気に狂った三人を。人は皆、奴等の事をインフェクターと呼ぶ。」

 この世界は、崩壊の危機に面しているのか。それには、あの狂気に狂った三人組も関係しているらしい。インフェクター。そういえば、森の中で出会った男性・・・私が死なせてしまった男性が、何かを言っていた気がする。


――・・・では、ないのか?――


 あれは、「インフェクターでは、ないのか?」と聞いていたのかもしれない。

 これはあまりにも現実味がなく、また非日常的な話になっていく気がする。聞くのが少し恐い。しかしきっと、これらを知っていかなければ、元の世界に戻る方法もこれからすべき事も、何も分からないままなのだろう。

 そんな私の思いを察してか、セインはゆっくりと話し出した。

「おまえには、知る必要があるのかもしれないな。良いだろう、話してやる。今、この世界が崩壊の危機に面している理由を・・・」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ