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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
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第六十五話(第82話) 狼の演説

ついにカエソが「言葉の戦い」に挑む!

戦場の剣とは違う緊張感……書いていて鳥肌が立ちました。

フォルムの広場には、朝から多くの市民が集まっていた。

市場は閉ざされ、商人も労働者も皆、帝都の狼と呼ばれる男の言葉を聞こうとしていた。


「カエソが演説をするらしいぞ!」

「宴を血で染めたという噂もあるが……真実はどうなんだ?」

「英雄か、獣か……それを確かめたいのさ」


ざわめきの中、カエソが石段に立った。

背後にはクラウディアとヴァレリア、そして兵の一団。

その姿は戦場ではなくとも、確かな威厳を放っていた。


——


カエソは群衆を見渡し、深く息を吸った。

「俺は……狼だ」


広場が静まり返る。


「狼は血を好む獣だと、そう言う者もいる。

だが俺の牙は、群れを守るためにある。

襲い来る蛮族から、影に潜む刺客から、そして……腐敗にまみれた帝都そのものから!」


声は石造りの広場に反響し、群衆の胸を震わせた。


——


クラウディアが小声で呟いた。

「……兵たちの目が変わった。信じているわ」


ヴァレリアは腕を組み、にやりと笑う。

「狼の遠吠えは、帝都中に響くってわけだな」


——


カエソはさらに続ける。

「俺は皇帝になるつもりはない。

だが、帝国を守る者であり続ける。

民よ、兵よ、群れよ――狼に力を貸してくれ!」


次の瞬間、広場が割れるような歓声に包まれた。


「帝都の狼に従うぞ!」

「我らの英雄だ!」

「狼こそ、ローマの守護者だ!」


——


だがその熱狂を、冷ややかに見つめる視線があった。

遠くから広場を見下ろす影の同盟の者たち。


「……やはり危険だ。このままでは民衆は狼に従う」

「ならば、次は民衆ごと潰すしかない」


新たな陰謀が、すでに動き始めていた。

——


【解説】

ローマ史では、演説こそが政治の最大の武器でした。

カエサルやキケロ、マリウスらは軍功だけでなく「言葉」で民衆を動かし、権力を得ました。

民衆の前で自らを「狼」と呼ぶのは創作ですが、こうした「象徴的イメージ」を使うのも演説の常套手段でした。

民衆の熱狂を得たカエソですが、当然それを恐れる勢力もいます。

次は「民衆ごと潰す」という恐ろしい策が動き始めます。

戦場、議場に続き、今度は「帝都そのもの」が戦場となる……そんな展開を描いていきます。

どうぞご期待ください!


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