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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
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第七十二話(第89話) 炎と飢えの街

ついに来ました! 食糧危機で暴走する帝都!

戦場ではなく街そのものが崩壊していくシーンは、書いていて胸がざわつきました。

帝都の空気は重く、荒んでいた。

食糧倉庫が焼かれた翌日から、市場の棚は空っぽになり、人々の目は飢えに濁っていった。


「子どもに食わせるパンがない!」

「昨日まで銀貨一枚だった穀物が、今日は十倍だと!」

「これは狼の仕業だ! 影の議員を潰した報いだ!」


街角では争いが絶えず、奪い合いで血が流れる。

帝都は、炎ではなく飢えによって崩壊しかけていた。


——


兵営。

ルキウスが報告書を叩きつけた。

「くそっ、民衆は完全に錯乱してる! 影の同盟が闇市で穀物を売り捌き、値を吊り上げてやがる!」


クラウディアは鋭く言葉を返す。

「つまり、彼らは二つの刃で攻めている。倉庫の焼失で“飢え”を生み、闇市で“憎悪”を煽る」


ヴァレリアは椅子を蹴り飛ばし、剣を掴んだ。

「そんな連中、首を刎ねれば済む話だろ!」


しかし、カエソは首を振った。

「違う。首を落とすだけでは、民は救われぬ。

群れを守るには、影を断つと同時に、飢えを満たす策が必要だ」


——


その頃、広場では暴徒と化した群衆が店を襲っていた。

「食い物を出せ! 隠してるだろ!」

「狼を連れてこい! 奴に責任を取らせろ!」


泣き叫ぶ子供の声。

引き裂かれる家族の姿。

ローマの中心は、もはや戦場そのものだった。


カエソは馬を駆り、炎に包まれた通りに飛び込んだ。

「止めろ! 民を殺すな!」


ルキウスと兵が盾を並べ、暴徒を押し返す。

クラウディアは屋根から矢を射ち、瓦礫の上で叫ぶ。

「影の声に惑わされるな! お前たちの敵はここじゃない!」


ヴァレリアは剣を振るい、店を焼こうとする男の腕を叩き落とした。

「この剣は民を守るためにある! 狼に刃を向けるな!」


——


炎と飢えが街を覆い尽くす中、カエソは誓った。

「この帝都を守る……影の同盟に飲み込ませはしない。

狼は群れを飢えさせぬ!」


その決意の瞳に、仲間たちもまた燃えるような光を宿していた。


——


【解説】

古代ローマでは「穀物問題」が常に政争の火種でした。

穀物の価格が上がれば暴動が起き、指導者は「穀物法」や配給で民衆の心を掴もうとしました。

今回の混乱は、まさにその史実をベースにしたものです。

第二章もいよいよ最高潮です。

影の同盟の狙いは「帝都を飢えと恐怖で支配すること」。

次回は、この危機を乗り越えるためにカエソが“ある策”を打ち出します。

第二章のラストが近いので、どうぞ最後まで一緒に走り抜けてください!

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