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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
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第五十七話(第74話) 炎上する宴

宴の決着の余波を描きました。

火と血に包まれる帝都の大広間……場面を想像すると鳥肌が立ちます。

戦場とは違う「政治の戦い」が始まっていますね。

燃え盛る炎が大広間の天井を舐める。

倒れた燭台から火は広がり、豪奢な絨毯と木製の机を容赦なく飲み込んでいた。


「外へ! 生き残りを急げ!」

ルキウスが盾で火の粉を払いながら叫ぶ。


悲鳴を上げて逃げ惑う貴族たち、倒れた者を踏み越えて走る商人、

そして血にまみれた死体の山――宴はまさに地獄と化していた。


——


クラウディアが矢筒を背に掛け直しながら、冷静に状況を分析する。

「これは偶然じゃない……火もまた計画の一部。証拠を焼き払うつもりね」


ヴァレリアは剣を肩に担ぎ、苦笑した。

「証拠も何も、この血と死体が全てを物語ってるさ。

……だが、これで帝都中が大騒ぎになるだろうな」


カエソは炎に照らされる広間を見渡した。

「影の同盟はここで一人を失った。だが……奴らは沈まぬ。

むしろ、狼を公然と敵とする理由を得たはずだ」


その瞳には決意と、深い影が宿っていた。


——


やがて火は兵士たちによって抑え込まれた。

だが翌日、帝都中に広まったのは「狼が宴を血で染めた」という噂だった。


「民衆は信じているぞ。カエソ様が陰謀を砕いたと」

「だが元老院では違う。彼を危険視する声がさらに強まっている」


ルキウスの報告に、クラウディアが眉をひそめる。

「つまり……敵はまだ姿を見せぬまま、こちらを孤立させるつもりね」


カエソは深く息を吐いた。

「群れを守るために戦っただけだ。それでも狼は“猛り狂う獣”と呼ばれるのか……」


その声は低く響き、帝都の空気そのものを揺るがすようだった。


——


【解説】

古代ローマでは「火災」がしばしば政治的陰謀の一部として利用されました。

大規模な宴や集会での火事は「証拠隠滅」と「混乱の拡大」の両方に役立ち、敵を追い詰める手段でもありました。

また、噂の拡散は現代のメディア戦に等しく、英雄を一夜で悪人に変えるほどの力を持っていました。

頭目を討ったことで一つの戦いには勝ちました。

しかし、影の同盟は姿を隠したまま、むしろ狼を悪として追い詰めようとしています。

次回は帝都全体を揺るがす“裁き”の場――カエソが元老院に呼び出されるシーンへ進みます。

どうぞお楽しみに!


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