1-2 嫉妬
「さあ、駆除の時間だ」
ヒイイィィン……
大型ビジョンを見ていた、数人の人たちの額に、見たことのない不思議な紋章のようなものが浮かび上がる……
紋章が浮かび上がった人たちの顔は、みなまるで『神』でも見たかのような、穏やかな表情を見せる。
先ほどビジョンを眺めていたリカの額にも、謎の紋章のようなものが浮かび上がっている。
ぼーっとしていたリカに、まー君が近づく。
まー君は、自分の腕をリカの首に巻きつけ、耳元でささやく。
「なあリカ、このあとみんなでホテル行こうぜ、そこでお前にすげぇことしてやるからよ、へへへ」
「……」
リカはぼーっとして沈黙
「なあ、おい、リカ……聞いてんのかよ、おめぇ!」
まー君はリカの胸ぐらをつかんで、激しく揺さぶる。
リカはやっぱりぼーっとして、まー君の揺さぶりに頭をガクガクさせている。
「なんだこいつ、『オーバードーズ』か? ベロも青いし、いったい薬いくつ飲んだんだ? まったく……」
ドシュ!
「えっ……?」
まー君は腹に激痛が起きて、思わず自分の腹を見る……
リカの手刀が、肘の近くまで自分の腹にめり込んでいる。
「えっ? あ、あああ、ああああああ!」
自分の足元に、深紅の血液が広がっていくのが見える……
回りを見ると、取り巻きの男たちが、青ざめた顔で自分を見ているのがわかる。
「ま、まー君……!?」
まー君は、取り巻きの男たちに助けを求めようとしたが、声が出ない……
取り巻きの男たちも、何が起こったのか理解できず、少しずつまー君から後ずさる。
「汚ねえ手で触ってんじゃねえよてめえ、この『害獣』がっ!」
手刀を抜き、真っ赤のままの手で中指を立てるリカ。
かわいいキャラクターの絵が描かれたネイルが、深紅に染まっている……
「ゴ・ゴボゴボゴボ……」
まー君は、口から大量の深紅の血を吐き出し、うつ伏せに倒れる。
「ひっ……」
いつもは、気に入られようと誰よりも一番に近くに行こうとしていた取り巻きたちが、今は誰よりも先に、まー君から離れようと必死になっている。
渋谷にいる紋章のない人たちは、大型ビジョンを見て、さすがにザワつき始める。
「お、おいおい、CGにしちゃあ、できすぎじゃねぇか?」
「映画の宣伝だったのかな……?」
「だとしたらお金かかってるね、超リアルだったよ」
「オレ絶対見るよ、VRだったらもっといいのに」
ヒイイィィン……
話している人のたちの後ろには、額に紋章が浮かんでいる『ヒューマンスレイヤー』が立っていた。
「えっ、なに? ウソ、だよね……?」
ドシュ!
「ぎゃああああ!」
「ひいいぃぃ―!」
一日で約230万人の人が訪れる、夜の渋谷ハチ公口。
その大型ビジョン前は、数分前とはまるで違う、阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた……
まー君の取り巻きたちは、腰が抜けて、後ずさりながら、笑顔で迫ってくるリカに嘆願する。
「た、助けて……」
「さっきの会話、聞こえていたよ……アタシをホテルに連れ込んで、『肉便器』にするつもりだったんだろ?」
「ち、ちがっ……オレは、そんなこと……」
「アンタたちさあ、自分たちは助かると思ってったっしょ? ……そういう『希望』を持ってるとこ、マジムカつく、嫉妬かなこれ」
「そ、そん……」
「まあ、どっちでもいいけど、『害獣』だし」
リカは、青い舌をだして笑う。
ドシュッ! ザシュッ! グシャッ!
「ぎゃあああああああ」
「た、助けてーーーー!」
シーーーーン……
返り血を浴びたリカが、茂みの中から現れる。
「あ~あ、また新しい、いい男探さなきゃ……『害獣』以外の」




