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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
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第五十九話(第76話) 暴かれる腐敗

裁きの場でついに腐敗の影が露わになりました!

英雄を罠に嵌めようとした元老院の中に、影の同盟と繋がる者がいたのです。

戦場での刃とは違う「言葉と証言の戦い」、緊張感がありましたね。

元老院の議場は熱に包まれていた。

弾劾の声と擁護の声が交錯し、まるで剣戟のように響き合う。


「狼は血に酔った! 宴を混乱に陥れたのは奴だ!」

「いや、彼は民を救った英雄だ! 襲撃者を討ったのだ!」


怒号の渦の中、カエソは堂々と立ち続けていた。

その姿は、剣を持たずともなお戦場に立つ戦士そのものだった。


——


その時、一人の若い議員が声を上げた。

「証拠を示せ! 宴を襲ったのが“影の同盟”だと、誰が証言できるのだ!」


場が静まりかえった瞬間、ルキウス・カッシウスが杖を突き鳴らし、前に進み出る。

「証言ならある」


その言葉と同時に、護衛に連れられて現れたのは――宴を生き延びた若き料理人だった。

腕に火傷を負いながらも、その瞳は真剣に燃えている。


「……俺は見た。商人の一人が、黒衣の男たちに指示を出していたのを。

“狼を殺せ”と……!」


——


議場にどよめきが広がる。

「馬鹿な! 証言など買収されたものだ!」

「いや、彼の火傷は本物だ!」


さらにクラウディアが立ち上がった。

「影の同盟は元老院の外だけではない。

ここにいる議員の中にも……繋がっている者がいる!」


その言葉に空気が凍りつく。

数人の議員が顔を引きつらせ、視線を逸らした。


——


カエソは静かに口を開いた。

「腐敗は影だけに潜むものではない。

この帝都そのものに染みついているのだ。

ならば俺は戦う。剣を持とうが持つまいが……」


その言葉は重く、議場を貫いた。


——


「黙れ! 貴様ごときが元老院を裁けるものか!」

一人の老議員が立ち上がり、憤怒の声を上げる。

だがその袖口から、黒い紋章の印が覗いた――影の同盟の証。


「……見えたな」

ヴァレリアが唇を吊り上げ、剣に手をかけた。


議場がざわめき、腐敗の臭いが露わになっていった。


——


【解説】

ローマの元老院は「清廉な政治の場」と同時に「腐敗の温床」でもありました。

派閥争いの中で陰謀や買収が横行し、しばしば「敵を弾劾するための裁判」が開かれました。

また、証人の登場や「裏切り者の暴露」によって議場が一転することもあり、まさに政治は戦場でした。

これでカエソの立場は一時的に優勢になりました。

ですが腐敗は一人二人を暴いた程度で終わるものではありません。

次回はこの暴露がきっかけで元老院全体を揺るがす大事件が勃発します。

どうぞお楽しみに!


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