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害獣認定  作者: みっど
第一章 害獣認定
1/6

1-1 絶望

 ザ・ザザァァーーーー……


「ごきげんよう、旧人類……お前たちは、『害獣認定』された」


 一日で約230万人の人が訪れる、夜の渋谷ハチ公口。

 そこの巨大な四台の『大型ビジョン』が、突如雑音とともに砂嵐のようになったかと思うと、画面いっぱいに一人の男が映し出され、そう言い放つ。


 髪の毛も、眉毛も、睫毛も、瞳も、そして肌の色も、全てが真っ白な二十代前半くらいの男……

 道行く大半の人々は、自分の携帯電話を見ていたり、一緒にいる人と会話しながら歩いていたので、その男にはほとんど気づいていなかった。


 一部の人が、その大型ビジョンに映し出された、『白い男』に気がつく。

「何だ、あれ?」

「やたら白い男が映ってるけど、何? ウケる~」

「ナニナニ? CМかなんかなの?」

「テレビ局のジャックじゃね?」

「まっさか~」

「『地球に……カイジュウ?』って言ったの?」


 画面の『白い男』に気づいた人たちも、足を止めることはなく、少し笑いながらドッキリ番組の企画だと勘違いしている。

 それもそのはずである、この平和な日本で、こんな大それたことをする人間がいるなど、想像すらしないであろうから。


「私の名は、地球の代弁者『レセプター』……」

 画面の『白い男』は、真っ直ぐに、表情一つ変えることなく、カメラの向こうにいるであろう人々に訴えかける。

 いや、これは『訴え』ではない、『忠告』、あるいは『最終勧告』……


「お前たち旧人類は、利己的で、強欲で、傲慢だ。

 この地球を、まるで自分たちの『モノ』のように扱ってきた。

 そんなお前たちを、地球はずっと許してきたが、それももう限界だ。

 お前たちは、地球に仇なす『害獣』として『認定』し、『駆除』することに決まった」



 ザワザワザワ……

「んっと……どういうこと?」

「私たち駆除されちゃうの? 虫みたいに?」

「随分と革新的なCMだなぁ~」

「新しい殺虫剤のCMと見た!」

「お前冴えてる~今日パネェな」

「だべ?」



 ……その渋谷大型ビジョンの前の道を、大柄の男と、少し派手な服装の女が、話ながら歩いている。


「ねぇ~まー君、何か食べに行こうよ」

「ああ!? うるせぇなこのアマ、黙って歩けねぇのか!」

「ま、まー君、ゴメン……」


 派手な服装のその女は、ビビッて組んでいた腕を思わず離し、俯いたまま少し後ろを歩く。

 後ろを歩いていた数人の男たちが、その『まー君』と呼ばれる男に近づき、耳元で話す。


「な、なあまー君、本当にこの後この『リカ』とやれるのかい?」

「ああ任せておけ、あの『リカ』は俺の言うことは何でも聞くからよ、この後全員でホテルに連れ込んで、そのまま俺たちの『公式肉便器』に調教してやろうぜ」

「『肉便器』か……へっへっへ、いいねぇ……」


 後ろを歩いていた『リカ』が、大型ビジョンの『白い男』に気が付き、顔を見上げる……

「白い……綺麗……」



 大型ビジョンの映像は、少し慌ただしくなる。

「お前たち、ここで一体何をしている?」

 一見して、このテレビ局のガードマンだとわかる男が二人、スタジオの奥から入ってきた。

 5、60代だろうか? 



『白い男』が立ちあがり、ガードマンに向かって歩いていく。

 体格のいい一人のガードマンは、物おじせず、白い男と対峙する。

 もう一人のガードマンは、明らかにビビッて、後ろのほうで無線機を片手にガタガタ震えている。


 白い男が口を開く。

「勇気があるな、いいことだ」

 身長は170センチくらい、高そうなスーツを着た白くて華奢な男、そんなイメージ……


 ガードマンは少しニヤリとして、

「悪いな、仕事なんでな」

 ガードマンは、白い男の胸ぐらをつかみ、そのまま右の拳を白い男の顔面に……


 ドシュッ!


 あまり聞いたことがないような、鈍い音がスタジオに響く。

 後ろにいた、もう一人のガードマンからも見えた、屈強なガードマンの背中から、白い手刀が突き出しているのが……

「あ、が、あああ……」


 白い男の手刀が、屈強なガードマンの腹に突き刺さっている……

 その床には、おびただしい血液がダバダバと流れ落ちる。


 ドサッ……


 屈強なガードマンは、その場で壊れた人形のように倒れ、少しピクピクしたあと、沈黙した。

「ひ、ひいいぃぃ……」


 もう一人のガードマンは、腰を抜かしながらも、助けを呼ぶために奥の方へ逃げていった。

 白い男は、それを冷静に見つめながらも、あえて見逃す。

 まるで、役者が台本の通り動くように、

 まるで、猫がネズミを、簡単に殺さず弄ぶかのように、

 白い男は、深紅に染まった手を拭きながら、またテレビカメラの前に移動する。



 テレビカメラの真正面に立ち、不敵な笑みを一つ零す。

「さあ、我が呼びかけに答え、目覚めよ『ヒューマンスレイヤー』たち」

 白い男は、その右手を頭上高く上げた。


「さあ、『駆除』の時間だ」

 頭上高く上げた右手の指をパチンと鳴らす。


 ヒイイィィン……

 大型ビジョンを見ていた、数人の人たちの額に、見たことのない不思議な紋章のようなものが浮かび上がる……

 紋章が浮かび上がった人たちの顔は、みなまるで『神』でも見たかのような、穏やかな表情を見せる。



 世界はまだ知らない――、『駆除』の意味を。

 世界はまだ知らない――、『害獣認定』の本当の意味を。

 世界はまだ知らない――、今日が『絶望』の始まりだと。


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