#07:小春の日和
高校生編の短編連作です。
#07:小春の日和
2014年初冬 放課後
音楽室の窓から、夕方の光が斜めに差し込んでいた。床に落ちた影が、少し伸びている。
複雑に絡み合った音が、手の振りに合わせてピタリと止まる。
…静寂
「うん。今回は音がすごく纏まってる。今日はここまでにしよう。気をつけて帰るように」
一斉にざわめきが広がる。各々が口を動かしながら片付けの音が混ざる。
少し落ち着くと、先生が近づいてきた。
「今日はバッチリだったよ。いつもこうだといいんだけどね。」
珍しく先生が微笑んでいる。周囲の空気が軽くなる。自分では分からない癖を、抑えられたのかもしれない。褒められたというより、“認められた”ような感覚。
「陽子、一緒に帰ろう。」
『うん。ちょっと待ってて。』
特別なことはしていない。ただ、同じ方向を向いているだけ。
それだけで、胸の奥に小さな温もりが灯った。
帰り道、校舎のガラスに夕日が反射していた。光が揺れて、少し眩しい。
その眩しさすら、どこか優しく感じられた。
夕日の反射に目を細めながら、その微かな温度を胸にしまった。
次話:#08:朧霧の通学路
2026/1/24 20:00に更新します




