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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
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第七十五話(第92話) 帝都を血に染める影

いよいよ第二章の大決戦!

同時に複数の標的が狙われ、それを仲間それぞれが守る……めちゃくちゃ熱い展開になりました。書いていて手に汗握りました!

夜の帝都は、不気味な静けさに包まれていた。

だがそれは嵐の前触れにすぎなかった。


——


最初の悲鳴は、元老院議員の邸宅から上がった。

厚い石壁に囲まれた館の門が破られ、影の同盟の刺客たちが雪崩れ込む。

「議員を殺せ! 証人を残すな!」

黒衣の男たちの短剣が、護衛兵を次々に貫く。


血が石畳を染め、夜風が鉄臭くなる。

震える灯火に浮かぶ議員は蒼白な顔で叫んだ。

「誰か、助けてくれ!」


その瞬間、重い盾を構えた兵が門を突き破って飛び込んだ。

「守れ! 狼の命令だ!」

ルキウスだった。

彼の盾が振るわれ、三人の刺客が壁に叩きつけられる。

「議員を逃がせ! この場は俺が受ける!」


血に塗れた戦いが始まった。


——


同じ時刻、別の街区。

軍司令官の屋敷にも黒衣の影が迫っていた。

「司令官を斬れ! 軍の力を奪うのだ!」


屋根の上から矢が雨のように降り注いだ。

「ここは通さないわ」

クラウディアの声が夜空に響く。

次々と射抜かれる刺客の影。

それでも敵は途切れず、闇から闇へと湧き出してくる。


司令官を守る兵が必死に抗うが、数は圧倒的に劣勢だった。

「司令官、こちらへ!」

クラウディアは矢筒を空にしながら叫び、味方を誘導する。

だが視界の端で、暗殺者が屋根を駆け抜け、司令官へ飛びかかった。


「――させるか!」

クラウディアは最後の一本を引き絞り、矢を放つ。

矢は真っ直ぐに刺客の喉を貫き、黒い影が屋根から落ちていった。


——


市民評議会の長老の家。

今度は別の戦場だった。

老人を守る護衛はすでに倒れ、刺客が刃を振り下ろそうとしたその時――

「どけぇぇぇぇ!」

ヴァレリアが壁を破って飛び込み、巨大な剣で刺客を真っ二つに裂いた。


血潮が飛び散る中、彼女は剣を肩に担ぎ、不敵に笑う。

「てめえらの刃じゃ、この狼女は倒せねえよ」


次々と襲いかかる影を、彼女は一人で斬り伏せていった。

剣が唸り、壁が崩れ、床が血で染まる。

長老は震える声で呟いた。

「……あれが、帝都の狼の仲間か」


——


そして最後に、カエソの前にも影が現れた。

彼のもとに現れたのは、他とは違う佇まいの刺客。

漆黒の衣に身を包み、面で顔を隠したその男は、明らかに格の違う存在だった。


「狼よ。お前の牙は確かに鋭い。だが、この夜で折れる」


カエソは剣を構え、低く答える。

「俺は群れを守る狼だ。貴様らの影に、この帝都は渡さぬ!」


火花が散った。

剣と短剣が夜の闇でぶつかり、鋭い音を響かせる。

影の頭目の動きは速く、刃は心臓を正確に狙う。

だがカエソは一撃ごとに受け止め、押し返す。


「貴様の牙は鈍っている。

民を守るなどという甘さが、お前を殺す」


「甘さではない――強さだ!」

カエソの剣が唸りを上げ、影の面をかすめた。

火花と共に仮面が割れ、覗いた顔は冷たい笑みを浮かべていた。


——


帝都のあちこちで繰り広げられる同時多発の暗殺劇。

血の匂いが街を覆い、悲鳴と怒号が夜空に響く。


だがその中で、狼と仲間たちは確かに群れを守り抜いていた。

彼らの戦いは帝都そのものをかけた死闘へと変わっていく。


——


【解説】

古代ローマでは、一夜にして複数の要人が暗殺される事件も実際に記録されています。

政敵を同時に排除することで権力を奪う狙いがあり、都市全体が恐怖で支配されるのです。

この「同時多発暗殺」を舞台にすることで、帝都の混乱と狼たちの奮闘を最大限に描きました。

影の同盟の最強の刺客と、カエソの直接対決が始まりました。

次回は、この死闘の結末が描かれます。

第二章のラストバトル、ぜひ最後まで見届けてください!

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