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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第三章 北境の戦雲(せんうん)
97/97

第二話(第97話) 布陣の刻

ついに両軍の布陣が整いました!

ローマ軍の規律ある陣形と、ゲルマン軍の荒々しい突撃布陣。

いかにも「大戦」が始まるぞ、という緊張感が漂っています。

夜明けの霧が、北境の大地を覆っていた。

やがて太陽が昇ると、霧の向こうから金属音とときの声が響き渡る。

ローマ軍とゲルマン軍――両軍が、ついに戦場に布陣し始めたのだ。


——


ローマ軍。

中央には重装歩兵レギオナリィが密集陣形を組む。

四角い盾を前面に並べ、槍を突き出し、整然とした鉄の壁を築き上げた。

その左右には騎兵隊、後方には投石兵と弓兵が控えている。

規律正しい足並みが、戦場に緊張感を走らせた。


「整列! 盾を重ねろ!」

百人隊長ケントゥリオが声を張り上げ、兵たちが一斉に応じる。

「ハッ!」


兵士たちの額には汗が滲む。

敵は五万、こちらは三万。

数の上では不利。

だがカエソの言葉が兵たちの胸に響き、恐怖を押さえていた。


——


ローマ陣の中央、指揮台に立つカエソは地図を睨み、仲間に指示を出した。


「クラウディア、弓兵の配置を監督してくれ。敵の先鋒を削るのはお前の矢だ」

「了解。必ず動きを止めてみせる」


「ルキウス、中央の防御はお前に任せる。

敵の波が押し寄せても、決して崩すな」

「任せろ! この盾で道は通さねえ!」


「ヴァレリア、お前は右翼の突撃隊を率いてくれ。

敵の突進力を正面から受け止めるのは危険だ。機を見て斬り込み、混乱させろ」

「任せとけ。血祭りにしてやる」


それぞれの役割を確認したカエソは、最後に全軍に向けて叫んだ。

「俺たちは狼の群れだ! 恐れるな! 群れで狩るのだ!」


——


対するゲルマン軍。

戦場の反対側に広がる陣形は、荒々しくも迫力に満ちていた。


巨大な楯を構えた戦士たちが前列に並び、その背後には斧と槍を持った男たちが鬨の声を上げている。

太鼓が打ち鳴らされ、地面が揺れるほどの地響きが響いた。


「ウォォォォッ!」

戦士たちが雄叫びを上げるたび、空気が震える。


その中央に立つのは、長身の酋長。

大戦斧を掲げ、雷鳴のような声で叫んだ。

「ローマの狼を討ち、肉を神へ捧げよ!

我らは数で圧倒する! 一気に踏み潰せ!」


ゲルマン軍の布陣は「楔形」。

鋭い矛先のように中央突破を狙う、力任せの陣形だった。


——


クラウディアはその様子を見て唇を引き結んだ。

「数で押し潰す気ね。だけど統率は甘い……」


ルキウスは盾を叩き、叫んだ。

「かかってこい! 狼の群れをなめんな!」


ヴァレリアは剣を抜き、血に飢えた笑みを浮かべる。

「牙を突き立てる準備はできてるぜ」


カエソは深く息を吸い、剣を掲げた。

「両軍、布陣完了……

これより始まるは、帝国の命運を賭けた戦だ!」


——


【解説】

ローマ軍は実際に「密集歩兵戦術(テストゥドやファランクスに近い)」を用い、数で勝る蛮族を組織力で撃退しました。

一方、ゲルマン部族は統率よりも「突撃力」を重視し、楔形で中央突破を狙うことが多かったと記録されています。

ここでは両者の陣形を意識して描きました。

次回は、両軍がついに激突!

「数」と「規律」がぶつかり合う戦場を描きます。

狼と仲間たちがどんな戦いを見せるのか、ご期待ください!

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