第六十一話(第78話) 逃げる影を追え
今回は「議場の乱闘」の続き、逃げ出した議員を追う場面です!
剣戟から追走劇に切り替わる緊張感、スピード感を意識して書きました。
議場に漂う血の臭いを背に、カエソはすぐに動いた。
「逃げた議員を追うぞ。奴こそ、影の同盟との繋がりを示す証だ!」
ルキウスが盾を背負い直し、息を荒げて頷く。
「了解だ、隊長!」
クラウディアは素早く矢を抜き、冷静に辺りを見渡した。
「北側の裏門……さっき足音がした。馬を用意しているかもしれない」
「逃がすものか」
ヴァレリアは剣を握り、血に濡れた頬を拭った。
「ここからは狩りだ」
——
議場を抜けると、帝都の夜が広がっていた。
灯火に照らされた石畳を、一団の影が走っていく。
その先頭には、血相を変えた議員の姿。
「止まれ!」
カエソの怒声が響き、逃走者たちは一瞬振り返った。
だがそのまま闇へと駆け込んでいく。
「追え!」
——
狭い路地での追走劇が始まった。
馬ではなく、足で追いかける。
ルキウスが盾で通行人を押しのけ、クラウディアが路地の上から矢を射かける。
「くそっ!」
敵の護衛兵の一人が矢に倒れる。
だが議員はさらに加速し、闇の奥へ消えかけていた。
——
「任せろ!」
ヴァレリアが大きく跳び、壁を蹴って前方に躍り出る。
剣を振り下ろし、敵の進路を塞いだ。
「ここまでだ!」
カエソも迫り、議員に剣を突きつける。
だがその瞬間――背後の建物の屋根から影が降り立った。
黒衣の刺客たち。
「議員は連れて行く。我らが同盟の証人だ。渡すわけにはいかぬ!」
夜の路地に、再び血の戦いが幕を開けた。
——
【解説】
ローマの都市は複雑な路地と石畳の道で構成されており、逃亡や追跡が頻発しました。
政治的事件で逃げた者を追う「市街戦」は実際に歴史に残っており、暗殺や襲撃と組み合わせて描くことで緊張感を強めています。
また、議員が秘密結社や影の組織に守られていたのも、史実に近い現象です。
ついに影の同盟の護衛兵たちが現れました。
議員を捕らえるか、それとも影に連れ去られるか……勝負は次回に持ち越しです。
次回は路地裏での激しい戦闘と、逃げる議員の運命を描きます。
どうぞお楽しみに!