プロローグ4
否、いないわけではない。
最初から、そこに立っている。
無傷で。
微動だにせず。
そして、吹き飛ばされていたのは、三人の方だった。
「ぐ、あっ……!?」
魔術師が、背中から地面に叩きつけられる。
精霊術師が、召喚した精霊ごと弾き飛ばされる。
呪術師が、呪いに縛られたまま膝をつく。
互いの攻撃を、まともに受けていた。
「なんで……!」
魔術師の放った一撃は、本来狙ったシオンではなく、精霊術師へ。
精霊術師の攻撃は、呪術師へ。
呪術師の呪いは、魔術師へ。
まるで最初からそうなることが決まっていたかのように。
魔術は精霊術へ。
精霊術は呪術へ。
呪術は魔術へと─────不利な相手へ、正確に流れていく。
「違う……こんなの……!」
誰かが叫ぶ。
「狙いは、確かにあいつだったはずだろ……!」
外れてなどいない。
誤射でもない。
誘導されたわけでもない。
結果だけが、すり替わっている。
シオンは、ゆっくりと瞬きをした。
「当たったよ」
静かな声。
「ちゃんと、俺に」
その言葉に、空気が凍る。
一歩、前に出る。
理解が追いつかない。
攻撃は当たった。
だが、当たっていない。
矛盾が、そのまま現実になっている。
シオンは、三人を見渡す。
その瞬間、三人は悟った。
これは回避でも、防御でもない。
“干渉”ですらない。
もっと単純でもっと致命的な何か。
未来を変えたのではない。
過去を弄ったのでもない。
ただ、結果だけを選び直した。
それだけで、全てが覆る。
三人の身体が、限界を迎える。
不利な相手の攻撃を、まともに受けた代償。
耐えきれるはずもなく、膝が崩れ、意識が落ちる。
ドサリ、と音を立てて倒れた。
静寂が、広がる。
残されたのは─────
最初から一歩も動いていない、シオンだけだった。




