1-4
果歩から電話があったのはそれから二日経ってからだった。仕事の依頼だった。塾の仕事を辞めたため家で無為に過ごしていた明良は、電話に飛びついた。
「今から中央線○○駅に行ける?」
行けます、と意気込んだが、それから聞いた仕事内容に明良は躊躇した。
○○駅構内の男性トイレに、使い捨ててかまわないバッグを持って十四時までに向かう。十四時ちょうどに使用中のトイレの個室をノックすると、ドアの隙間から封筒が出てくるのでそれを受取る。中身はキャッシュカードと暗証番号の書かれたメモなので、それを持って近くのコンビ二を回ってカードの預金を限度額まで下ろす。下ろせるだけ下ろしたところで果歩へ連絡する。すると金の受け取り役が来るので落ち合い、バッグに詰めた現金をバッグごと渡す。
果歩の説明の途中から、さすがにこれはいけない話だと明良は勘付き、すみません、僕にはできません、とか、辞退させてくださいなどと懇願した。だが果歩は「捕まるリスクの極めて低い仕事だから」とか、「お金必要なんだよね?」などと言ってなだめすかしてきた。
しかしいつまでも煮え切らない明良へ果歩は最後に、そのハスキーな声で、
「このあいだやってもらった運びの仕事、あれ詐欺の一端だから。こっちは個人情報押さえてるし、ネットであなたのこと『詐欺の実行犯です』ってマイナンバーの写真といっしょにさらすこともできるんだよ? どうする?」
と冷酷に言ったのだった。
電話を終えた明良は○○駅に向かう準備を始めた。




