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皇剣 〜ローマ戦乱記〜  作者: 辰桃
第二章 帝都の影
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第五十四話(第71話) 血塗られた宴

今回は帝都らしい「華やかさと血」の対比を描きました。

祝宴のはずが、影の同盟の策略で一瞬にして戦場へ……この緊張感が帝都編の醍醐味ですね。

帝都の中心、黄金の灯りがきらめく大広間。

元老院主催の盛大な宴が催され、貴族や将軍、商人たちが豪奢な衣をまとって集まっていた。

葡萄酒の香り、焼き肉の匂い、笑い声と音楽。

その華やぎの裏に、暗い企みが潜んでいた。


「今宵は、北方戦役の勝利を祝す宴である!」

主催の議員が声を張り上げると、場は拍手に包まれた。

しかし、その視線の多くは一人の男に注がれていた。


カエソ――帝都の狼。

民衆の英雄にして、元老院が最も警戒する存在。

彼が杯を掲げると、場に緊張とざわめきが走った。


——


その片隅。

黒衣の商人が小声で囁く。

「彼が英雄として広まる前に……牙を折らねばならん」


隣に座る若き議員が冷笑する。

「用意はしてある。杯に忍ばせた毒は、王族さえ葬ってきたものだ」


さらに別の影が耳打ちする。

「失敗すれば? 兵や民衆は彼を守ろうとするぞ」


「ならば……宴を血で染めればいい」


それは、「影の同盟」の密談だった。


——


その頃、クラウディアは群衆の中で不審な動きを察知していた。

「……視線が多すぎる。これは罠だ」


ヴァレリアは腰の剣に手をかけ、低く笑う。

「宴に来たはずが、血の舞踏会になりそうだな」


カエソは杯を見つめ、わずかに笑みを浮かべた。

「狼に毒を盛るつもりか。……なら、こちらも牙を剥くまでだ」


——


突如、音楽が途切れた。

叫び声が上がり、毒を盛られた料理人が倒れる。

混乱の中、剣を抜いた男たちが次々と飛び出した。


「帝都の狼を殺せ!」


大広間が一瞬で戦場と化した。

豪奢な柱が折れ、葡萄酒が血と混ざり、悲鳴がこだました。


——


「全員、隊長を守れ!」

ルキウスが叫び、盾を構える。

クラウディアの矢が閃き、ヴァレリアの剣が血を弾く。


カエソは立ち上がり、響く声で言った。

「宴は終わりだ。……これより始まるは、狼の狩りだ!」


その刃が振るわれた瞬間、豪華な宴は地獄絵図へと変わった。


——


【解説】

古代ローマでは、華やかな宴が暗殺や陰謀の舞台となることは珍しくありませんでした。

毒殺はローマの貴族社会で頻繁に使われ、史実でも皇帝クラウディウスや皇族たちが毒で命を落としています。

また、政治的敵対者を「宴」で葬る手口は、権力闘争の常套手段でした。

今回はその史実を取り入れ、血塗られた饗宴の一幕としました。

戦場と違い、剣が煌めく舞台が大理石の大広間というのは、また違った迫力があります。

カエソがどう切り抜けるのか、そして黒幕をどう追い詰めるのか。

次回はいよいよ宴での死闘、その決着を書いていきます。

どうぞご期待ください!


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