第六十二話(第79話) 路地裏の決戦
ついに路地裏で刺客たちとの決戦!
狭い空間だからこその緊迫感、そして仲間たちの連携を意識して描きました。
石畳の路地裏に、緊張が走った。
炎に照らされた議場から離れたこの暗がりは、まるで影の巣のようだった。
黒衣の刺客たちが円を描くように現れ、怯える議員を背後にかばう。
「この者は我らが同盟の証。狼に渡すわけにはいかぬ」
カエソは剣を構え、低く答えた。
「証人ではなく、腐敗の象徴だ。
……その命ごと、闇を暴く!」
——
最初に動いたのはヴァレリアだった。
「来いよ、影ども!」
獣のように跳びかかり、剣を閃かせる。
鋭い刃が黒衣の一人の喉を断ち切り、鮮血が夜の石畳に飛び散った。
ルキウスは盾を振りかざし、狭い路地を塞ぐように立ちふさがる。
「一歩たりとも通さん!」
敵の短剣が雨のように降り注ぐが、重厚な盾がすべてを弾き返す。
クラウディアは矢を次々と放ち、屋根の上に潜む刺客を正確に撃ち落とした。
「上も下も見えてるわよ……!」
——
カエソは議員を守る刺客の頭目に向かい、真っ直ぐに進んだ。
「狼を止められると思うか!」
剣と剣が交錯し、火花が散る。
頭目の短剣は素早く心臓を狙うが、カエソの剛剣が力でそれを弾き飛ばす。
「お前たちは闇に潜むことしかできん!」
カエソの声が響き渡る。
「だがローマは光を求める! 闇は必ず焼き尽くされるのだ!」
——
その隙に、議員が逃げ出そうとした。
「待て!」
クラウディアが矢を射るが、議員は必死に這い出していく。
「こいつだけは逃がすな!」
カエソの怒声と同時に、ヴァレリアが前に躍り出て、議員の腕を掴んだ。
「この腐れ貴族、どこへ行くつもりだ!」
しかしその瞬間、別の刺客が彼女の背後に迫り、短剣を振り下ろす。
「危ない!」
ルキウスが盾で弾き、刃が石畳に突き刺さった。
——
激しい戦いの末、黒衣の刺客たちは次々と倒れていった。
最後の一人が呻きながら崩れ落ち、路地裏に静寂が戻る。
カエソは剣を下ろし、拘束された議員の襟首を掴んだ。
「もう逃げられぬ。
お前の口から、影の同盟の名を吐いてもらうぞ」
怯え切った議員は、唇を震わせながらもなお口を閉ざしていた。
だがその目には、恐怖以上に“ある覚悟”の色が宿っていた。
——
【解説】
ローマ時代の市街戦では、狭い路地や石畳が戦闘に大きな影響を与えました。
盾を持つ兵が路地を塞ぐ、屋根上からの射撃を警戒する、短剣を用いた暗殺術――これらは史実でも記録されています。
今回の戦いは、まさに「都市型戦闘」を再現したものです。
議員を捕らえることには成功しました。
しかし、彼が語るのか、それとも沈黙を貫くのか――次回、大きな転機が訪れます。
どうぞお楽しみに!