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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第三章 北境の戦雲(せんうん)
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第一話(第96話) 戦雲迫る

第三章が始まりました!

舞台は帝都を離れて北境の戦場。

今度は大軍同士が激突する「軍団戦」を描いていきます。

第三章 北境の戦雲せんうん


舞台は帝都を離れ、ローマ北方の国境地帯。

ゲルマン系の部族が大規模な侵攻を開始し、帝国軍は総力戦に突入する。

帝都を救った「狼」カエソは、今度は数万の軍を率い、戦場で真価を問われることになる。


・敵は重厚な戦列を組む蛮族軍、数で勝るが統率に難がある。

・一方ローマ軍は組織だった戦術を持つが、指揮系統は腐敗したまま。

・カエソは帝都の「英雄」として前線に送り出されるが、背後にはまだ影の同盟の暗躍が残っている。


帝都を救った戦いからひと月。

カエソは新たな命を受け、北境へ向かっていた。


伝令によれば、帝国北方の国境を越え、ゲルマンの大部族連合が大挙して侵入したという。

その数、五万。

帝都を巡る陰謀がまだ燻る中で、帝国は外からの脅威にも晒されていた。


「五万か……」

ルキウスは馬上で苦々しく呟いた。

「帝都を救ったばかりだってのに、今度は大軍だとよ」


クラウディアは冷静に地図を広げた。

「蛮族は数で勝るが、統率は甘い。

だが、冬を前に南へ下り、食糧を奪い取ろうとしている。勢いは侮れない」


ヴァレリアは剣を肩に担ぎ、獰猛な笑みを浮かべた。

「数が多い? まとめて斬ればいいだけだ」


——


国境の野に到着すると、目の前に広がる光景は圧巻だった。

地平を埋め尽くす蛮族の陣。

無数の焚き火が夜空を赤く染め、槍や斧を振りかざす戦士たちがときの声を上げる。

大地そのものが唸っているかのようだった。


一方、ローマ軍の陣営も展開されていた。

整然と並ぶ軍旗、規律正しい野営陣。

だが兵士たちの顔には不安が滲んでいる。

「五万……勝てるのか……」

誰もが声には出さずとも恐怖を抱えていた。


その時、カエソが軍の最前列に進み出た。

「聞け、兵士たちよ!」

声は野に響き渡り、兵たちの視線が集まる。


「俺たちは狼の群れだ! 一人では敵わぬが、群れならば大地を揺るがす!

恐れるな! 帝都を救った我らが、今度は帝国全土を守るのだ!」


その声に、兵たちの胸に再び火が灯った。

「帝都の狼に続け!」

「ローマ軍に敗北はない!」

鬨の声が夜空を震わせる。


——


敵陣では、ゲルマンの戦士たちが大きな円陣を組み、太鼓を打ち鳴らしていた。

その中央に立つのは、長身の酋長。

肩に巨大な戦斧を担ぎ、雷鳴のような声を轟かせる。


「ローマの狼を討て!

奴を獣の肉にして、北の神へ捧げよ!」


戦雲は濃く立ち込め、嵐のような決戦が迫っていた。


——


【解説】

ローマ帝国の北境では、ゲルマン部族の侵攻がたびたびありました。

特に軍人皇帝時代には、皇帝自らが数万の軍勢を率いて防衛に当たることが多く、帝国の存亡をかけた戦いとなりました。

ここからはいよいよ「軍団対大部族」という大規模戦闘を中心に展開していきます。

影との市街戦とは打って変わって、今度は戦場スケールの物語に突入です。

次回はローマ軍とゲルマン軍の「布陣と戦略会議」。

軍同士がどう構えるかで戦いの命運が決まる――そんな場面を描きます。

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