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王立マギアルス学園1
数か月前。
天城シオンは不幸体質である。
財布を落とす。
何も無いところで足を捻る。
自転車で走っていたら、溝に突っ込む。
散歩してたら、車に引かれた。
家で寝ていたから、頭上の時計が頭に落ちた。
飲食店で店員さんが滑って、食べ物を顔にかけられた。
出したらキリがない。
だが、今回はそれとは、比にならない不幸が目の前から迫り来る。
今、目の前に黒く、道化の姿をした何がいます。
挙動の読めない動きに不気味さを感じさせる。
全身が黒く塗りつぶされ、輪郭が曖昧に揺れている。
夜の影が、そのまま立ち上がったような存在。
それは、道化の姿をしていた。
歪な仮面。
笑っているのか、壊れているのか分からない表情。
関節が狂ったように揺れ、腕がありえない角度に折れ曲がる。
目はない。
なのに――確実に、こちらを見ている。
ぞくり、と背筋が粟立った。
――ヤバい。
本能が、警告する。
「に、逃げなきゃ……」




