プロローグ3
その瞬間、空気が爆ぜた。
詠唱が飛び交い、陣が展開され、精霊が呼び出される。
一拍の遅れもなく、戦いは始まった。
「獄炎弾!」
「呪視転写!」
「ウィンドブラスト!」
魔術、呪術、精霊術。
三つの力が入り乱れ、アリーナは一瞬で戦場へと変わる。
開始から数秒。
すでに数人が吹き飛ばされ、脱落していた。
「速い! 速いです! 開始直後から激しい攻防が繰り広げられています!」
実況の声が響く中、観客席は熱狂に包まれる。
「やっぱり上位陣は動きが違う!」
飛鳥イオナが無数の炎弾を放ち、楔マコトが影から人形を生み出し、天音カズサが精霊を従えて戦場を駆ける。
誰もが、勝ち残るために動いていた。
そして、この三名のうちの誰かが勝者になるだろうと、誰もが予想した。
だが、
「……え?」
実況席のナナが、思わず声を漏らす。
アリーナ中央付近。
天城シオンは、ただ立っていた。
何もしていない。
構えも取らず。
ただ、ぼんやりと周囲を見ているだけ。
「え、ちょっと待ってください!? 動きません! 全く動きません!」
「……」
ユキノは黙って、その様子を見ていた。
「やる気がないのか、それとも──」
次の瞬間。
シオンのすぐ横を、獄炎弾が通過した。
轟音とともに地面が抉れる。
だが、シオンは避けていない。
それでも、当たっていなかった。
「……は?」
「今の……」
ユキノが、わずかに目を細める。
「避けてないのに、当たってない?」
シオンへ攻撃が当たった───その瞬間は、確かにその場にいた全員が目の当たりにした。
誰もがそう確信した。
だが、次の瞬間。
そこに、シオンはいなかった。
「……は?」
誰かの間抜けな声が漏れる。




