第七十七話(第94話) 決戦の果て
きました! 第二章最大の決戦!
カエソと影の頭目の一騎打ちは、書いていて手が震えるほど熱い展開でした。
帝都の夜を裂く金属音。
カエソと影の頭目の剣戟は、互いの命を削るように続いていた。
「ふっ……やはり狼と呼ばれるだけはある」
頭目の双剣が閃き、カエソの腕を裂いた。
鮮血が飛び散り、石畳に赤い線を描く。
「……!」
カエソは膝を折りかけたが、すぐに踏みとどまった。
「俺は……まだ倒れん。群れを守るまでは!」
——
頭目は嗤う。
「民を守る? そのためにどれだけの血が流れた?
狼が英雄だと? 貴様は獣にすぎん」
その言葉に、カエソの脳裏を多くの光景がよぎった。
戦場で散った仲間たち。
飢えに泣いていた子供。
そして、共に戦う仲間の顔――ルキウス、クラウディア、ヴァレリア。
胸の奥に熱がこみ上げ、再び剣を強く握りしめる。
「俺は……獣と呼ばれようとも構わん!
だが、この牙は民を守るためにある! それだけは揺るがぬ!」
——
再び火花が散る。
カエソの剣は力強さを増し、一撃ごとに頭目を押し返していった。
「なに……!」
頭目が後退する。
「お前は影に縛られている! だが俺には仲間がいる!
民の声が、群れの力が、俺を動かす!」
カエソが大きく踏み込み、渾身の一撃を振り下ろした。
剣が双剣を叩き砕き、頭目の仮面を完全に割った。
仮面の下に現れたのは、血走った目と歪んだ笑み。
「ぐっ……馬鹿な……」
次の瞬間、カエソの剣がその胸を深々と貫いた。
頭目は血を吐き、最後の力で言葉を絞り出す。
「影は……帝都の根だ……俺を斬っても……終わらぬ……」
そのまま膝をつき、静かに崩れ落ちた。
——
同じ頃、ルキウスは最後の刺客を盾で叩き潰し、瓦礫に倒れ込みながら笑った。
「隊長……やったな……」
クラウディアは矢を番えたまま夜空を見上げ、深く息を吐いた。
「……終わったのね」
ヴァレリアは剣を振り払い、血を滴らせながら勝ち誇った声を上げる。
「これで影の同盟も黙るだろ!」
——
夜明け。
帝都の広場には民衆が集まり、狼の勝利を讃えていた。
「狼が影を退けた!」
「今度こそ、帝都は救われる!」
だが、カエソの心には重い影が残っていた。
倒れた頭目の言葉――「影は帝都の根」。
それは、この勝利が決して終わりではないことを示していた。
カエソは東の空に昇る朝日を見つめ、静かに誓った。
「影が根を張る限り……狼は狩りをやめぬ。
群れを守るために、俺は何度でも牙を剥こう」
新たな戦いの幕開けを告げるように、太陽が帝都を照らしていた。
——
【解説】
古代ローマの政治闘争では、敵の首領を討っても派閥や組織は容易に消えませんでした。
むしろ一度の勝利のあとに、さらに大きな抗争が続くのが常でした。
今回の「影の頭目」を斃しても、「影の同盟」が完全に終わらないのはその史実を踏まえています。
こうして「影の頭目」との戦いは終わりましたが、帝都の腐敗はまだ残っています。
第二章は次回で締め、いよいよ第三章に突入です。
次は新たな戦場、そしてさらに大きな敵が待ち受けています。お楽しみに!